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yoshizuka
加藤荘間借り3畳の思い出⑬
S男さんの母上は、用もないのに、時々、私を呼ぶことがあった。必ず茶菓子、グレープフルーツが用意されていて、グレープフルーツを丁寧に剥いて銘々皿にのせてくれた。
母上は、ローリーさんのことが気になるらしく、「女気のなかった我儘なS男に彼女ができるわけがないと思っていたのだけれど」と、笑いながら話すことがあった。
「アメリカの女性は、日本と違ってかなり積極的と聞いていますよ」と話すと、「マッチ棒のような男が大きな女性にモテるのかしら」というようなことを言って、半ば嬉しそうであり、半ば心配そうな顔をした。
私は、いたずらっぽい目で、
「S男さんハンサムだから、きっともてます。」
と返すと、母上はケラケラと笑った。
「ミルクくさい女は嫌いだ。」
と言っていたS男さんが、ローリーさんの写真を送ってくるなど想像さえ出来なかった。
25歳の堅物の男に、20歳過ぎらしい女性が寄り添っている姿を少し羨ましい気持ちで眺めた。
あとでわかったことだが、ローリーさんは日本語科の生徒だったらしい。教師と生徒との恋愛は、日本では不義である。それをやってのけたのには、ひょっとすると漱石の影響があったかもしれない。
S男さんは、漱石研究家であった。
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