52ヘルツのくじらたち を読んでみて
52ヘルツのくじらたち 町田そのこ作 中公文庫
映画化されましたね~!鑑賞はしてないのですが…
2021年の本屋大賞を受賞している、おもしろいこと間違いなしの作品。
しかし、お恥ずかしながらこの作品をつい最近まで存じ上げておりませんでした。町田そのこさんの作品も読んだことがありませんでした。
52ヘルツのくじらたちを手にしたきっかけは大きく3つ。
表紙がかわいかったこと。映画化決定と、本屋大賞受賞の文字。タイトルの意味が理解できなかったこと。
なんとなく気になって手に取ってみたわけですが、間違いなく読んでよかったと思える作品といえます。
内容としては300ページほどで、読書初心者のかたでも読みやすいはず。
文体も構成も分かりやすく、すっと文章が入ってきます。
簡単な感想
純粋できれいな存在は痛々しくて、尊い。
自分の都合で生きている人たち、理不尽な目に合わされてしまう人たち。
理不尽を向けられる人たちが、あまりにも純粋で痛々しくて、報われて欲しくて尊い。読んでいて胸が締め付けられるような感覚はあるけれど、読後はなんともすっきり。あぁ、こういう結末でよかった、と思える締めくくり。
そして、色んな問題を取り込むのがうまい。そしてわざとらしさがない。ヤングケアラー、虐待、人に打ち明けられない悩み。実際にそういう人たちがいるんだろうな、という現実感がある。設定に盛り込むことで読者に考えさせる。
ざっくり作品紹介
くじらは、海中で歌うようにして鳴く。その声の周波数が、10~39ヘルツ。
しかし、52ヘルツで鳴くくじらの声は、ほかのくじらには聞こえない。声が高すぎるから。仲間に届けるために歌っても、その声を受け止めるくじらはいない。世界で一番孤独なくじら。
この作品は、52ヘルツで歌うクジラを登場人物たちに重ねて、物語は進んでいく。海の生き物の話かとおもいましたが、ばっちり人間関係を描いた作品でした。
あらすじ
主人公は三島さん。わたしにとって、この作品での名前はとっても尊いものなので、苗字で呼ばせていただきます。
三島さんはアラサーの女性。海がある田舎の町に引っ越してきた、どうやら訳ありの人。
三島さんは、田舎特有の生きづらさに直面します。他人からひそひそされたり、嫌なこと言われたり。
三島さんはMP3プレーヤーを愛用している。この時代に。それから流れるくじらの歌声を聞き、思い出のなかのアンさんに語りかけ、アンさんの言葉を想像する。
あるとき、声を出せない子どもに出会う。この子どもとの出会いが、三島さんの人生を大きく変えていくのである…。
三島さんの過去、現在。
アンさんってどんな人?声を出せない子どもって?三島さんはどう進んでいくの?
決してハッピーな物語ではなくて、暗く切なく、痛々しいけど、それ以上のやさしさ、あたたかさがある物語。
みどころ
とにかく寄り添いたくなる物語。
三島さんは、第二の人生を歩みだしたけど、まだ過去を引きずっている。
そして、家族から愛されず、声を出せない子ども。
劇的な変化はなく、本当に少しずつ前に向かって進んでいく。
三島さんも、子どもも、そしてそれを見守る人たちも。現実を受け入れて、きちんと立ち向かう姿が描かれるけど、弱さも描写される。立ち向かう強さに本当に感動する。
この作品、というかアンさんの言葉は素敵なものが多い。
人生の過去の登場人物。愛を注ぎ注がれるような魂の番。
読者にもアンさんが語りかけてくれるようなあたたかい気持ちになる。
名前の扱い方がすてき。
三島さんの名前、子どもの名前。誰がどう呼ぶかによって愛というか尊さが全然違うのが伝わる。お互いの名前を呼ぶ優しい声が読者にも伝わってくるよう…。優しさが溢れてる…。
一方で、アンさんと呼ばれていても、人によって呼び方も違う。それもまた切ない…。
分かりやすい構成
視点はずっと三島さんなので、より背中を押したくなるような物語になっている。辛いことも、頑張っていることも、読者は三島さんと共有しているので、自然と応援してしまう。
こんな素敵な作品を読まないまま死ぬ人生じゃなくてよかった。
素敵な作品に仕上げてくれたみなさまに感謝です。
いままで読まなくてすみませんでした。
三島さんがアンさんに救われたように、わたしも救われた経験があった。そんなことを思い出した。
わたしにとってのアンさんがいた。
わたしも、誰かにとってのアンさんになれたらいいなと思う。
前向きになれるような作品ではないかもしれないけど、きっと支えになってくれるような作品。
52ヘルツのくじらは孤独でも、仲間がいないわけではい。
いまは声をあげても届かない、届けられないけど、いつかは届くかもしれない。自分がその声を聴けるかもしれない。
いつか、誰かが声にならない声をあげていたら、その声を聞いて、寄り添える人間でありたい。
わたしもあなたも、自分の声が届く仲間にあえますように。
いいなと思ったら応援しよう!
サポートしていただけたらニンマリします!ご褒美のおやつ代になりそうです~!