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29 ふれあいの森なんでも工房

 コバノミツバツツジに包まれた森での、手づくりと体験の理想郷で、最も多彩な活動をしている団体は、ふれあいの森なんでも工房だと、自信を持っておススメできます。

 2019年3月31日、著者は山口県周南市のふれあいの森なんでも工房を訪れました。出迎えていただいた事務局長のMさんは、50代の半ばで定年が近づいたときに、自然の中で夢のある活動をしたいと思い、各方面に当たって構想を練られました。そしてMさんは、コバノミツバツツジの美しい里山に惚れこんで、1998年に市所有の20haの森を借り受けて、ふれあいの森なんでも工房を立ち上げました。Mさんに、森と建物の中を一通り案内してもらい、木のぬくもりに満ちた施設と道具の豊富さに驚きました。

コバノミツバツツジの森と手づくりの建物

 活動方針は、自然の森で子どもたちが育つこと、高齢者が元気に活動して多世代と交流すること、荒れた森を再生することの3点です。通年型で運営しており、全て高齢者中心の市民ボランティアで事業を行っています。数々の表彰状を見せてもらいました。

11の表彰状が並んでいます

 コバノミツバツツジの里山に囲まれた理想の工房です。2001年に工房づくりを開始して、最初の建物ができたのが2003年で、2004から子どもたちを迎え入れる活動を開始しました。森に囲まれた5000㎡広場の周辺には、八角堂、楽々庵、悠遊館、森の食菜館呑太、森の交流館俥座、森の職人館野風堂などと名付けられた10棟もの木造の建物に増えました。これらは、各種の助成金を得るとともに、廃材をうまくかき集め、二十数名の仲間とともに、全て手づくりで増やしてきました。市からは、土地を借りてますが、バリアフリー化など一部の施設以外の助成を受けず、自力で運営しています。

写っている建物すべてが高齢ボランティアの手づくりです

 廃業した大工さんから譲り受けたプロの大工道具が並び、名のとおり、なんでも揃っている工房です。大人がつくるための道具はもちろん、子どもたちが木工、陶芸、草木染、手芸など、各種の工芸に取り組める道具も揃っています。

プロの道具が揃っている工房

 調理棟があり、ピザ窯、調理器具、食器、ソーメン流し用の丸太も揃っています。食材さえ準備すれば、各種の料理がつくれる場所で、ボランティアとして高齢女性が元気に参加し、お母さん方に人気の場所です。

調理棟

 立木に吊るしたタイヤのブランコ、すべり台、鉄棒など、広場の周りには手づくり遊具が揃っています。

コバノミツバツツジに囲まれた滑り台

 2018年年度に、団体客が7000人、一般客を入れると総計1万人以上が利用している、名のとおり、実態のあるふれあいの森です。蛇足ですが、著者はかつて自治体で流行した「ふれあい」と名のつくニ三十の施設を見ましたが、おさかなに触れる「ふれあいプール」1か所以外、「ふれあい」にふさわしい名前の施設を見たことがないです。なぜかふれあい活動より、管理のための管理が先立つ姿が見えるのですね。2020年からは、コロナ禍で利用者が減り運営が大変のようでしたが、その後は回復しています。

 そして活動の舞台が、コバノミツバツツジの森なのです。2019年3月31日は早かったので咲いていませんでしたが、翌2020年4月15日(水)に訪問しました。下草をしっかりと刈って、倒木を取り除き、よく手入れされています。人々がツツジの花見をしてきた1960年代までのような森の姿がありました。火・水は休業日でスタッフはいませんでしたが、学校がコロナ禍で休校になったのか、親子連れが遊びに来ていました。著者の行動も含めて、コロナ禍だからこそ、密にならない外に出ることは、推奨できることです。

ハンモックのある森で遊ぶ家族

 ワクワクしながら、夢中になって遊びながら、手足であり五感を使った体験は、プレイフル・ラーニングといい、子どもにとって生きた知識が獲得できる学びの原点です。第10話でもさわりを述べましたが、子どもも高齢者も、熱中でき、工作などの体験を通じた文芸趣味を深め、手入れされたコバノミツバツツジの森に抱かれた原風景の地がありました。ふれあいの森なんでも工房は、高齢者にとって第11話の「貧しいけれども豊かな時代」であろう過去の自身の原風景の生き写しであり、子どもにとってこれから刷り込まれていく原風景になります。機会があればぜひ実際の活動を見学して、参加したいですね。子どもたちの豊かな里山体験、高齢者の元気な生きがい活動、コバノミツバツツジの美しい森づくりの、3拍子揃ったふれあいの森なんでも工房の運営方法には、学ぶべき多くの知恵がありました。


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