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30.津偕楽公園 紫ツツジの池泉回遊園

 津市にある津偕楽公園は、面積が6.52haで、津駅から歩いて400mの便利な場所にあります。コバノミツバツツジが豊かな池泉回遊式の大名庭園として、全国で最も優れた名園だと言えます。駅からアクセスする北東部は低地で、中央部の谷に池があり、それを丘陵地が取り囲んでいます。園内には公称で、桜約1000本、ヒラドツツジなどの園芸ツツジ約2500本植えられており、約800株の紫ツツジ、すなわちコバノミツバツツジが基本的に自生しています。三重県の北部から岐阜県の西部にかけてと、埼玉県秩父の一部では、コバノミツバツツジのことを紫ツツジと呼んでいます。もちろん、津市の花はツツジです。

 津偕楽公園は、元々は津藩主の藤堂家の鷹狩の場で、下部田しもべたやまや御殿山と呼ばれていました。承応年間(1652~1655)には、功労があった藩士にこの地が分け与えられました。11代藩主藤堂高猷たかゆきは、ここを藩士から買い上げて、1859(安政6)年に、御山荘ごさんそうとよばれる山荘をつくりました。廃藩置県で、1871(明治4)年に国有地となり、1877(明治10)年に三重県公園が開設されました。翌1878年には園内で憲博覧会が開催されました。1890(明治23)年には津市に移管されて、津市公園と改称されました。1907(明治40)年には、第9回関西府県連合共進会が開催されて、78万人が訪れました。
 1924年の『津市案内記』には、「此の公園の要領は蹄形ていけいわだかまる丘陵に花木巖石がんせきを面白く配置し、中央の凹地に加工して『八ッ橋池』をたたえたに過ぎぬ。其の自然の風致に重きを置いて、余り多くの人工を加えない所に、言い知れぬ妙趣がある。」と、既存地形を活かした趣向の本質を紹介しています。

津市公園1930年の瓢箪池(八ッ橋池)の八ッ橋 国立国会図書館 NDLギャラリーより

 吉田初三郎が1932~1934に描いた『津市を中心とする名所交通鳥観図』には、「津駅の西三町、市の北端に位する。藤堂候の旧山荘で広明の里と呼び、自然の丘陵起伏するところ巧みに草木泉石を布置し、四時の眺めと山海の勝を兼備する関西屈指の名園」と紹介されています。
 著者は、2022年4月8日に津偕楽公園を初めて訪れて、起伏を活かした園路を回遊しながら、池、谷、斜面、丘の上の芝生が織りなす地形変化に馴染んだコバノミツバツツジに、感動しました。コバノミツバツツジは、斜面地が似合います。そして、斜面地に馴染ませることが肝要です。

起伏を活かした園路

 『津市案内記』ではさらに桜の紹介の後に「が、ここには桜の他に、名花紫躑躅むらさきつつじが呼物である。紫躑躅むらさきつつじは『もちつつじ』の別名、石楠科石楠属の灌木で、界隈の丘陵には可なり多く播布はんぷせられている。幕藩時代にお庭師の手で、其のつつじを園内隈なく植付け、愛護培養したので、今は幹もり枝も栄えて、眼のさめるような紫の花が一時に咲きそろうて、園内全く爛漫らんまんたる濃紫こむらさき幔幕まんまくを張ったうな一大美観となる。津市公園の誇りは桜よりもこの花である。桜の公園というよりも紫躑躅むらさきつつじの公園といってよい。」と記しています。

瓢箪池(八ッ橋池)の八ッ橋

 『津市案内記』の記述の間違い部分は、紫躑躅むらさきつつじはツツジ科ツツジ属のコバノミツバツツジで、周辺の丘陵に広く分布していたコバノミツバツツジは、元々公園にもあって、幕末の庭師がしっかりと手入れをして幹が太く育ったと、訂正できます。桜より、爛漫の紅紫べにむらさきのコバノミツバツツジの幔幕まんまくに囲まれた公園なのです。

コバノミツバツツジの幔幕まんまく

 池を渡る橋は、人々を引き付けて、橋上から眺め、橋に佇む人を周りから眺める、とても良い景物になっています。ソメイヨシノに少し遅れてコバノミツバツツジが咲くので、津偕楽公園春まつりが行われる3月下旬から4月中旬は、花見客でにぎわいます。コバノミツバツツジは橋詰を、麗しく飾っています。

八ッ橋と橋詰のコバノミツバツツジ

 池に散ったサクラの花筏はないかだとコバノミツバツツジの競演が見事です。

花筏はないかだ

 ちょうどよさそうな場所に、あずまやがあります。丘の上の芝生でも、ゆっくりと休めます。

芝生広場の一隅でくつろぐ

 偕楽公園は、1963(昭和38)年に、市史跡・名勝に指定されました。園内には10基以上の碑が散在しており、津の人々が顕彰した記録が示されています。

顕彰碑

 コバノミツバツツジの自生地が継承されているこれほどの公園が、市街地の中心部にあることは、とても素晴らしいです。

【参考文献】
津市『津市案内記』1924
本堂弘之「津の名所 偕楽公園」毎日新聞社編『続新視点 三重県の歴史』2014 山川出版 p208-210


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