星、ささってもうた⭐︎2
あらすじ
二十七歳、猫と二人暮らし、ちょっとブラックな会社勤めの私。流星群見てたら、右後頭部に星がぶっささっちゃった。その日から少しずつ私の日常が変わり始める。
脱力日常ファンタジーです。
第一話
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第二話 病院に行くか行かないか
飼い主の星に頭がぶっ刺さってから一日経った。あんなにぶっ刺さってるんだから、てっきりすぐ病院かと思ってたのに、どうやらそうじゃないらしい。
「え、ええー」
あの日、星が頭にぶっ刺さってるのを鏡で確認した飼い主は、言葉を失っていた。しばらくかけて現実を受け止めたあと、リビングのソファに座ってしたことは、スマホを取り出すことだった。
「星 頭に刺さる」
そんな検索、生きててすることがあるだろうか。いや、星、頭にまで打って、刺さるが出てきたから結構あることなんだろうか。
「なんだ、いるんじゃん結構」
検索した結果、他にも同じ症状の人がいることがわかった飼い主は胸を撫で下ろした。他に同じ人がいるからって解決したことにはならないと思うんだけど飼い主はポジティブだ。
そして次に検索したのが、「星 頭に刺さった 死亡」だ。どうやら、死んだ人はいないらしい。
「なら大丈夫か〜」
飼い主は大きく伸びをして、星がぶっ刺さってる頭を撫でた。
「とれないかな、これ、自然に」
取れないと思うよ、絶対。そもそも頭に刺さってるのが不自然な状態なんだから。そう言いたいけど、生憎猫なので伝える手段がない。本当にしょうがない人だ。
「もうちょっとで病院も昼休憩だからなー。午後に電話してみようかな。」
そう言って飼い主は立ち上がり、昼ごはんの準備を始めた。今日はレトルトのパスタらしい。鍋に湯を沸かす。飼い主はたらこパスタが好きだ。パスタソースは市販のものだけど、刻みのりはこういうときのために別で買っているからマシマシだ。
「のりまきもごはんどうぞ」
飼い主が座っているすぐ横にご飯が出される。かつおとマグロ味のカリカリだ。悪くないけどパンチがない。のわあーぬわーと大袈裟に鳴くと、たらこソースをちょっぴり舐めさせてくれた。
ちなみにこの世界の猫は頑丈な腎臓を保つため絶対腎臓病にはならない。絶対にだ。
「休日の病院って行きたくないんだよな、混むし」
「行ってなんともないなら時間の無駄だしなあ」
「二、三日経ってポロッと取れるなら馬鹿らしいしなあ。」
もそもそパスタを食べながら言っている飼い主は、どうやら意地でも病院に行きたくないらしい。これは、午後も電話しないな。
アタシに同意して欲しいのかちらちらこちらを見ながら独り言を言って来るけれど、アタシは病院に行くべきだと思うから決して同意はしない。さっさと病院に行って引っこ抜いて貰えばいいのだ。絶対そのほうがすっきりする。うだうだ言うてる時間こそが無駄だとどうして思わないのだろう。
「そういえばお水がもうないんだった」
パスタを食べ終えて、流しに皿を置いた飼い主が、冷蔵庫を開けてそう言った。
飼い主の言う、水とはアタシが飲むミネラルウォーターのことだ。東京の水道水なんて不味くて飲めるわけがない。
「買いに行かないとな、なんか素焼きアーモンドも食べたい」
「行ってくるね、のりまき」
行ってらっしゃい。そう言った飼い主に鳴き声で返事をした。
飼い主は部屋着の白字に英語で何か書いてあるTシャツとピンクの半パン、サンダルを履いて近所のコンビニに出かけて行った。
もちろん頭には、星がぶっ刺さったままだ。
きっと何食わぬ顔でレジに行くんだろう。
事態が急変したのは、夜寝るとき、頭に刺さった星が光だしてからだった。寝られないのだ、アタシが。夜は暗いほうがいい。パレードみたいにキラキラされたら落ち着かなくて寝られたもんじゃない。
飼い主は気にせず爆睡していたけれど、アタシが何度か抗議の声を出すと、
「寝られないよね、ごめんね。明日にでも病院に行くよ」
と言って休みをもぎ取ってくれた。ちなみに彼女が有給を取るのは、これが初めてだ。少し嫌な顔をされたけど、取引先に怪訝な顔をされるから、というと許可が下りた。なんて会社だ。
病院に行くと、ぎょっとされるかと思ったけれど、医師の反応は案外普通で、
「ああ、流星群症候群ですね」
表情一つ変えずに韻を踏むからふざけているのかと思ったけれど、どうやら大真面目らしい。最近よく見られるそうだ。
「よくあるんですか?」
と聞くと、医師はそんなことも知らないのか、というふうにフッと笑った。
「最近の若い人って目標とか何もない人多いでしょ。よくいるんですよ。それでぼーっと空とか見上げてたらね、せめて頭くらいは光らせてあげようと思って星のほうが飛んでくるんです」
呆れたように言った。ひどすぎる。飼い主は気にしていないようだけれど、あとで飼い主の隙を見てパソコンで低評価の口コミをいれよう。「ものの言い方に遠慮がなくて失礼。患者に寄り添う気持ちが無さすぎる。星1」
アタシはタイピングもできるのだ。
「治りますか。」
「治るっちゅうかねー。自然に抜けるのを待つか、そのまま生きていくか…手術もできますけど」
「できるんですか?」
「法外な手術費が掛かりますよ。最近出てきた症状なんでね、保険適用されてなくて。」
「はあ、他にも患者がいるのに保険適用されないもんなんですかね。」
「みんな目的のない若者には厳しいからねえ」
どうやら、打つ手なし、ということらしい。医師は見るからに早く帰ってほしそうだ。
「あ、そうそう。無理やり引き抜こうとしないほうがいいですよ。そのままずるずる脳みそがでてくることもあります。」
しれっと恐ろしいことを言うから縮み上がってしまった。怖すぎる。そうそう、じゃなくて絶対に伝えるべきことだと思う。
「とりあえず、頭痛いならロキソニン出しときますね、お大事に」
そう言われて診察室をあとにした。
ロキソニンって便利だなと思った。
