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【エッセイ&作品紹介】 恋に落ちたのは、十月だった

 いつも楽しませてもらっている#noteでBL。今回は特別企画です✨

 自作について、自作キャラクターについて、BLについて、何でも自分語りしていいよ!という大盤振る舞いな企画、なみさん、いつもありがとうございます!

 私は何を書こうかすごく迷って、もう、書いては消ししていたんですが、思い切ってガールズラブについて書かせていただこうと思います(!)


・ we fell in love in october 

 いざ自分の創作について語ろうと思うと、難しいし、気恥ずかしいものだなと実感しました。
 この記事のタイトルですが、girl in red というノルウェー出身の女性アーティストの曲からいただきました。

 彼女は自身のセクシャリティについてカミングアウトしています。同性が彼女の恋愛対象。この曲のフィルムは、恋する女の子同士の多幸感と可愛らしさに溢れていて、とても好きです。


・性別を飛び越えること

 私は2020年末くらいからポツポツと創作を始めました。それ以前は、子どもの頃に、空想しては書くことが好きでした。
 何か伝えたいとか表現したいことがある、というより、書いてみてから「これはこういう話かな?」と振り返るタイプの書き手です。
 興味があるのは性別を飛び越えることです。
 なぜそこに興味があるのか、自分でもわからない部分があります。
 いちばん影響を受けたのは『境界を生きる』というノンフィクションです。この本を読んだのは創作を始めるよりずっと前なのですが、心に残っていて、時々読み返します。


・『あまごいランドリー』

 せっかくの機会なのでふだんブロマンス、BLを書いている場で、ガールズラブ要素のある作品を紹介させてください。
 全てを公開すると長くなるので、後半のみ抜粋して載せます。
 舞台は雨の日のコインランドリー。
 主人公(女の子)は、コインランドリーで知り合った雪乃ちゃんという年下の女の子の、遠距離恋愛の悩みを聞いてあげています。雪乃ちゃんには星くんという彼氏が地元にいるけれど、なかなか会えません。雨の日にコインランドリーで出会うたびに、ちょっとづつ、主人公にとって雪乃ちゃんが特別になっていく、という話です。
 以下、本文です。
✏︎✏︎✏︎
 
 梅雨が明けなければいいのにって思う。
 雨の休日が楽しみになった。朝からコインランドリーで雪乃ちゃんを待つ。
 朝からシャワーを浴びて、男の子たちの煙草とお酒の匂いは消していく。
 雪乃ちゃんは丁寧な暮らしをしている。お嫁さんにしたい女の子。きっと星くんもそう思っているんだろうな。
 毎週、シーツやら枕カバーやらを交換して、洗って乾かして。律儀なルーティーン。

 私たちはベンチに並んで座る。雪乃ちゃんのお仕事の愚痴を聞いて、星くんに会えなくて寂しいっていう話を聞いて、私は上の空で相づちを打つ。
 こんなに星くんが大好きな雪乃ちゃんは、なんで地元で就職しなかったんだろうって、ぼんやり思う。
 雪乃ちゃんなりの冒険なのかな。結婚したいって雪乃ちゃんは何度も言う。結婚前に冒険したくなるのかな。
 雪乃ちゃんの手を握ってあげる。
 ふっくらしてしっとりして、気持ちいい。
 梅雨の真っ只中で蒸し暑さが加速してる。
 コインランドリーの中の温められた空気で、雪乃ちゃんの肌がしっとり汗ばんでる。
 ゆるめのあごのラインに崩れて浮いたファンデーション。どきどきする。舐めちゃいたい。

 コンビニのスイーツを買ってきて、植物性脂肪たっぷりのクリームをすくって食べて、笑い合って。女の子同士の美容情報の交換して。
 雨降りの朝のデート。
 疲れて寂しい雪乃ちゃんを癒やしてあげるの。

 他のお客さんは面白くもなさそうに、洗濯物を機械に突っ込んでは出て行く。ブザーが鳴った後に帰ってくる。
 他人のパンツや靴下の回転を眺めながら、私たちは肩を寄せ合う。

 乾燥機からシーツを取り出して畳むのを手伝うのも、好きな時間。
 熱々のシーツで雪乃ちゃんをくるんでしまいたい衝動を抑えながら、ふたりで端と端を合わせて畳んでいく。
 小花柄のシーツと枕カバー。柄物のシーツの上で抱き合うなんて無粋だと思ってた。だけど、雪乃ちゃんならかまわない。思い切り甘やかしてあげたい。
 雪乃ちゃんの白い肌がピンク色に染まるところを想像して、私は後ろめたくなる。
 せっかく洗って乾燥させたシーツを雨に濡らさないように、ビニールバッグにきっちり収納して、雪乃ちゃんが帰って行く。

 私は抜け殻みたいな気持ちになって、自分の洗濯物を持って、コインランドリーを後にする。このところ定宿にしている男の子の家に帰るけど、男の汗の匂いと蒸した部屋の匂いに耐えられない。
 気分が悪くなる。トイレにこもって、さっき雪乃ちゃんと食べたスイーツを全部吐く。胃液臭い自分の手指に絶望して泣く。
 梅雨が明けたら誕生日が来る。丁寧な暮らしから転げ落ちたまま、私はまたひとつ、年を取る。
 トイレから出て確認したら、母と父から別々に着信していた。もうお金なんか送れないって言ってるのに、なんで分からないんだろう。
 そういえば雪乃ちゃんの連絡先を知らない。
 連絡先も聞けないまま、コインランドリーに通い詰める。雪乃ちゃんの顔を見て、雪乃ちゃんが、がんばって丁寧な生活しているのを見たくて、通い詰める。
 会いたくて。

「雪乃ちゃん、きれいだね。いつも可愛いけど、今日はいつもよりきれい」
 思ったことを口にした。
 六月も終わりかけの土曜日。
 雪乃ちゃんは珍しく、私より先に来ていた。
 今日は豪雨と言っていい天気だった。今日は雪乃ちゃんは来ないかもしれない、と半ば諦めていた。
 コインランドリーのガラス窓に雨がびしゃびしゃと当たっている。
 
 雪乃ちゃんはベンチの上で私と手を繋がなかった。スマホを握りしめていた。
「この雨のせいで、東海道新幹線が遅れちゃっているみたいなの」
 せっかく星くんが来る予定だったのに、と雪乃ちゃんが顔を曇らせる。

 私は半袖から伸びた自分の腕をこする。雪乃ちゃんとくっついていないと寒い。
 いつもより念入りにお化粧して、雨降りなのに可愛いサンダルを履いて、恋する女の子はなんて健気なんだろう。

 雪乃ちゃんは首をねじったような姿勢のまま窓の外をにらみつけていた。
 私は洗濯機と乾燥機を見ていた。
 泡の中で絡まる洗濯物。上になって下になって、もうどっちがどっちか分からない。
 混ざり合って、このままずっと回っていて欲しいのに。

 星くんがうらやましい。
 雪乃ちゃんにこんなに想われてて、雪乃ちゃんに触れて抱きしめることが許されてる彼氏。
 私は星くんになりたい。

 雪乃ちゃんがうらやましい。
 洗い立てのシーツを用意して彼氏を待っている、すずらんの匂いの女の子。私はそんな存在になりたかった。
 私は雪乃ちゃんになりたい。
 
 星くんと雪乃ちゃんから産まれた子は、きっと清らかに幸せに育つ。雪乃ちゃんは地元にいるべきだったんだ。冒険して足を滑らせたら、私と同じになっちゃう。

 洗濯物がぐるぐる回るみたいに、お腹の底がぐるぐる回る。
 雪乃ちゃんの手の中でスマホが震えた。雪乃ちゃんのため息に、私のお腹の底がじわっと震える。
 私は濡れねずみの靴を脱いでベンチの上で膝を抱えた。コインランドリーに着く前に横殴りの雨で身体が濡れた。そのせいか、寒い。
 こんなお天気の日でも、もしかしたら、雨だからこそ雪乃ちゃんは来るかもって、そう思ってここへやって来た。 
 星くんも来るだろうか、こんな日だからこそヒーローみたいに、雨をものともせず、雪乃ちゃんのために来るだろうか。

「大丈夫?」
 雪乃ちゃんが私の異変に気が付いて、背中をさすってくれた。
 寒気とは違うゾクゾクが背骨を這い上ってくる。わたしはいじわるで、よこしまで、いやらしい。
「ちょっと寒いだけなの」
 私は嘘をつく。
 私は、雪乃ちゃんに触られたい。
 雪乃ちゃんの手の中で、またスマホが震える。雪乃ちゃんは右手でメッセージを確認しながら、左手で私の背を撫でてくれる。

 雨と風が強まっている。
 このまま降り続けて欲しい。星くんを乗せたまま新幹線が止まってしまえばいい。
 洗濯機も乾燥機も回り続けて、永遠に止まらなければいい。いつまでも回って、コインランドリーに閉じ込められちゃいたい。

 びりびりする低めの音、ブザー音と共に乾燥機が止まった。
 乾燥が終わったのは雪乃ちゃんのシーツだ。薄い黄色地の小花柄のシーツ。ふちにゴムが入っててベッドにすっぽり被せられるやつ。
 私は立ち上がった。
 濡れたスニーカーに足を突っ込む。雪乃ちゃんの手が私の背中をすべり降りる。私は雪乃ちゃんの手を引いた。白くて柔らかくて、最初に会った日に見惚れた手。

「雪乃ちゃん、てるてるぼうずを作ろう」
 せっかくきれいになったシーツ。乾燥したてのふわふわ熱いシーツをふわりと持ち上げる。
 私たちの頭の上に被せる。
 淡い黄色のテントの中。私は足元を見る。私の濡れた靴と雪乃ちゃんのサンダルが向き合ってる。
「これはお祈りなの」
 私は嘘をつく。
「雪乃ちゃんのために、雨が止むようにって、お祈りなんだよ」

 もしもお店の外から誰かが中をのぞいたら、私たちは、てるてるぼうずというより、育ちすぎたおばけみたいに見えるだろう。小花柄のおばけが乾燥機の前に突っ立っている。
 幸い、横殴りの雨のせいで窓ガラスも全然クリアじゃない。お客さんも来ない。

「雨よ止めってお祈りしよう」
 これも嘘。私は嘘を重ねる。
 私は雪乃ちゃんの肩に腕を回す。私の方が少し背が高いから、雪乃ちゃんを私の腕の中に閉じ込める。
 雪乃ちゃんの胸が私の胸に当たる。ふわっとそこから溶けてしまいそう。

 本当は雨が止まないように祈ってる。雨乞いしてる。雨よ降れ。雨よ降れ。永遠に降り続けて、梅雨が明けなければいい。

「雪乃ちゃんも目を閉じて、祈って」
 雪乃ちゃんが素直に目を閉じる。
 雪乃ちゃんのまつげの影。白くまるいお肉ののった、ほっぺた。
 私は乞う。雨を乞う。愛を乞う。
 雨乞いする。

「これはお祈りだから」
 シーツの下で雪乃ちゃんの髪をひと房耳にかけ直してあげる。
 ずっとこうしたかったの。
 乾燥ドラムみたいにお腹の底が熱く回って、感情が振り切れる。
 雪乃ちゃんの頬にそっと口付ける。ファーストキスなんかより、もっとずっと、怖いくらいに唇が震えてる。
 かさかさの私の唇で味わう、雪乃ちゃんの頬。産毛とまつげとひそやかな息。

 雪乃ちゃんはスマホを握りしめたままだった。雪乃ちゃんの右手の中で、スマホが振動を始めた。触れ合う胸と胸、腰と腰。
 振動は身体を伝う。
「雪乃ちゃん、お祈りを続けて」
 私は甘く噛む。雪乃ちゃんの耳たぶを甘く噛む。スマホは鳴り続け、振動は身体に伝わり続ける。

 その電話に出ないで、雪乃ちゃん。

「ほら、晴れの日みたいでしょ」
 黄色い小花柄のシーツは即席の晴れの日みたい。シーツに守られたふたりだけの空間。
 叩き付けるような雨の音。
 私の洗濯物が洗濯機の中で回る音。
 このまま止まないで。止まらないで。降り続けて。降れ。雨よ降れ。降れ。
 降ってきて。

 ここに触れて。
 
 シーツの下に隠れて触れ合う唇で、窒息したいの。

✏︎✏︎✏︎
 ここまで読んでくださってありがとうございます。作品全体は、こちらから読んでいだだけます。もしもお時間があれば!

 『あまごいランドリー』は、エブリスタの妄想コンテスト「雨よ降れ」というお題のときに佳作を受賞しました。
 雨という場面を使うのが好きなので、そういうお題のときはがんばって応募するようにしています。
 
 物語や設定を着想したときに、登場人物の性別の組み合わせに悩むことがあります。
 自分の中でいちばんしっくりくる組み合わせになるまで、試行錯誤します。
 noteでBLのときも、最初から「BLを書こう」と思っているのに、これは女性視点で書いた方がしっくりくるんじゃないか、と書き直してしまったり・・・・・・。
 企画に初参加させもらったときの『いつかオージサマが』という作品がそうでした。
 ブロマンス・BL企画に初参加するのに、まさかの女子視点だったのですが、ほんとに温かく迎え入れてくださって、すごく嬉しかったのを覚えています。


 今回の特別企画も、そんな懐の深いなみさんとメンバーの皆さんに甘えて、BL語りではなくガールズラブ語りで、やらせていただきました!


 最後に、よく使ってしまうシュチュエーションとか言葉について、挙げておきます。好きなものもあれば気がついたらまた・・・・・・というものもあります。
 何か皆さんに刺さるワードがありますように!

 コインランドリー、冷蔵庫、つめ切り、雨降り、組体操、バニラアイスクリーム、小田急線、牛乳、アパートの外階段、アンナ・カリーナ、花束から水滴、双子、地球の自転と公転、添い寝、ジャージ、スニーカー、白砂糖、朗読。


 noteでBLの皆さんの、自分語りや作品語り、創作語りにおじゃまするのも、とっても楽しみです✨



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