【読書感想文】 『すべて失われる者たち』
花澤薫さまの短編小説集を読みました。
寝る前に一編づつ大事に読みたくなるような、読んだことを誰かに話したくなるような、珠玉の短編集です。
ここにそっと感想を書いておきます。
まず短編集のタイトルが好き。作中に出てくる音楽や映画が好き。私にとってノスタルジーをかき立てられる断片たちが、そこかしこに漂っている。27歳の雨の日から、自分は何を失ったのかな、と考える。
ポール・オースターのナショナルストーリープロジェクトが好きだし、ストーン・ローゼスが好きだし、プライマル・スクリームのボビーは80年代から1ミリも体型が変わらないと思う。
そんなことを考えながら、ちょっとづつ読み進める。
一番好きなのは「さようならのメロディ」という作品。小学校五年生の直太郎が体験する初めての気持ちに読んでいて胸がきゅっとなる。
こんな瑞々しい気持ちを抱えて、日々を生きていけるのだろうかと思ってしまうほど。
直太郎は彼女に何と伝えるのか、さようならの気配の中で、物語はふいに終わる。
誰もが自分の人生を生きているけれど、どこか遠くの誰かも、同じ時代に同じようにそれぞれの人生を生きている。そのことを、もの悲しくも愛おしく感じさせてくれる作品たち。
秋の夜長の読書にぴったりの素敵な一冊でした。
