邪道のやり方
今日のオープニングナンバー
go!go!vanillas「カントリー・ロード」
出勤のお供
堀口大學訳『ヴェルレーヌ詩集』
こんなん、寒けりゃ寒いだけいいんだ。
寒けりゃ、みんな元気が無くなるから良い。
みんな元気が無けりゃ、俺だって元気出さなくていい。俺がいつも通りの元気の無さでも、そこまで目立たない。
俺が家でそうしているような、土気色の顔でぼんやり妖怪とか、未解決事件のことを考えている、極めて萎れた調子でいたとしても、みんなも寒くて元気がないなら、俺ひとりおかしい訳では無くなる。だから全国民の元気を奪い取る位、寒けりゃ寒いほどいい。
寒けりゃ、一年の終わりが近付いている感覚がして良い。
一年の終わりが見えてくれば、これから先、そこまでイベントとか行事とか、そんな体力を使うものが残っていないと感じられるからいい。
これが春なら、これから先、あれもやってこれもやらなければいけない、と思ってしまう。そうすると疲れる想像ばかりして、いけない。一年が終わるなら、疲れる余地も自然と少なくなってくる。一年の終わりが見えてくる位、寒けりゃ寒いほどいい。
「新人じゃ埒が明かないのでベテランの人に対応してもらおうと思って掛け直しました」という電話を取ってしまった新卒の俺。危機一髪。
「私が対応いたします」と言うしかなかった。
「この会社で私が一番の新人なのですが」と断ったら多分憤死される位の勢いに圧されて、一か八かのハッタリ。声は少し低めに、ゆっくりと話してみる。同じフロアにいるベテランの方っぽい喋り方をしてみたら、どうやら俺を信用してくれたらしい。
ブチギレvsハッタリ、開戦。
「さっき電話した人は話が伝わらなくて」と3分くらいのクレーム。もしかしたら他のデスクで仕事をしている同期が取ったのかもしれないと思うと、少し心が痛んだ。
「左様でごさいますか……」と相槌を打ちながら、「文句を誠実に聞いてあげる今の俺の業務はホストか、カウンセラーと同じと言っても過言じゃねえな」ということを考えていた。不真面目。
さて本題に入ってみると、内容自体はそこまで複雑なものではなかった。おそらく会話の雰囲気から察するに、相手の要件の伝え方の問題だったのだろう。とはいえ対応方法なんて新人の俺には分かりっこないから、保留にして先輩に対応を聞いて、電話はすんなり終わった。ハッタリの勝ち。
会社に入ってから、自分の本来の戦い方が全く活かされていないと思っていた。私は昔からハッタリと裏工作と、言い訳を作ってから行動するというやり方で生き残ってきた。
しかし会社ではそうはいかない。少なくとも表向きは、正々堂々と誠実に対応することが求められている。これがどうもやり辛かった。
しかし今日、咄嗟のハッタリで無事に対応することができた。もちろん相手を騙して有耶無耶にしたわけではなく、最後は正しいゴールに到達することができたのだ。
ハッタリとは技術ではなかった。自分じゃとても戦えそうもないと思ってもなんとか喰らいつこうとする意志だったのだ。
会社では嘘はつかない。しかし何かしら仕掛けられるのではないかと考えるトリックスターの心は持っていきたいと思った次第であります。
また明日。
