RHSチェルシーフラワーショー2026の見どころを総まとめ “心を整える庭”の時代へ
ロンドンで現在開催中のチェルシーフラワーショー2026。英国王室、世界的なガーデンデザイナー、建築家、植物研究家、アーティスト、文化人たちが集うこのイベントは、単なる“花の祭典”ではありません。
英国においてチェルシーフラワーショーは、その時代の価値観を映し出す文化的な舞台でもあります。どのような庭が評価され、どのような植物や素材が選ばれ、どのような空間に人々が足を止めるのか。そこには、その時代の人々が何に疲れ、何を求め、どんな未来を理想としているのかが、驚くほど正直に表れます。
そして2026年のチェルシーで強く感じられるのは、「庭」が単なる観賞物から、心と身体を回復させるための空間へと変化していることでした。
気候変動、生物多様性、メンタルヘルス、神経疾患、サステナビリティ、都市生活による疲弊。そして、禅や静寂、余白といった精神性。これらのテーマが、今年のチェルシーフラワーショーでは大切にされていました。
チェルシーフラワーショーとは
チェルシーフラワーショーは、英国王立園芸協会、RHSが主催する世界最高峰の園芸イベントです。1913年から続く歴史あるショーで、毎年5月、ロンドン・チェルシーにあるRoyal Hospital Chelseaを舞台に開催されます。
今年も約14万5000人もの来場者が見込まれ、会場には大型のショーガーデン、バルコニーガーデン、コンテナガーデン、ハウスプラントガーデン、そして巨大温室「グレート・パビリオン」などが並びます。
けれど近年のチェルシーは、単に美しいガーデンや珍しい花や植物を見せる場所ではなくなっています。庭を通して、気候変動や福祉、心の健康、都市と自然の関係を考える場へと変化しているのです。
英国においてガーデニングは、単なる趣味ではありません。暮らしの美意識であり、教養であり、自然との関わり方を表す文化そのものです。だからこそ、チェルシーフラワーショーを見ることは、今の英国社会が何を美しいと感じ、何を大切にしようとしているのかを知ることでもあるのです。
会場中が足を止めた“Mother Nature”

今年、会場でもっとも大きな話題を集めた作品の一つが、《The Campaign to Protect Rural England Garden: On the Edge》でした。
その庭の中に横たわっていたのは、巨大な“Mother Nature”、つまり母なる自然の彫刻です。植物に包まれるように静かに眠る巨大な女性像は、まるで大地そのものが人の姿になったかのようでした。
頭部だけで約2トン、胴体はさらに3トン、全体のサイズは約7メートル。圧倒的なスケールでありながら、その姿には不思議な穏やかさが漂っています。巨大でありながら威圧的ではなく、むしろ静かに、見る人へ問いかけてくるような存在でした。

この庭を手がけたのは、英国を代表するランドスケープデザイナー、サラ・エバール。彼女はこの作品で、今年の「Best in Show」、つまり最優秀庭園賞を受賞しています。
この庭のテーマは、“Edgelands”、境界地帯です。
都市と田園のあいだにある、普段はあまり意識されない場所。高速道路脇や鉄道沿線、郊外の空き地、放置された雑草地のような、いわば“見過ごされた自然”です。
私たちは、そうした場所を美しい景色として眺めることは少ないかもしれません。けれど実際には、そこに野草が生え、昆虫が集まり、小さな生態系が息づいています。都市生活のすぐそばにありながら、私たちが忘れてしまった自然の避難場所でもあるのです。
このMother Natureの彫刻は、そうした忘れられた自然を象徴しているように見えます。人間が見過ごし、開発し、管理しようとしてきた土地。それでも自然は、そこに存在し続けている。母なる自然が眠る姿には、そんなメッセージが込められているようでした。
素材にもまた、今年のチェルシーらしい思想が表れています。彫刻には、英国国内で別用途のために伐採された木材が再利用されており、中には病院建設に関わる木材も含まれているそうです。役目を終えた木に新たな命を与える。その発想自体が、サステナビリティを単なる言葉ではなく、美しい造形として見せていました。
“完璧な庭”から、“共生する庭”へ
かつての英国庭園といえば、きれいに刈り込まれた芝生、整然と管理された植栽、秩序ある美しさを思い浮かべる人も多いかもしれません。
もちろん、そうしたクラシカルな英国庭園の美しさは今も健在です。けれど2026年のチェルシーでは、自然を完璧にコントロールする庭よりも、自然の野生味や揺らぎを受け入れる庭が目立っていました。
風に揺れる草花、昆虫が集まる植栽、再利用素材、在来植物、土や水の質感。そこには、人間が自然を支配するのではなく、自然と共に暮らしていくという価値観の変化があります。

この流れは、単なるデザイントレンドではありません。気候変動や生物多様性の喪失を前に、庭そのものが“自然との関係を考え直す場所”になっているのです。また、今年のチェルシーで語られていた“共生”は、単なるナチュラルガーデンではありません。
人間の身体
精神
都市
気候
生態系
すべてを含めた“共存設計”へ進化しているのです。
2026年のキーワードは「水」
今年のチェルシーを語るうえで欠かせないのが、「水」です。
会場のあちこちで、水が流れ、反射し、音を立て、空間に静けさを与えていました。昨年までは、雨水利用や洪水対策、水資源管理といった実用的なテーマとして水が扱われることが多かった印象があります。
けれど2026年は、水そのものが持つ癒しや感覚的な力に光が当たっていました。
水音は、神経を落ち着かせます。水面の揺らぎは、視線を柔らかく受け止めます。流れる水は、停滞ではなく変化を感じさせます。今年のチェルシーでは、水が単なる装飾ではなく、人の心身を整えるための“感覚の装置”として使われていました。
また、The Eden Project: Bring Me Sunshine Gardenでは、“生命循環としての水として使われていました。海辺のランドスケープをテーマにしており、浅い水盤、水辺の植栽、湿地的演出が非常に美しく構成されていました。
ここでの水は、気候変動時代の生命資源として扱われています。特に印象的だったのが、貝殻廃材を使った低炭素素材、水循環、海辺植物との組み合わせ。単なる装飾水景ではなく、循環する自然を見せる庭でした。
パーキンソン病患者のための庭

《Parkinson’s UK – A Garden for Every Parkinson’s Journey》のデザイナーはArit Anderson。この庭は、パーキンソン病と共に生きる人々のために設計されました。

特に印象的なのは、“hand-rill”と呼ばれる、水が流れる手すりです。滑らかな木製の手すりの内側を、水が静かに流れていく仕組みになっています。
これは単なる美しいデザインではありません。パーキンソン病には、突然身体が動きづらくなる“freezing”と呼ばれる症状があります。そのような時、水音や触覚、視覚的な流れが、安心感や動き出すきっかけを与えることがあります。
つまりこの庭は、ただ眺めるための庭ではなく、身体を支え、神経を落ち着かせ、人が自分のペースで歩けるように設計された庭なのです。
園路は蛇行しながら続き、異なる植栽のエリアを通っていきます。その構成は、病気と共に生きる人生の旅路そのものを表しているようにも見えます。華やかな庭でありながら、そこには優しさがありました。

パーキンソン病患者のための庭では、特別な新品種の薔薇「Parkinson’s Resilience Rose」も発表されました。
この薔薇は、英国の老舗ローズナーサリー Harkness Roses と Parkinson’s UK が共同で開発したもので、名前は、実際にパーキンソン病と共に生きる人々によって名付けられました。
この薔薇は、庭の中の豊かなボーダー植栽に組み込まれていますが、特に興味深いのは、“香りが非常に弱い”品種だという点です。ガーデンデザイナーのArit AndersonとHarkness Rosesは、あえて「低香性」の薔薇を選んだ理由は、嗅覚障害(anosmia)に光を当てるためです。
嗅覚の喪失は、パーキンソン病の初期症状の一つとして知られているものの、一般にはまだ十分認識されていません。“香りを楽しむ花”である薔薇に、あえて香りを抑えた意味を持たせるというメッセージ性も、この庭の非常に印象的な部分でした。
花は、サーモンピンクを基調に、やわらかなクリームアンバーが重なる繊細な色合い。中心には深いルビーレッドが入り、鮮やかな黄色の雄しべがアクセントになっています。
さらに、この薔薇は育てやすさも重視されています。土壌を選ばず育ちやすく、大型コンテナでもよく育つため、身体に負担をかけずにガーデニングを楽しめる点も特徴です。現在、この「Parkinson’s Resilience Rose」は4リットル鉢で販売されており、売上のうち5ポンドが Parkinson’s UK に寄付されます。寄付金は、パーキンソン病の原因研究、新しい治療法開発、早期診断技術 などに活用されます。
特に現在進められている研究の一つが、嗅覚を使ったパーキンソン病の早期検査です。ロンドン大学クイーン・メアリー校による「Predict-PD」という研究プロジェクトでは、“匂い”によってパーキンソン病の兆候を早期に発見する低コスト検査キットの開発が進められています。
症状が現れる前段階で病気の兆候を捉えることができれば、将来的な治療やケアの可能性も大きく変わると期待されています。今年のチェルシーフラワーショーでは、こうした“医学・感覚・園芸”を結びつける展示が非常に多く見られました。
庭は、ただ美しいだけではなく、「人を支え、社会課題へ寄り添う空間」へと進化し始めているのです。
“心を整える庭”が増えている理由
今年のチェルシーでは、身体疾患だけでなく、メンタルヘルスをテーマにした庭も多く見られました。

若者の心の健康をテーマにした《YoungMinds Garden》や《The Children’s Society Garden》、呼吸器疾患と回復をテーマにした《Asthma + Lung UK Breathing Space Garden》などが、その代表です。
特に印象的だったのは、どの庭も刺激しすぎないことを大切にしている点でした。
現代の都市生活は、常に情報に満ちています。スマートフォンからは通知が届き、SNSでは他人の人生が流れ続け、仕事も暮らしもスピードを求められる。人間の神経は、知らず知らずのうちに緊張し続けています。
だからこそ今、人は何もしなくてよい場所を求めているのかもしれません。庭は、情報を押しつけませんし、植物は競争しません。庭の持つ静かな感じが、現代人の神経にとって、何よりの癒しになっているのだと思います。
英国で急速に高まる“禅”への関心

2026年のチェルシーで非常に興味深かったのが、日本的な美意識への関心の高まりで、チェルシーでも“Zen”“Wabi-sabi”“Stillness”“Yohaku”といった言葉が頻繁に語られていました。
これは単なる和のブームではありません。英国人の中にも、日本庭園の奥にある精神性に惹かれている方がいるためでしょう。
日本庭園は、すべてを埋め尽くしません。むしろ、何もない空間を大切にします。石と苔、水と光、花の種類は豊富ではなくわずかな植物があり、静かな余白があり、その余白があるからこそ、見る人の心が入っていけるのです。
情報が多すぎる時代において、余白は贅沢です。何もない場所に、心がほどける。何も語らない空間に、自分の内側の声が戻ってくる。英国の人々が今、日本的な静寂に惹かれる理由は、そこにあるのではないでしょうか。
石原和幸さんの《Tokonoma Garden – さぬまやの庭》
その象徴的な存在のひとつが、日本人庭園デザイナー・石原和幸さんによる《Tokonoma Garden – さぬまやの庭》でした。
石原さんは、“緑の魔術師”とも称される世界的ガーデンデザイナーで、チェルシーフラワーショーでは2004年の初出展以来、数々のゴールドメダルを受賞し続けている存在です。英国でも高い評価を受け、日本庭園の美意識を世界へ発信し続けています。
今回の作品《Tokonoma Garden – さぬまやの庭》は、かつて茨城県龍ケ崎市に実在した呉服店「さぬまや」をモチーフに制作された庭園作品です。

床の間は、日本家屋の中で掛け軸や花を飾り、季節や客人を迎えるための特別な空間。単なる装飾ではなく、自然や季節への敬意、そして人をもてなす心を映し出す、日本独自の精神文化でもあります。
石原さんは、その床の間を“庭”として再解釈しました。
庭を眺めながら家族が語らい、人々が集い、静かに季節を感じる。そんな日本の失われつつある住文化を、チェルシーという世界的舞台で現代的に表現したのです。
苔や自然石、水の流れ、繊細な植栽によって構成された空間には、華やかさを競うだけではない、日本庭園特有の余白の美や静寂が漂っていました。それが、英国で今あらためて評価されていることは、日本人としてとても興味深いことです。
英国王室が関わった“未来の庭”
今年のチェルシーで、もう一つ大きな注目を集めたのが、《The RHS and The King’s Foundation Curious Garden》です。

これは、RHSとThe King’s Foundationによる共同プロジェクトで、チャールズ国王の思想が色濃く反映された庭です。
テーマは「Curiosity」、好奇心。
植物は美しいだけでなく、私たちの暮らしを支えています。食べ物になり、染料になり、薬になり、建材になり、文化や産業を生み出してきました。この庭は、そんな植物と人間の関係を、もう一度見つめ直すための空間です。
庭の中心には、好奇心の博物館を思わせる木造建築が置かれ、周囲には染料植物、食用植物、切り花、水生植物などが配置されています。ただ鑑賞するだけでなく、「この植物は何に使われるのか」「人の暮らしとどう関わってきたのか」を考えながら歩く庭です。
デザインを手がけたのは、英国で人気の園芸家でありTVプレゼンターでもあるFrances Tophill。彼女にとって初めてのチェルシー出展ガーデンでもあります。
この庭には、チャールズ国王だけでなく、アラン・ティッチマーシュ、そしてデヴィッド・ベッカムも関わっていることが話題になりました。庭の中にある7つのレイズドベッドは、ベッカムの背番号「7」へのオマージュとも紹介されています。
王室、園芸界、ポップカルチャーが一つの庭で交悪という構成自体が、チェルシーらしいと感じました。
チャールズ国王が何十年も語り続けてきたこと
チャールズ国王は、現在のようにサステナビリティやオーガニックが世界的な潮流になるずっと前から、自然との共生や有機的な暮らしを提唱してきました。1980年代には、そうした考えはまだ一般的ではなく、時に理想主義的すぎると受け取られることもあったようです。
しかし近年、世界はようやくその思想へ追いつき始めています。
気候変動、生物多様性の喪失、食の安全、土壌の劣化。これらの課題を前に、チャールズ国王が長年語ってきた「自然への責任」は、もはや一部の思想ではなく、未来の暮らしを考えるうえで欠かせない視点になっています。
だからこそ、《The RHS and The King’s Foundation Curious Garden》は、単なる王室ゆかりの庭ではありません。植物を通して、教育、伝統技術、地域コミュニティ、サステナビリティを結びつける、“未来の庭”なのです。
アラン・ティッチマーシュ CBE が語る、自然への責任
この流れを語るうえで欠かせない人物が、アラン・ティッチマーシュ CBEです。
英国ではGarden Royalty、園芸界の王族とも呼ばれる存在で、園芸家、作家、テレビ司会者として長年愛されてきました。園芸キャリアは60年に及び、英国の家庭にガーデニング文化を広めた代表的な人物の一人です。
今年、RHSの番組の中で、アランはチャールズ国王との関係について語っています。
彼によれば、チャールズ国王は非常に先見性のある人物でした。オーガニック・ガーデニングがまだ一般的でなかった時代から、自然に負荷をかけない庭づくりの大切さを語っていたからです。
アラン自身も、約40年にわたりオーガニック・ガーデニングを続けているそう。彼が化学肥料を使うことをやめたきっかけは、かって、芝生を美しく整えようとして苔除去剤を使った時のこと。薬剤で苔が黒く変色した直後、一羽のブラックバード、クロウタドリが降りてきて、巣のヒナへ与えるためのミミズを探していたそうです。
その瞬間、アランは「これはもう、やってはいけない」と感じたと言います。
この話はとても小さな出来事のようでいて、2026年のチェルシーフラワーショー全体を象徴しているように思えます。
庭は、人間だけのものではない。芝生を完璧に見せるための行為が、そこに暮らす鳥や虫や土壌生物にどんな影響を与えるのか。そこまで想像することが、これからの庭づくりには求められているのです。
アランはチャールズ国王との共通点について、オーガニック、サステナビリティ、責任感、そして自然への愛だと語っています。
この「自然への愛」という言葉は、今年のチェルシー全体を貫くキーワードのようにも感じられました。
AIの時代だからこそ、手仕事が輝く
一方で、今年のRHS Chelsea Flower Show 2026では、AIも大きな話題になっていました。
昨年、デザイナーの Tom Massey が樹木の健康管理や環境データ解析にAIを活用した展示を行った流れを受け、今年はさらに踏み込み、複数の庭園デザインそのものにAIが取り入れられるようになっています。
特に注目を集めていたのが、ガーデンデザイナーの Matt Keightley が発表したAIガーデンデザインアプリ「Spacelift」。チェルシーでは、このアプリを用いて構想された3つの庭が披露されました。
たとえば、
「Calm in the Cotswolds」では、コッツウォルズの田園風景を思わせる穏やかなアウトドアリビング空間を提案。家具配置や植栽バランスまでAIが設計補助を行っています。
森林をテーマにしたウッドランドガーデンでは、植物を自然に重ねながら“人が手を入れすぎない美しさ”を表現。
都市型のミニマルなバルコニーガーデンでは、小空間でも季節感と立体感を生み出す構成が試みられていました。
けれど興味深かったのは、AIがこれほど注目される一方で、今年のチェルシーでは「手仕事」や「クラフトマンシップ」への敬意も、これまで以上に強く感じられたことです。
AIはガーデンのレイアウトやアイデアを瞬時に生み出せますが、実際の庭はすぐに結果が出る世界ではなく、四季折々に手を入れ、変化を見守る場。チェルシーフラワーショーは今年、AIという未来を見せながら、同時に人間の手でしか生み出せない豊かさも改めて教えてくれているようでした。
チェルシーフラワーショー2026が教えてくれること
ジョー&ローラ・ケアリーによる
《Addleshaw Goddard: Flourish in the City Garden》が、今年の「Small Show Garden of the Year(最優秀スモールショーガーデン賞)」を受賞しました。
この庭は、ロンドンに点在する“隠れ庭園”や“小さな都会のオアシス”をテーマにした作品で、施工はThe Outdoor Roomが担当。ジョー&ローラ・ケアリーは、昨年に続き連続受賞という快挙となりました。

また、Harry Holding と Alex Michaelis がデザインした
《The Eden Project: Bring Me Sunshine Garden》は、「RHS Environmental Innovation Award(環境イノベーション賞)」を受賞。
Landscape Associates が施工を担当したこの庭は、サステナビリティを中心テーマに据えており、Harry Holding Studio のデザイナー、Chloë Webster は、「素材そのものの魅力を祝福する庭」と説明しています。

Ashleigh Aylett による《Woodland Trust: Forgotten Forests Garden》は、「Best All About Plants Garden(最優秀プランツガーデン賞)」を受賞しました。施工はCJ Landscapes。忘れられた森林や生態系への意識をテーマにした庭として高く評価されています。

《A Little Garden of Shared Knowledge》は、「Best Balcony and Container Garden(最優秀バルコニー&コンテナガーデン賞)」を受賞。
Viking のスポンサーによるこの作品は、Katerina Kantalis がデザインし、Phil Sutton Landscapes が施工を担当しました。小さな空間の中で、人と知識、人と自然がつながる場を表現しています。

さらに、「Best Houseplant Studio(最優秀ハウスプラントスタジオ賞)」は、《An Ode To Endurance》に贈られました。
デザインは Natalia Drezek と Jinhyun Ahn、Conservatory Archives による作品で、多肉植物特有の個性的なフォルムに焦点を当ててキュレーションされた展示です。注目すべき植物種とともに、乾燥地帯の風景をコンセプチュアルに再構成し、じっくり観察できるようになっていました。
厳しい自然環境を生き抜くために形成された彼らの独特な姿をひも解きながら、その原産地が植物の育て方やケアにどのような影響を与えているのかにも目を向けていました。

施工技術を評価する「Best Construction Award」では、《Lady Garden Foundation “Silent No More” Garden》が「Best Construction(Show Garden)」を受賞。
デザインは Darren Hawkes、施工は Landscape Associates が担当。庭の中心には、美しい植栽に包まれた没入感のある空間が広がります。
中央の彫刻的な構造物は、バスク出身の芸術家エドゥアルド・チリーダの陶芸作品から着想を得たもの。包み込まれるような安心感のあるフォルムの中で、時間とともに光と影がゆっくり移ろっていきます。ゆるやかに曲がる小径は、豊かに植え込まれたボーダーガーデンの中を通り抜け、その道沿いには、5つの婦人科がんを象徴する5体の彫刻が静かに佇んでいます。
中央の水盤から流れ出た水は、深い水路をゆっくりと巡りながら、人々を次の空間へと導き、ひっそりと腰を下ろせる親密なスペースへ。そしてさらに進むと、率直でオープンな対話を促す共有空間へと開かれていきます。
こうした対照的な空間構成には、「沈黙を破り、人とのつながりを生み出したい」という強い意志が込められています。それは単なる庭ではなく、対話を生み、理解を深め、そして命を救うための場所でもあるのです。
植栽は、柔らかなグレーやピンク、ブルーから始まり、次第に鮮やかで力強い色彩へと変化していきます。その大胆な色の移ろいは、Lady’s Garden Foundation が掲げる、恐れず声を上げようという姿勢と重なり合っています。

「Best Construction(Small Show Garden)」には、《Trussell’s Together Garden》が選ばれました。
デザインは Rob Hardy & Co、施工は Peter Gregory Landscapes が担当しています。
2026年のチェルシーフラワーショーを見ていると、世界はいま、「足す豊かさ」から「削ぎ落とす豊かさ」へ向かい始めているように感じます。そこには、完璧に管理された美しさより、生きものたちと共にある揺らぎもありました。
今年のチェルシーで評価されていた庭の多くは、何かを誇示するためのものではなく、人間が自然の中でどう回復し、どう責任を持ち、どう共に生きていくのかを問いかけるものでした。
そしてその中心に、日本的な静寂や余白の美学が静かに存在感を放っていることは、日本人にとって非常に興味深いことです。
私たちが昔から大切にしてきた、季節を感じる心、間を味わう感覚、自然を支配せず寄り添う姿勢。それらが今、世界最高峰のガーデンショーで、あらためて価値あるものとして見つめ直されています。

チェルシーフラワーショー2026は、単なる花の祭典ではありません。それは、これからの人間が、自然とどう向き合い、どう暮らし、どう心を整えていくのかを問いかける、美しい未来への提案なのだと思います。

RHSチェルシーフラワーショー2026は、2026年5月19日(火)から5月23日(土)まで、ロンドンのロイヤル・ホスピタル・チェルシーで開催中Members' Days 5月19日(火)~ 20日(水)
一般公開日: 5月21日(木)~ 23日(土)
開場時間: 火~木は8:00〜20:00、金は8:00〜22:00、土は8:00〜17:30
