HS Chelsea Flower Show 2025に向けて:フローリストリー&フローラルデザイン部門で注目のテーマ
ロンドン・チェルシーに春の訪れを告げる、英国園芸界の最高峰「チェルシーフラワーショー」。そのなかでも注目を集めるのが、フローリストリー&フローラルデザイン部門です。
この部門は、元々2020年に予定されていた展示企画を起源とし、2021年の対面開催からグレート・パビリオン中央ステージにて定番の企画として正式に導入されました。以降、世界中から集まるトップクラスのフローリストたちが、その技術と芸術性を競い合う場となっています。
2024年の金賞受賞作品を振り返る
2025年のショーを前に、まずは昨年の金賞作品を振り返ることで、今年の傾向を読み解いていきましょう。

アクリルロッドとガラス試験管を用いた構成が特徴的な本作は、ネオンカラー(Pantone 2023–2024)を基調とした花々——ポピー、アイリス、ヘーゼル、シラカバ、パッションフラワーなどが立体的に配置され、透明性と色彩のコントラストが際立つインスタレーションです。

ラナンキュラス、サンギソルバ、クレマチス、クリスマスローズ、コスモスを用いたこの作品は、「新たな始まりは静寂から始まり、やがて色彩が爆発する」とのテーマを持ち、土の色から鮮烈な色調への移ろいを表現しています。

気候変動とそれに伴う山火事をモチーフにした本作は、ヤナギのフレームで炎を象徴しつつ、クニフォフィア、エレムルス、スカビオサ、アマランサスなどが赤・橙・黄のグラデーションで燃え盛る火を想起させます。

混乱の中に見出す静けさ——そんな現代人の心情に寄り添うように、バラ、ジャスミン、アネモネ、クレマチス、アルケミラ、ニゲラといった繊細な花々を使い、自然の持つヒーリング効果を可視化されています。

その名も洒落のきいた『ピーチ・パーフェクト』は、音楽のように流れる花々の配置が印象的。コリブリポピー、ゲウム、アリウム、アクイレギア、ケマンソウ、ルナリアなどが、柳のフレームから優雅にあふれ出します。
創造空間「Creative Spaces」も登場
2024年には、新たな試みとしてCreative Spacesが導入されました。これはRHS(英国王立園芸協会)がフローリストたちに「完全な自由」を与えた展示空間であり、採点対象ではないものの、極めて高い芸術性を誇る展示が多く見られました。今年もさらなる進化が期待されます。
その他の受賞者たち
銀メダル・銀メダルギルト受賞者たちも注目に値します。
Floristry Award silver-gilt winners


ベルファスト在住のフローリスト、アリソン・フッド(Allison Hood)さんの作品『Nature’s Spectrum(自然のスペクトラム)』が、英国王立園芸協会(RHS)銀メダルギルト賞に輝いたとき、その快挙に本人も「まるで夢が叶ったよう」、「このような名誉ある賞をいただけるなんて、本当に光栄です。才能あるフローリストが集まる素晴らしいコンペティションですから、選ばれたこと自体が幸運でした」と受賞の感激を語られていました。
幼い頃から花に魅せられ、人生の大半をフローリストとして歩んできたアリソンさん。「小さな頃から、いつかチェルシーフラワーショーでメダルを取るのが夢でした。30年以上にわたる努力がようやく実を結んだ気がします」と、長年の情熱が実を結んだ喜びをにじませました。
受賞作『Nature’s Spectrum』は、5月の花々にインスピレーションを受けた三層構造のカラーカラム(色の塔)。すべての花材は、持続可能な方法で育てられた季節の花々を使用しています。
アリソンさんにとって、この作品は単なる美しさの表現にとどまらず、「自然のバランスと複雑な関係性、そしてそれぞれが交差し合う様子」を表現したものだそう。花を通して自分を表現できるのが、この仕事の何よりの魅力で、作品にはいつも、私らしさが反映されていないといけないと考えています」とおっしゃられていたことが印象に残っています。ご自身の美学を貫いたことも受賞の背景にあるようです。
チェルシーフラワーショー2025が目前に迫るなか、彼女のような情熱と技術を備えたフローリストたちの作品に、ますます注目が集まります。
Floristry Award silver winners

• Rebekah Critchlow at Elder & Wild『Glazes』
• Bonnie Chu『Opera Splendour: A Floral Ode』
2025年の注目点は?
昨年の作品から読み取れるキーワードは、「自然との対話」「社会的メッセージ」「素材の革新」。アクリルやヤナギなどの構造素材と、生花のコントラストを生かしたデザインが主流となりつつあります。
2025年は、さらに一歩踏み込んだ感情的・環境的テーマやサステナブル素材の採用が予想されており、芸術と自然の融合がどこまで深化するのか注目が集まります。
チェルシーから世界へ、花が紡ぐ未来のストーリー

英国園芸の粋を極めたこのイベントは、単なる「花の祭典」にとどまらず、文化、芸術、環境問題へのメッセージ発信の場へと進化を遂げています。
チェルシーフラワーショーは、英国園芸の粋を集めたイベントとして知られていますが、近年では単なる「花の祭典」を超え、文化、芸術、そして環境問題へのメッセージを発信する場へと進化しています。2025年のショーも例外ではなく、最新の取り組みが注目を集めています。
環境への配慮と持続可能性の追求
今年のショーでは、すべての大型ガーデンが「グリーンガーデン監査」を受け、炭素排出量と環境への影響を削減する努力が行われています。この監査の結果、ショーおよびサンクチュアリ部門のガーデンでは、炭素排出量が28%削減されました。
英国の温帯雨林への注目
さらに、英国の絶滅危機に瀕する温帯雨林をテーマにしたガーデンも登場します。デザイナーのゾーイ・クレイモア氏が手掛けるこのガーデンは、英国の西海岸に位置する温帯雨林の美しさと重要性を伝えることを目的としています。
犬と共に楽しむガーデンの提案
また、著名なガーデナーであるモンティ・ドン氏が、犬と共に楽しめるガーデンをデザインしています。このガーデンは、犬が自由に遊べる芝生や日陰を提供し、ペットと共生する庭づくりの新しい形を提案しています。
科学と園芸の融合:GreenSTEMの導入
さらに、ショーでは「GreenSTEM」と呼ばれる新しいカテゴリーが導入され、園芸と科学技術の最先端の融合が紹介されます。これにより、持続可能な農業技術や環境に優しい園芸の未来が探求されます。
これらの取り組みを通じて、チェルシーフラワーショーは世界中の来場者に強いインスピレーションを与え、花と緑が織りなす未来のストーリーを紡いでいくことでしょう。
2025年のチェルシーフラワーショーもまた、世界中の来場者に強いインスピレーションを与えることでしょう。

受賞者の全リストは、RHS公式サイトでもご覧いただけます。
RHSチェルシーフラワーショー2025は、5月にロンドン・チェルシーにて開催されます。チケット情報は、以下のリンクからご覧ください。
