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全国水族館の旅【70】沖縄美ら海水族館

全ての水族館に唯一無二の魅力があり、1番も2番もありません。ただ、水族館好きの人々と会話すれば「最強の水族館決定戦」の話題で盛り上がります。
最強の座に海遊館や名古屋港水族館を強く推す人は多いですが、大衆人気(入館者数)で見れば沖縄美ら海水族館が圧倒的に最強です! 生物マニアからも家族連れからも海外の人々からも支持されるグレート水族館、全人類に訪れていただきたいと想いを込めて紹介します。
なお、とてつもなく最強な水族館ですので、今回の記事のボリュームはとても大きいです


神秘爆発! 世界が認める「最強」の水族館!!

日本の水族館で入館者数No.2は大阪の海遊館。世界クラスの素晴らしいウルトラ水族館なので、納得の好順位です。「アクセスがいいから人が来るんだろう」と言う方もいらっしゃいますが、少なくとも有名大型水族館にその理論は通用しないと思います。
沖縄美ら海水族館は、大阪の海遊館ほどアクセス環境に恵まれていないのにも関わらず、日本の水族館で入館者数1位の座に君臨し続けています。これは間違いなく、美ら海水族館が「最強」たる証です!

最強の水族館にて最高の生物学習をするため、筆者は那覇市内でレンタカーを借りて、沖縄本島北西部の本部半島へ! 長距離ドライブを経て、美ら海水族館のすぐ近くまでやってきました(朝イチ観覧するために、この日は自然の中での生物観察、周辺の学術施設の観覧を楽しみました)。

透き通る沖縄の海。マニアの血が騒ぎ、生き物を探したい想いが沸き上がってきます。
ヤドカリ類を発見。いざとなったら殻に隠れられますので、極めて高い防御力と擬態能力を発揮します。
こちらはナマコ類。砂の中の有機物などを食べる「海の掃除屋さん」です。

究極のアクアリウムをスムーズに観覧するため、翌朝に海洋博公園へと向かいました。海洋博公園は、沖縄国際海洋博覧会の跡地に作られた国営公園です。壮美なマリンブルーの大海洋に面する公園に、世界に誇る美ら海水族館が立っています。

水族館を擁する海洋博公園。那覇市からレンタカーを駆って、2時間近い長距離ドライブを経て前乗りし、朝イチでの観覧へ向かいます。
ジンベエザメのオブジェ。早い段階から大勢の人々が来館されますので、撮影スポットで理想通りの写真が撮りたいなら、水族館の開館時間より早く海洋博公園に来ましょう
沖縄県の希少両生類イシカワガエルのフラワーアート。他にもたくさんの水棲生物が花と緑で表現されていますので、ぜひ全てのアートを観覧しましょう。
もちろんジンベエザメのフラワーアートもあります。濃密な自然学習に加えて、極上のレジャーを味わえるのが海洋博公園の魅力ですね。

美ら海水族館の周辺には、学術展示やレストランが設けられており、沖縄の自然を五感で感じられます。筆者の関心を強く惹いたのは、「沖縄に日本初の国立自然史博物館を設立するプロジェクト」の展示です。
圧倒的な生物多様性を誇る沖縄に巨大自然博物館が立てば、東アジア・東南アジアの重要な学術拠点となることでしょう。沖縄の大自然を守り続け、生命の神秘を解き明かすために、自然科学の世界には新たなチャレンジが必要なのです。

水族館の入口の近くにも、様々な学術展示があります。こちらは比較的空いていますので、水族館の観覧後に来てもゆっくりできます。
コハブクジラの若齢個体のレプリカ。この標本の個体は、1986年に名護湾にて発見されました。
日本初の国立自然史博物館を設立する計画。博物館好きとして、このプロジェクトを全力でブーストしたいと思います。
日本の恐竜フクイラプトルの骨格図。国立自然史博物館が立ったとき、多くの生物マニアが沖縄を訪れるでしょう。

それでは、最強の水族館の中へ飛び込みたいと思います。圧倒的な超人気を誇る美ら海水族館は、平日・休日問わず大勢の来館者で賑わいます。「人混みを避けてゆっくり生物観察したい」という方は、開館時間の8:30に朝イチ入館しましょう! たとえ平日であっても、10:00以降になると展示エリアもショップも大盛況となります。生き物をじっくり観察したい、家族で水の世界に没入したいと思われている人は、ぜひ朝イチ入館でスタートしてください。

国内最強の人気を誇る美ら海水族館。人混みを回避して観覧するなら、開館時間の朝8:30に入館しましょう

最強の水族館から、無限なる地球の海へ旅立とう!

サンゴ礁が咲き誇る沖縄の海洋を大探検

全生き物好きが憧れる美ら海水族館へ、いよいよ入館。「美ら海」の大海原に出る前に、浅海域の生き物たちを観察しましょう。
沖縄の沿岸は全域がクリアブルーの海に囲まれており、全ての人々の心を浄めてくれます。美を超越した海と陸の狭間にはどのような生命が棲んでいるのか、大自然の景観をイメージしながら学んでください。

オープン水槽で浅海域の生き物たちを観察。なお、サンゴ礁に囲まれた浅瀬のことを、沖縄の方言で「イノー」と呼びます。
「イノー」に棲む生き物たち。スズメダイ類などの小型魚類、そしてナマコ類や甲殻類が寄り集まって、1つの生態系を築き上げています。
植物の実を好むオカヤドカリ類。彼らは国指定の天然記念物ですので、浜辺で見つけても絶対に触ってはいけません
大型の甲殻類ヤシガニ。ハサミの力は極めて(人間の手を切断できるほど)強いので、自然界で出会っても決して手を近づけてはいけません

亜熱帯の海を彩るのは、種類も形態も色も多様なサンゴたち。壮麗なサンゴ礁を中心とし、たくさんの海洋生物たちが集まり、豊かな生態系を築き上げます。本館では、サンゴ礁の美しさを圧巻の大水槽にて堪能できます。沖縄の海の懐深さに、改めて感激します!

壁一面に広がる「サンゴの海」水槽。10:00になれば来館者が大勢いらっしゃるので、この美しい水の空間をじっくり眺めたい人は朝イチの8:30に来館しましょう
自然界と同じように、サンゴ礁の付近にはたくさんの海水魚の姿があります。頑強なサンゴ礁は身を隠す場所になるため、小型海洋生物にとって重要な棲家なのです。
密集する有藻性サンゴたち。体内に藻類が共生しており、藻類の光合成によって生まれる栄養分を分けてもらっています。
サンゴや藻を体につけてカモフラージュするシラヒゲウニ。主食は海藻ですので、「サンゴの海」水槽では掃除係の役目を担っています。

人々の心を強く惹きつける沖縄のサンゴ礁。魅力的な姿を誇る彼らは、いったいどのような生き物なのでしょうか。
実は、サンゴは「刺胞動物」でありクラゲやイソギンチャクの仲間です。彼らは独特な生活環を有し、自然界の生命に多くの恵みを与えています。サンゴの不思議な生態、本館の学術展示にてしっかり学びたいと思います。

サンゴの生態・形態の解説資料。石灰質の骨格とポリプ(イソギンチャクのような個体)の群体によって、サンゴ礁が形成されるのです。
イシサンゴ類のポリプの拡大模型。ポリプの内部も立体で細かく表現されています。
サンゴの危機に関する資料。海水温の上昇により、2024年には沖縄で大規模なサンゴ礁の白化現象が発生しました。
サンゴ類の学術研究レポート。美ら海水族館では、サンゴ研究の最前線に触れられます。

続いては、サンゴ礁の外の世界に目を向けてみましょう。サンゴ礁の海域を越えると、水深は一気に深くなり、「磯斜面」と呼ばれる地形になります。
サンゴ礁の内外にて繰り広げられる生存競争。自然界でのドラマをイメージしながら、観覧を進めていきます。

多種多様な魚たちが舞う大型水槽。午後になると魚たちへの給餌タイムがありますので、ホームページなどで開始時間を確認しておきましょう。
サンゴ礁のリーフの外側をイメージした水槽。屋根がないので、生き物たちは太陽光を思いきり浴びています。
本館には数多くのブダイ類が飼育されています。ブダイ類の糞にはサンゴが含まれており、美しく白い砂浜の一部を作っているのはブダイ類の糞なのです
ワモンフグの体に寄り添うのはホンソメワケベラ。彼らは他の魚についた寄生虫や、口の中の食糧の残渣を食べる習性があり、いわば「クリーニングフィッシュ」なのです。
どっしりと構えるメガネモチノウオ。パワフルなホディと独特な頭部が特徴的です。

サンゴ礁とは、サンゴや貝類などの様々な生物の体が積み重なってできた石灰岩の岩礁です。それゆえ、海の浸食作用によって崩壊し、独特な洞窟地形が形成されることもあります。
サンゴ礁の浸食変化によって生まれた海底洞窟は、暗所を好む多様な海洋生物たちの生息地となります。光のサンゴ礁とは一風変わった生態系の秘密を、本館の水族展示でわかりやすく学べます。

サンゴ礁の海底洞窟を表現した水槽。自然界において、海底洞窟は多くの生き物の隠れ家となります。
キビレマツカサ。水中では赤色の光が他の色よりも早く吸収されるので、洞窟などの暗い場所に棲む魚の多くは赤色をしています。
軟質サンゴの仲間、ムチヤギの一種。光が苦手であり、水深が深く暗い場所に生息しています。

私たちの心に安らぎを与え、多くの生命を育むサンゴ礁。しかし、自然界とは厳しい戦場であり、生き物たちは戦いながら生きています。戦いを勝ち抜くために、サンゴ礁に棲む生命たちも強力な武器を数多く獲得しています。
本館の展示で学んでいると、麗しきサンゴ礁でも、たくさんの生命が戦いを繰り広げているという事実を認識できます。生き物たちの危険な能力の学習を通じて、彼らの強さと自然界の厳しさを改めて理解しました。

サンゴ礁の危険生物たち。美しいサンゴ礁は「自然界の戦場」でもあるので、危険な生き物たちが数多く棲んでいます
サンゴが大好物のオニヒトデ。全身を毒のトゲで覆っており、高い攻撃力と防御力を備えています。
ハナブサイソギンチャク。触手に強力な毒針を備えています。
毒針で魚を仕留めるイモガイ類のアンボイナ。彼らの毒は人間の命を奪えるほど強力であり、多数の死亡例が報告されています
ヒョウモンダコの液浸標本。唾液には強力な毒が含まれており、噛まれた人が毒で死亡した事例も報告されています

沖縄の沿岸域の海は、生物多様性に満ちています。アマモなどの海草が繁茂する浅場は、海の生命の揺りかごになっているうえに、ときにはジュゴンもやってきます。また、海洋性の爬虫類であるウミヘビ類も、獲物を求めて浅い海を泳ぎ回っています。本館の生体展示からは、沖縄の海の豊かさと尊さが強烈に伝わってきます。

たくさんの海草が育てられている水槽。リュウキュウスガモなどの海草は種子植物であり、12月頃に開花して繁殖活動を行います。
群れを成すハタンポ。全長5 cmほどの小型魚類ですが、ときには何千もの個体が集まって大規模な群れを形成します
可愛いコブシメの赤ちゃん。サンゴ礁域でよく見られるイカです。
海洋性の爬虫類であるエラブウミヘビ。産卵の際には陸に上がります。
マングローブの水域をイメージした水槽。沖縄の河口域にはヒルギ類の植物が生い茂っており、大きな根の下部は魚たちの格好の隠れ家となります。

サンゴ礁域に棲む生物種は膨大であり、まさに海底の熱帯林! 本館のサンゴ礁エリアで暮らす超多様な展示生物の中から、筆者の好みで可愛い生き物たちを紹介したいと思います。彼らの姿を見れば、きっと自然界で海の天使たちに出会いたいと思うはずです。

トラフコウイカの赤ちゃん。体の色や模様を変化させて、仲間とコミュニケーションをとっていると考えられています。
天狗のような頭部が特徴的なウミテング。魚ですが泳ぐのは苦手で、腹ビレを足のごとく使って、海底を歩くように移動します。
ゴマアイゴの幼魚たち。どんな生き物でも赤ちゃんは可愛いですね!
名が体を表すタピオカウツボ。生体の展示は、美ら海水族館の個体が国内初となります

サンゴ礁をはじめとする沿岸域は、海の生命が集まる重要な聖域。生き物たちの棲める沖縄の海を維持するため、私たち1人1人の環境意識の向上が求められています。美ら海水族館では海の環境保全活動が実施されており、沖縄の海を愛する人々の想いが強く感じられます。

海の生命の揺りかごである海草藻場に関する資料。美ら海水族館では、ウミショウブの域外保全などの環境再生活動が実施されており、沖縄の環境保護に尽力されています。

世界に誇るスケール! 黒潮の生命をダイナミックに観察学習

沖縄の海洋生態系への関心をさらに刺激してくれるかのように、ここで本館が世界に誇る大水槽の登場です。ものすごいスケールで来館者を圧倒する、水量7500 tもの超圧巻の水空間「黒潮の海」水槽。日本国内の水族館の展示水槽では最大を誇っており、迫力と神秘性は桁違いのレベルです!
ジンベエザメやナンヨウマンタをはじめ、多種多様な水棲生物たちの舞は壮観の極み。世界レベルの巨大水槽を拝めるのは、本館ならでの超体験です。ぜひとも、極上のスケールを感じながら、海の生命を存分に観察してみてください!

見る者を圧倒する「黒潮の海」水槽。本館で最大の水槽であるだけでなく、国内水族館の展示水槽の中で最も巨大です
驚異の水量7500 tの巨大水槽。2008年にドバイの水族館を記録を塗り替えられるまでは、世界最大の展示水槽でした
悠然と泳ぐジンベエザメ。ホホジロザメやアオザメと同じ軟骨魚類ですが、本種の主食は動物プランクトンであり、人間を襲うことはありません。
ものすごい数の生命の舞。「黒潮の海」では、沖縄の外洋に棲む約70種7200個体の海水魚たちが飼育展示されています。
めちゃくちゃかっこいいブラックマンタ。エイの仲間には、遊泳性の種類と底生性の種類がいます。

ジンベエザメは世界最大の魚。特大の個体では全長18 mクラス(確実性の高い記録では約12 m)に達すると言われており、クジラ類を除けば現代の動物の中では最大を誇ります
水族館の大スターであり、謎多きミステリアスな大型軟骨魚類ジンベエザメ。本種の研究と保全に取り組まれている美ら海水族館で、世界最大の魚の秘密に迫ってみましょう。

とにかく大きい! 美ら海水族館のジンベエザメの全長は約9 mあり、日本の水族館の個体では最大です
「黒潮の海」水槽の隣には、ジンベエザメの学術展示エリアあります。ジンベエザメとはどのような生き物なのか、明瞭かつ濃密な資料で詳しく学べます。
巨大なジンベエザメの餌は、小さな動物プランクトン。彼らは海水ごと小型生物を吸い込み、エラにあるフィルターで獲物を濾しとって食べます。
ジンベエザメの胎仔の液浸標本。ある野生個体のメスは、300匹以上の赤ちゃんを身ごもっていたことが確認されています。
美ら海水族館では、世界初のジンベエザメの繁殖を目指して、研究とチャレンジが進められています。水族館でジンベエザメの赤ちゃんを観察できたら、生物マニアとして幸せの極みですね!

ここで、朝から観覧を始めた方にアドバイスさせていただきます。実は、8:30~10:45と17:30~閉館15分前までの時間帯において、エレベーターでバックヤードへ移動し、「黒潮の海」水槽を上方から観覧することができます。さらに、9:30からナンヨウマンタの給餌が始まりますので、この時刻には大水槽の上でスタンバイしておきましょう
巨大なマンタたちが雄々しく身を翻しながら、豪快に餌を食べる姿は迫力満点。自然界でも、マンタの大群がダイナミックな摂食行動を行っていると思うと、改めて海洋のスケールに圧倒されますね。

「黒潮の海」水槽の上へと通じるエレベーター。ジンベエザメの学術展示エリアの奥にあります。
エレベーターで大水槽の上方へと移動。ここは、朝と夕方の限られた時間だけ開放されています
ナンヨウマンタとオニイトマキエイの見分け方の解説資料。給餌タイムの前に、マンタの基礎知識を身につけておきましょう。
給餌タイムになると、ナンヨウマンタたちが飼育員さんのもとに集まってきます。彼らは、ジンベエザメと同じく動物プランクトンを主食としています。
宙返りして、真っ白な腹部を見せるナンヨウマンタ。摂食行動の際、彼らはこのようにダイナミックな運動をします。

さて、せっかくバックヤードに来たので、「黒潮の海」水槽だけでなく水族館の裏側をしっかりと見て学びましょう。水族館では生き物を飼育研究するための様々な設備があり、本エリアではその秘密の一部にお目にかかれます。
例えば、病気の水棲生物の治療や、水棲生物の赤ちゃんを育てるために使用される予備水槽。私たちの目に触れないバックヤードにて、生き物たちと飼育員さんたちの命のドラマが展開されているのです。水族館の裏側の世界を見たことで、スタッフの方々への敬意がさらに強まりました。

バックヤードの予備水槽。水棲生物の赤ちゃんの育てたり、病気の水棲生物を治療する際に使用されます。
バックヤードの水槽を泳ぐ海水魚たち。新しく生まれた水棲生物の赤ちゃんや、野外で採集された個体は、必ず最初にバックヤードの水槽で育てられます。
バックヤードに並ぶたくさんの水槽。水族館の展示を支えているのは、飼育員さんたちの知恵と努力なのです。
バックヤードには、環境保全に関する学術資料の展示もあります。海に捨てたゴミが多くの海洋生物の命を奪っているという現実は、我々人類が引き起こした大きな過ちなのです。

「黒潮の海」水槽の巨大さ、舞い踊る生命の美しさは、ぜひとも現地にて拝んでいただきたいです。これほど多様な生命が沖縄の海に生息していると思うと、琉球の圧倒的な生物多様性に感激します。生命の美しさを目の当たりにすることで、沖縄県の海洋環境の尊さを知り、環境保全意識がさらに高まります。

海と生命の偉大さが感じられる「黒潮の海」水槽。このスケールと神秘性は、ぜひ現地にて体験していただきたいと思います。
「黒潮の海」水槽に使用されているアクリルガラス。日本最大の水槽の超水量に耐えるために、約60 cmもの厚さがあるのです。

巨大でおとなしいジンベエザメは、恐ろしい海の捕食者ホホジロザメと同じ軟骨魚類の仲間。そう考えると、多様なサメ類の秘密を詳しく知りたい気持ちが湧いてきます。
「黒潮の海」水槽のスロープを上がって奥へ移動すると、そこは軟骨魚類の知識が詰まった「サメ博士の部屋」。かっこいいサメたちの生体展示、膨大な生物標本、わかりやすく情報満載な解説キャプションの学習によって、ぜひともサメ博士を目指しましょう。

サメについて専門的に学べる「サメ博士の部屋」。生体展示・標本展示・キャプションから、軟骨魚類に関する膨大な知識がえられます。
「サメ博士の部屋」の大型水槽。多種多様なサメたちが飼育展示されています。
メジロザメ類のツマジロ。日本初展示に成功した貴重な種類であり、本館ではオスとメスを同時飼育して繁殖に挑戦されています。
亜熱帯・熱帯の海に分布するヤジブカ。背ビレがとても大きく、他のメジロザメ類と容易に識別できます。

「サメの博士の部屋」には、サメの基礎知識をゼロから詳しく学べます。サメは怖いだけでなく、とっても不思議で愛情深い魚であり、高度に洗練されたハンターです。サメについて知れば知るほど、来館者はサメを好きになっていきます。

わかりやすい資料でサメの基礎知識を学習。一口にサメと言っても、姿形や生態は種類によって様々なのです。
オオメジロザメの鱗。サメの体には鱗がないように見えますが、実は1 mmにも満たない鱗でびっしりと覆われているのです。
アオザメの歯と顎の標本。サメの歯はベルトコンベア式となっており、新しい歯が次から次へと生え替わってきます。
ネコザメの歯と顎。彼らは貝類などの小型無脊椎動物を食べており、小石のような歯で貝類の殻を叩き割ります。
深海のサメであるヒレタカフジクジラの液浸標本。サメの中で唯一、発光能力を持つことが確認されている種類です

軟骨魚類の特筆すべき点として、繁殖戦略の多様さがあげられます。例えば、ホホジロザメは人間と同じように子宮を備えており、母親はお腹の胎児にミルクや栄養分を送り続けて育みます。我が子を身ごもり、大切に守る姿からは「サメは優しくて愛情深い」という印象を受けます。
美ら海水族館は、サメの飼育繁殖のプロ中のプロ。人工子宮を用いて、深海性のサメの繁殖にも成功しておられます。もしかすると近い将来、水族館でたくさんの種類のサメの赤ちゃんと出会えるかもしれません。

様々なサメの卵の液浸標本。サメの中には卵を産む種類と、親と同じ姿の赤ちゃんを産む種類がいます。
お腹の膨らんだホホジロザメの胎児の液浸標本。彼らは魚ですが、まるで哺乳類のように子宮で育ち、母親からミルクを摂取して成長します
マダラトビエイの胎児の液浸標本。ホホジロザメと同じように、母胎の中で子供を育みます。
深海性のサメであるヒレタカフジクジラの繁殖用に使われる人工子宮。この装置を活用し、美ら海水族館はヒレタカフジクジラの人工出産から摂餌までの育成に世界で初めて成功しました

「サメ博士の部屋」には古代のサメたちの化石標本も展示されており、軟骨魚類の進化についても学習できます。クジラを食べていたという超巨大なネズミザメ類メガロドン、摩訶不思議な歯を有するペルム紀の軟骨魚ヘリコプリオンーー彼らの偉大さを知れば、地球の大先輩である軟骨魚類に対して深い尊敬の念が生まれますね。

古代の巨大なサメ類メガロドンの歯の化石(左)。現代最強と謳われるホホジロザメの歯(右)よりもはるかに巨大です。
新生代中期のサメの歯化石。古代でも現代でも、サメたちは海洋生態系の上位に君臨していたのです。
はるかなペルム紀に生きていた、未知の軟骨魚類ヘリコプリオンの歯化石レプリカ。この部位は、下顎の歯であったと考えられています。
ヘリコプリオンの頭部復元図。彼らはこの螺旋状の歯をどのように使って、どのように獲物を食べていたのでしょうか。

「黒潮の海」の展示観覧を通じて、沖縄の大海原には圧巻の生命の楽園があるとわかりました。それでは、はるかな深淵ーー沖縄の深海は、どのような世界なのでしょうか。
海洋の大部分を占める地球最大のフロンティア・深海。美ら海水族館では、大規模な沖縄の深海生態系の探究が進められています。サンゴ礁から遠く離れたディープ・オーシャンへ行ってみましょう!

ダイオウイカの液浸標本。保存状態はとても良好であり、美しい形態をくまなく見ておきましょう。
おいしい魚として沖縄県民に愛されるオオグチイシチビキ。本館では7年ぶりの展示であり、生体を拝める機会はめったにありません
世界初の生体展示となる深海魚ズナガアカボウ。ベラの仲間であり、日本では琉球列島でのみ確認されています。
同じく世界初展示となる深海魚オニキホウボウ。彼らの生態の多くは謎に包まれており、とてもミステリアスな魚です。
ウニやヒトデと同じ棘皮動物オオウミユリ。実は「腕」を備えており、海底を歩いて移動することができます

先述の通り、美ら海水族館では深海の生物調査が実施されています。その成果は驚異的であり、新種や国内初確認の種類も多数発見されています。
不思議な深海生物や神秘に満ちた深海の環境を、本館の学術展示で仔細に学べます。沖縄の水域の生物研究において、美ら海水族館は最前線を走っているのだと強く感じられます。

美ら海水族館では、ROV(深海の無人潜水艇)による海底調査が実施されています。その成果は素晴らしく、新種の海洋生物の発見も成し遂げられられています
深海生物の紹介資料には、ROV海底調査の画像が使用されています。生態をわかりやすく学べる素晴らしい工夫だと思います。
深海の軟骨魚類ミツクリザメの液浸標本。独特な頭部を備えており、英語圏では「ゴブリンシャーク」と呼ばれています。
深海の甲殻類の殻標本。カニの仲間には、甲羅の両端に「ホモラ線」の走っている種類がいます。
ゴエモンコシオリエビの標本と解説資料。彼らは深海の熱水噴出域(深海底で高温の温泉が噴き出しているところ)に生息しており、熱水中の化学物質を利用して生きています。

沖縄の深海生物との出会いは、まだまだ続きます。本館のROV調査によって発見された新種、沖縄県の学術機関が採集した珍しい生き物がどんどん現れます。謎と神秘に満ちた深海には、人類の知らない生命がたくさん息づいているのだと実感しますね。

水深が200 m付近に生息するコトクラゲ。彼らの触手には刺胞はなく、粘着細胞にプランクトンを付着させて食べています。
深海に棲むハウチワツノサンゴ科の一種。真ん中にいるのは甲殻類ムギワラエビであり、両種は共生関係にあります。
チュラウミゴカクヒトデ。美ら海水族館の調査研究で発見された種類ですので、名前に「美ら海」が入っています
ホクロキンチャクフグ。世界初展示となる深海性のフグ類です
世界初の生体展示となるケブカミズヒキガニ。久米島海洋深層水研究所の取水ポンプにより、深層水と共に水深612 mから引き上げられました。

深海生物の飼育には、とても高い技術と創意工夫が求められます。水圧や照明や水温などの環境条件を調整しなくてはならないうえに、大半の種類は生態が謎だらけなので、深海生物の展示は飼育員さんの知恵と努力によって支えられているのです。
美ら海水族館では独自の加圧装置を用いて、かなり深い海域に棲む軟骨魚類の飼育展示に成功しておられます。また、プラネタリウムのような深海性発光生物の暗所展示も素敵なアイディアだと思います。深海生物の魅力を最大限以上に引き出す美ら海水族館の創意工夫、ぜひ現地にて体感してください。

大小様々な深海生物が飼育展示されている大型水槽。本館の優れた飼育技術・設備により、多種類の深海生物の生体展示を成し遂げられています。
プラネタリウムのような暗所での発光性深海魚の展示。青白い光はヒカリキンメダイ(彼らの体に共生している発光バクテリア)による生物発光です。
青色光を吸収して蛍光するバラハナダイ。彼らの蛍光を観察しやすいように、水槽には独特な工夫が施されています。
紫外線に反応して蛍光するミゾレウツボ。本種の蛍光のメカニズムは不明であり、多くの研究者から注目を集めています。

母なる「美ら海」を守るための学び

水族館とは博物館施設の1つ。「最強」の呼び声高き美ら海水族館は、学術展示の密度も究極レベルです。大人も子供も探究心全開で学術体験を楽しめるのが「わくわくアクアラボ」。こちらでは、多様な展示資料によって美ら海の生命を学術的に説いてくれています。
個人的に注目していただきたいのは、美ら海水族館が保有する初代ROV。この高性能な無人潜水艇の素晴らしい活躍があったからこそ、我々は深海生物の生態や深海の特殊な環境を深く知ることができるのです。感謝と尊敬の念を込め、偉大なる深海の冒険者に挨拶させていただきました。

学術情報満載の「わくわくアクアラボ」。解説はとてもわかりやすく、誰もが生き物の秘密をスムーズに学べます。
美ら海水族館で使用されていた初代ROV(無人潜水艇)。この機体の活躍により、多くの深海生物の生態が解明されてきました。
深海での初代ROVの活躍記録。生物を採集する際は、生体が傷つかないようにアームや吸引装置で優しく容器へ運び入れます。

「わくわくアクアラボ」の生物解説資料はビジュアル重視であり、なおかつ解説文が明瞭なので、とても理解しやすいです。本エリアを観覧すれば、生物マニアでさえなかなか知らない情報を一気に獲得できます。学習とは本来楽しいものであると、美ら海水族館の展示が気づかせてくれました。

海洋生物の生態をわかりやすい資料で解説。生物マニアも家族連れの人々も、楽しくスムーズに学べます。
コウイカの仲間は、「甲」と呼ばれる硬い構造物で浮力調整しています。甲の内部空間にガスを出し入れして、体をうまく浮き沈みさせているのです。
ニシキエビとセミエビの脱皮殻。本エリアには、生物標本も多く展示されています。
ROVの環境調査の際、海底からもゴミが発見されています。生命を守るため、ゴミを減らすために我々にできることを考えてみましょう。

次なるエリア「琉球弧の水辺」では、生物マニアの皆さんが楽しみにしていた展示ーー沖縄県の淡水生物との出会いが待っています。島嶼では生物は独自の進化を遂げる傾向があり、他の地域では見られない生き物たちが数多く生息しています。沖縄の清流に棲む生命との対面を前に、筆者もすごくワクワクしてきました!

淡水生物の展示エリア「琉球弧の水辺」。琉球列島では独自に進化した生き物が数多く確認されており、沖縄の淡水域で生物観察をしてみたいというマニアはたくさんいます。
鮮やかで美しいコンテリボウズハゼ。琉球列島には130種類以上のハゼ類が生息しており、沖縄はハゼの楽園と言えます。
警戒心の強いタナゴモドキ。実はハゼの仲間であり、他のハゼと違って底生ではなく、主に中層域で暮らしています。
コンジンテナガエビ。沖縄の河川では、下流域から上流域まで広く見られます。

島嶼地域が多いため、沖縄県の淡水域・陸域は固有種のオンパレードです。彼らのほとんどは、地球上で沖縄本島や周辺の島々だけに棲む希少生物です。本館の生体展示では、世界的に貴重な超珍しい生き物たちと出会えます。沖縄で独自の進化を遂げた生命の姿、しっかりと目に焼きつけてください!

奄美諸島や沖縄諸島の島々に棲むオキナワキノボリトカゲ。超かっこいいですね!
固有種リュウキュウヤマガメ。国の天然記念物であり、沖縄本島北部・久米島・渡嘉敷島にのみ生息しています
貴重な沖縄県の固有両生類オキナワイボイモリ。人間による生息地の破壊が原因で、個体数が減少しています。
同じく、超貴重な両生類リュウキュウアカガエル。沖縄本島と久米島だけに分布しています
絶滅の危機に瀕している陸棲貝類アマノヤマカタマイマイ。地球上で、沖縄本島の南部にのみ生息している超希少なカタツムリです

本エリアの奥には、干潟環境をイメージした水槽があります。干潟では多くの生き物によって有機物が分解されていて、「自然界の浄化槽」として重要な役割を果たしています。
近年、大規模な埋め立てによって干潟が減っています。沖縄県では産官学が一体となって干潟の保全に取り組んでおられ、トカゲハゼなどの生き物たちの個体数が着実に回復しています。環境意識の高い沖縄県の方々の意志は、我々が保全活動を行う際の大切な指標になると思います。

干潟に棲むオサガニ類。泥の中の有機物を濾し取って食べています。
干潟のカニ類ヒメシオマネキ。オスはハサミの大きさが左右非対称となっています。
ハゼ類への給餌タイム。トカゲハゼがおいしそうにアカムシを食べています。
トカゲハゼの解説資料。沖縄県では、中城湾が主な生息地となっています。

美しい自然環境が魅力的な沖縄県。ですが、残念なことに、人間の勝手な行動が悪影響を及ぼし、尊い沖縄の自然が危機に見舞われています。観光客の増加に伴って深刻化するゴミ投棄問題、人間が連れてきた外来生物による生態系の撹乱ーー全ての問題の原因は全て人間のエゴです
沖縄の自然が永遠に美しくあるために、沖縄の海が「美ら海」であり続けるために、我々には何ができるのでしょうか。本館の環境学習展示で現状を学び、このテーマについて深く考えてみましょう。

沖縄の環境危機についての解説資料。地球環境全体の保全を考えるために、多くの来館者に学んでいただきたい資料です。
外来種のウシガエルとタイワンハブの液浸標本。沖縄県の固有種にとって大きな脅威となっていますが、彼らを日本に連れてきた人間のエゴこそが最大の原因なのです
人間の捨てたゴミによって、命を奪われたアオウミガメの写真。ゴミの不法投棄をしなければ、この子たちは死なずに済んだのです。
イタチザメの胃から出てきたゴミ。沖縄では、観光客の増加に伴いゴミのポイ捨てが深刻化しており、そのゴミのせいで多くの生き物たちが命を落としています

さらに奥へ進むと、有料エリアを出て「美ら海プラザ」へと抜けます。ここは学術展示エリアとショップと休憩所から成る施設であり、沖縄の海洋環境に関する展示は、専門の自然博物館に匹敵するほどの密度があります。沖縄の生態系を知り、「美ら海」の実像を知るための学習が始まります。

学術展示施設とショップが合体した美ら海プラザ。このエリアは無料で観覧学習できます。
新生代中期~後期にかけて生きていた軟骨魚類メガロドンの顎の実物大模型。全長20 mクラスに達する巨大なサメであり、クジラを捕食していたと考えられています。
美ら海水族館による、沖縄地域でのクジラ類の研究。美ら海プラザでは、海洋生物の研究最前線に触れられます。
希少なクジラ類タイヘイヨウアカボウモドキの全身骨格。2011年に沖縄県うるま市に漂着した個体です。

美ら海プラザの展示で、多くの来館者の注目を集めるのは、かっこよくてミステリアスな大型のサメたちです。知名度も人気も圧倒的な捕食者ホホジロザメ、全長5 m以上もの大型軟骨魚類メガマウスザメ、ジンベエザメに次いで巨大な魚類ウバザメの頭部と交尾器ーーすさまじい迫力とインパクト満載の展示が目白押しです。軟骨魚類の形態と生態の秘密、しっかり学びたいと思います。

海の上位捕食者として有名なホホジロザメ。この個体は、沖縄県の本部町の近海で漁獲されました。
巨大なメガマウスザメの液浸標本。非常に珍しい大型軟骨魚類であり、この個体は全長5 m以上あります。
メガマウスザメの標本の左半身は解剖されており、内臓や組織を観察できます。なお、本種はジンベエザメと同じようにプランクトンを吸い込んで食べる濾過食者です。
ウバザメの頭部の液浸標本。成体は全長12 mクラスに達することもあり、ジンベエザメの次に大きな魚です
ウバザメのオスの大きな交尾器。性成熟すると、交尾器は硬さと長さを増します。

これまでの水族展示を見てきてわかるように、美ら海水族館の飼育繁殖技術は超ハイレベルです。本館の卓越した技術は深海魚の飼育でも威力を発揮しており、なんと世界初のリュウグウノツカイの人工受精と孵化に成功しておられます
捕獲個体のオスとメスから得た精子と卵で人工受精を行い、見事にリュウグウノツカイの赤ちゃんを誕生させたのです。生態解明のためには、野外での観察だけでなく飼育研究も重要であり、これからも美ら海水族館は海洋生物の研究最前線を走り続けていくことでしょう。

上からリュウグウノツカイ、アカナマダ、サケガシラの液浸標本。3種類とも謎多き深海魚です。
美ら海水族館は、世界初のリュウグウノツカイの人工受精と孵化を成し遂げられています。この試みによって、リュウグウノツカイの生態研究が大きく躍進しました。
リュウグウノツカイの受精卵と仔魚の標本・写真展示。本館の卓越した飼育繁殖技術を改めて感じられますね。

水族展示ではサンゴの姿を観察しながら生態系について学びましたので、美ら海プラザではサンゴ礁の形成メカニズムを学習しましょう。サンゴ礁は決して硬いサンゴの体だけでできているのではなく、貝類・ウニ類・コケムシ類・フジツボ類・有孔虫などの造礁生物(体に石灰質の部位を有する生き物)の遺骸が集まって形成されます。サンゴ礁とは、たくさんの生命が寄り添って生まれた奇跡の環境なのです!

サンゴ礁についての学術展示。沖縄県の海水温は約25~28℃前後であり、サンゴの生育に好適な環境なのです。
サンゴ礁を構成する生き物たち。サンゴだけでなく、体の一部に石灰質を有する生物の遺骸が集積し、サンゴ礁が形成されていくのです。
多様な形態を備えるサンゴたち。サンゴは成長しながら海中の二酸化炭素を取り込み、石灰質の体を作り上げていきます。
サンゴ礁に棲むイバラタツの液浸標本。多くの生き物たちは、様々な能力を発揮して、サンゴ礁での生存競争を生き抜いています。

沖縄の生物多様性の高さは世界有数であり、多くの生物研究者にとって憧れのフィールドです。美ら海プラザの生物標本を眺めていると、個性豊かな水棲生物たちの姿に見入ってしまいます。生物標本の観察によって、沖縄の自然の豊かさを感じつつ、生物多様性の保全が重要であることを再認識しました。

改めて、美ら海プラザの生物標本の数に圧倒されます。沖縄本島では絶滅したリュウキュウアユや、不思議な深海生物まで幅広い水域の生命を拝めます。
サケガシラの幼魚(左)とフリソデウオの幼魚(右)。暖流である黒潮に乗って、東南アジアを中心とする赤道周辺海域から、多様な生き物の幼体が沖縄にやってきます。
希少淡水魚リュウキュウアユ。沖縄本島の個体群は絶滅しており、現在の自然分布域は奄美大島のみです。
ミナミゴンズイ。ゴンズイとよく似ていますが、2008年に別種として再分類されました。
オオノコギリエンコウガニ。とても珍しい深海性のカニです。

サメたちと同じほど来館者の目を強く惹きつけるのは、豪快なクジラたちの展示です。美ら海水族館は沖縄県の海に現れるクジラ類を研究されていて、その成果を国際学会で発表されています。クジラ研究で世界に轟く本館の専門展示、ぜひたっぷり学ばせていただきたいと思います。

全長10 mのマッコウクジラの骨格標本。1994年に沖縄県うるま市に漂着した個体です。
ハクジラ類オキゴンドウの骨格。群れで行動し、他の海洋生物を捕食します。
コマッコウの頭骨。小型のハクジラ類であり、野生個体の目撃例の少ない珍しい種類です。
イルカ類の音の反響定位(エコーロケーション)資料。彼らは、自分の発した音の反響によって、獲物の位置や海中の地形の様子を知ることができます。

美ら海水族館には、イルカ類の治療とリハビリテーションにおける熱いドラマがあります。バンドウイルカのフジは病気によって尾ビレの75%を失いましたが、遊泳能力の回復に向けて、美ら海水族館は株式会社ブリヂストンと共に人工尾ビレの開発に取り組みました。
数々の試行錯誤と失敗を経て、ついに人工尾ビレは完成。フジは人工尾ビレをつけて大ジャンプができるようになり、お客さんの前でショーパフォーマンスを披露しました。イルカ類の遊泳能力の研究、企業の技術力が実を結んで、今後のイルカ類の飼育につながる素晴らしいデータが得られたのです!

病気によって、尾ビレの大半を失ったバンドウイルカのフジ。遊泳能力の回復のために、大企業と共に人工尾ビレの開発が始まりました。
試行錯誤が重ねられ、数多くのタイプの人工尾ビレが造られました。ものづくりの技術は、動物福祉やリハビリテーションの面でも威力を発揮するのです。
人工尾ビレをつけて、観客の前でジャンプするフジ。今回のプロジェクトは動物のリハビリテーションの重要な事例となり、人工尾ビレは特許登録されました。

美ら海プラザでは、標本にタッチできる体験展示もあります。ナマコ類の口やヒトデ類の腹側など、ふだんなかなか触れない部分を自分の手で確かめられます。触覚を通して、生き物の形態の不思議を感じてみてください。

ナマコ類の標本にタッチできる体験展示。感触を確かめるだけでなく、触りながら体の各部位を確認してみましょう。
ヒトデ類のカワテブクロ。背面と腹側の両面にタッチできるように、2個体の標本が設置されています。
様々な海洋生物の心臓の標本。ジュゴンの心臓はゾウ類と構造が似ており、カイギュウ類とゾウ類が近縁であることを示しています。

我々が絶対に目を背けてはいけないのが、自然環境中へのゴミの投棄問題です。人が自然の中に棄てたゴミは、必ず環境に悪影響を及ぼします。事実、数えきれないほど多くの生き物たちが、ゴミによる環境汚染で命を落としたり、ゴミを誤飲して死亡しています。
沖縄の海は、永遠に「美ら海」であり続けて欲しいーーそれが自然を愛する人々の願いです。美ら海水族館のスタッフさんをはじめ、多くの沖縄県民の方々が今も琉球の自然環境を守るために保全に取り組まれているのです。

マダライルカの胃から出てきたゴミ。このゴミを誤食した個体は、命を落としました。
海底にて見つかったゴミ。陸地から遠く離れた深海でも、こういったゴミが発見されています
ゴミは環境を汚染し、生き物たちの命を奪います。沖縄の生命も、人間が棄てたゴミによって苦しめられています。

美ら海プラザの展示は膨大であり、本記事では到底全て紹介しきれません。ぜひとも、実際にこのエリアを訪れて、自然博物館に匹敵する濃厚な大ボリュームの学習に浸ってください。きっと必ず、沖縄の自然と海洋生物が大好きになります!

多種類の海洋生物の模型展示。美ら海プラザは学びが満載であり、ぜひ時間をかけて観覧していただきたいと思います。

海洋博公園で海の生命を間近に感じよう!

観覧順路の関係から、美ら海プラザを先に紹介しましたが、もしイルカやゴンドウのショーの時間が差し迫っていましたら、先に海洋博公園へと出ましょう。
ショーパフォーマンスの会場は、沖縄の海洋に面する「オキちゃん劇場」。ミナミバンドウイルカとオキゴンドウが共に作り上げる魅惑の時間を、心から楽しんでください。観賞後は、彼らの驚異的な能力の高さに感動しているはずです!

美ら海プラザを出て海洋博公園へ。イルカたちのショーパフォーマンスの時間が迫っていたら、観覧順路を変更して先に「オキちゃん劇場」へと向かいましょう
イルカたちより一回り大きなオキゴンドウ。中型のハクジラ類であり、とても器用に芸をこなします。
猛スピードで背泳ぎするミナミバンドウイルカ。軽やかさとパワフルさを備えた名パフォーマーです。
スターたちによる締めの挨拶。ラストではイルカたちよりオキゴンドウが目立っていますね(笑)。

オキちゃん劇場を出て、美ら海水族館とは逆の方向に歩いていくと、海洋博公園のアイドルことミナミバンドウイルカの「オキちゃん」の記念館があります。
オキちゃんは1975年に海洋博公園に来てから50年間、大病に罹ることもなく健康で過ごし、ミナミバンドウイルカの世界最長飼育記録を更新し続けています。ステージでパフォーマンスを披露し続け、沖縄県民から愛されるオキちゃん。本展示の資料にて、彼女の軌跡とトレーナーさんたちのお仕事内容を知ることができます。

オキちゃん劇場から少し歩くと、ミナミバンドウイルカのオキちゃんの記念展示館があります。世界最長の飼育記録を誇るオキちゃんは、沖縄県の人々から愛されています。
沖縄県本部町より発行されたオキちゃんの住民票。海洋博公園に来て50年間、大きな病気を患うこともなく、世界最長の飼育記録を樹立しています
ミナミバンドウイルカの解説資料。バンドウイルカと似ていますが、1998年に発表された研究によって別種のハクジラ類として認められました。
イルカやオキゴンドウのトレーナーのお仕事紹介。資料を読めば読むほど、トレーナーさんへの尊敬の念が湧いてきます。
オキゴンドウの口内消毒。トレーナーさんが健康管理を行い、場合によっては獣医師や動物看護師のチームと共に治療を実施します。

それでは、休憩しつつ水族館本館の方へと戻りましょう。海側を歩いていると、大人気の「ウミガメ館」が見えてきます。
本施設では、タイマイ・アカウミガメ・アオウミガメ・ヒメウミガメ・クロウミガメが飼育展示されており、地上と地下の両フロアからウミガメ類を観察できます。時間制で餌やり体験もできますので、ぜひ参加してウミガメたちと素敵な時間を過ごしましょう。

美ら海プラザのすぐ側には「ウミガメ館」があります。地上と地下のフロアから、ウミガメ類の行動を観察できます。
水底で休むヒメウミガメ。インド洋・大西洋・大平洋にかけて分布しています。
アオウミガメの幼体。この子は、2024年にウミガメ館にて誕生しました。
元気に泳ぐクロウミガメ。美ら海水族館では、本種の世界初の飼育下での繁殖に成功しています
ウミガメ類への餌やり体験。写真左側の個体が、おいしそうに餌を食べてくれています。

地下フロアではウミガメ類との距離を一層近く感じられるので、じっくりと行動観察できます。たくさんのウミガメ類が悠々と泳ぐ様は、厳かな神秘性があふれています。
そして、地下フロアでは、ウミガメ類の保全活動に関する資料が数多く展示されています。人間の軽率なゴミの投棄がウミガメ類の命を奪っている事実、多くの人々に知っていただきたいと思います。

スロープを下って地下フロアへ。ウミガメ類を別角度から観察してみましょう。
地下フロアでは、より間近に行動観察ができます。ヒレにタグがついている個体は、ウミガメ類の回遊経路を調べるための発信器タグの耐久テストに選ばれた子です。
ヒメウミガメを至近距離で撮影。本種は日本近海にも現れますが、日本での産卵はしないと言われています。
美ら海水族館によるウミガメ類のレスキュー活動の記録。本館は多くの個体の命を救い、自然界へと還しています。
ウミガメ類の消化管から出てきたゴミ。ビニールやプラスチックはウミガメたちが誤食しやすいので、絶対に不法投棄してはいけないのです

ウミガメ館のすぐ隣には、貴重なカイギュウ類と出会える「マナティー館」が立っています。本施設で飼育されているのは、癒し系として大人気の水棲哺乳類アメリカマナティー。
のんびりと生きる彼らは、どのような生態を有しているのでしょうか。本館の学術展示と生態観察を通じて、優しく穏やかなマナティーの魅力にハマってください。

ウミガメ館の隣に立つ「マナティー館」。国内では飼育例の少ないアメリカマナティーと出会えます。
アメリカマナティー。ゾウ類に近縁なカイギュウ類であり、植物食性の水棲哺乳類です。
おいしそうにレタスを食べるマナティー。ジュゴンはほぼ海草しか食べませんが、マナティーは海草だけでなく藻類や緑色野菜も食べます。
アメリカマナティーとジュゴンの頭骨の比較展示。外見的差異だけでなく、解剖学的にも両種には違いが見られます。
隣に設置された標本は、ステラーカイギュウの頭骨レプリカ。絶滅種のカイギュウ類であり、アメリカマナティーの約2倍の大きさを誇っていました

アメリカマナティーの飼育繁殖においても美ら海水族館は素晴らしい実績をあげられており、なんと飼育下での繁殖に3回も成功されています。マナティー館の奥のプールでは、元気にいっぱいの男の子「キュウくん」が飼育展示されています。子供のマナティーを観察できる機会はめったにありませんので、動物好きの方は可愛いキュウくんに会うために沖縄にいらしてください!

本館で生まれた「キュウくん」。美ら海水族館では、これまで3度のアメリカマナティーの繁殖に成功しています
可愛い資料でキュウくんを紹介。元気いっぱいの男の子で、母親にも飼育員さんにもよく甘えています。
キュウくんの成長記録は、ラミネート加工のイラストとして壁面に貼られています。いつか、大きくてたくましいアメリカマナティーに成長することでしょう。

最強水族館ゆえにボリュームの多い記事になりましたが、まだまだ紹介しきれていない生き物や学術資料がたくさんあります。この超素晴らしい環境学習を、大勢の方々に現地で体感していただきたいと思います。
大自然と生命を感じられる究極の学び。「美ら海」の世界を知るために、ぜひ壮麗なる沖縄を訪れましょう。沖縄県は、本当に素晴らしい生命の楽園です!

沖縄県の自然を学び、地球を感じられる美ら海水族館。沖縄の海が、生き物好きの皆さんを呼んでいます!

沖縄美ら海水族館 総合レビュー

所在地:沖縄県国頭郡本部町字石川424

強み:世界レベルのスケールを誇る超濃密かつダイナミックな水棲生物展示、沖縄の水域生態系と自然環境の現状を深く学べる専門博物館クラスの膨大な学習資料、海洋生物の形態や能力を間近で観察できる多くの体験学習イベント

アクセス面:美ら海水族館が立つのは、那覇空港から90 km以上も離れた北西の海岸部。旅行者の方は、那覇市にてレンタカーを借りてゆったりドライブして向かいましょう。沖縄自動車道を使っても確実に1時間30分以上かかりますので、必ず途中のサービスエリアで休憩を挟んでください。沖縄県民の方の多くは車をお持ちだと思いますので、そのままマイカーで直行しましょう。嬉しいことに駐車場は無料であり、駐車時間を気にせず、好きなだけ最強の水族館を楽しめます。もちろん沖縄の有名観光施設ですので、公共交通手段も確立されており、那覇からは高速バス「エアポートライナー」でスムーズにアクセスできます。ただ、本館の観覧後、沖縄の自然観察をしたいという強い衝動に駆られますので、生物マニアの方はぜひともレンタカーを選択しましょう。

日本人なら誰もが名を聞いたことのある「最強」の水族館! 迫力と神秘性に満ちた水族展示、自然博物館に匹敵する膨大な学術資料や標本、海洋生物を間近で観察できる体験学習イベントーー最強に密度の濃い学習が経験できる、沖縄の宝と言うべき日本屈指の学術展示施設です。最強レベルの水族展示を観覧すれば、生物マニアも家族連れの方々も沖縄の自然環境の虜になることでしょう。
全てにおいて最強最高。国内初展示となる水棲生物にたくさんお目にかかれるうえに、沖縄の生物研究や環境保全活動の最前線に触れられます。沖縄の自然環境の現状を伝える資料展示が豊富であり、環境教育性の高さも素晴らしいと思います。
改めて述べますが、超人気の最強水族館ですので、朝イチ8:30の入館をオススメします。大勢の来館者で盛り上がる10:00以前なら広い館内をゆったり観覧できますし、朝ならばジンベエザメの舞う「黒潮の海」水槽のバックヤードに上がれます。館内で沖縄の水域生態系を存分に学んだら、海洋博公園で海洋生物たちを至近距離で観察しに行きましょう。
日本が世界に誇る美ら海水族館。この素晴らしさは実際に体感しないとわかりませんので、ぜひ現地で学んでみてください。沖縄の美しい水の生命たちとの出会いは、人生で屈指の学習体験となります!

最高に素晴らしい沖縄の「美ら海」。この自然環境は、永遠に守るべき地球の宝です。

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