全国自然博物館の旅【73】福島県立博物館
古生物が大好きな方は、福島県の大地に憧れたことがおありかもしれません。有名なフタバサウルス(フタバスズキリュウ)の大発見、そして古生代から新生代まではるかな地球氏の記憶を宿す地層ーー古生物マニアを熱くさせる夢とロマンが、福島県に詰まっています。
福島県の古生物を学ぶことは、地球と生命を知るうえで極めて重要だと思います。太古の世界を感じるため、魅力あふれる会津地方へと向かいました。
古生物マニアよ、福島県に集まれ!
県立博物館が立つのは、歴史と伝統が根づく街・会津若松市。鶴ヶ城の建立や戊辰戦争など、様々な日本史のできごとを肌身で感じられる街です。
さらにすごいことに、福島県の大地には、人類の歴史よりもはるかな太古の地球上の記憶が眠っています。県立博物館へ行く前に、福島県の壮大な生命史をたどってみたいと思います。


会津若松にてレンタカーを借り、30~40分ほど走ると、福島県の古生物学習施設「喜多方市カイギュウランドたかさと」に到着します。
喜多方市高郷町は化石の産地として知られており、新生代の海洋生物化石が多数出土しています。悠久の生命史を有する地の学術施設ですので、カイギュウランドには古代のカイギュウ「アイヅタカサトカイギュウ」をはじめ、多様な島県産の生物が展示されています。
なお、カイギュウランドの展示室は全て撮影禁止となっています。本館にて福島県の古生物を学びたい方は、ぜひとも現地を訪れて太古の生命と対面してください。


カイギュウランドたかさとでは、化石の発掘体験が実施されています。もちろん筆者も参加し、太古の生命と出会うために作業開始。当日は天候などの問題もあり、化石産地から持ってきた石を博物館に運び、ハンマーで割りながら化石を探しました。
発掘の結果、約1000万年前(新生代中新世)の生物化石を発見。個々の標本はラベリングして、筆者の宝物にさせていただきました。なお、巨大サメのメガロドンや海洋哺乳類など珍しい生き物の化石を発見した場合は、研究のために博物館に寄贈することになります。



古生物学習と化石発掘という貴重な体験に、筆者は超大満足! 最高に素敵な心地で会津若松に戻り、県立博物館を目指します。
博物館には大きな駐車場が設けられており、車での来館がベスト。車を停めたら、館内レストラン「雪国ものづくり食堂つきない」にておいしいランチや軽食を味わい、元気満タンで展示観覧へ繰り出しましょう。



歴史ある会津の街に立つ博物館ゆえ、本館は人文科学の展示が大部分を占めています。自然科学の展示は、ほぼ古生物学分野のみです。福島県の生命史については本館で学び、現代の福島県の自然環境に関しては、県内の他の自然博物館や水族館で学習しましょう。

太古の福島県の生態系を一挙に濃密学習
福島県に眠る超古代の生命史
本館の「自然」展示室は、有料観覧エリアの奥にあります。先述の通り、古生物学分野の展示がメインとなっており、福島県の古生物と生命進化の秘密を広範かつ濃密に学べます。福島県に息づいていた太古の生命の謎、徹底的に探究したいと思います。


それでは、福島県産の化石標本の学習を通じて、生命の進化史を学んでいきたいと思います。福島県が擁する地層の年代は超壮大であり、なんと南相馬市には古生代デボン紀後期(約3億8270万~約3億5890万年前)が分布しています。
私たちの予想をはるかに超える太古の記憶が、福島県に眠り続けているのです。これまで発見された貴重な化石標本を拝みつつ、生命のはるかな旅路に想いを馳せてください。





地球史を歩み、次は中生代の福島県の世界を探究しましょう。鹿島町から原町市にかけての丘陵地域には、ジュラ紀後期~白亜紀初期にかけての地層が分布しています。その中の栃窪層からは多様な植物の化石が産出しており、当時の植生の豊かさを我々に教えてくれます。
中生代の福島県に広がっていた緑の大地。太古の大自然の姿を、化石たちは雄弁に語ってくれています。




陸の世界に続き、中生代の海洋の環境も詳しく考察していきます。相馬中村層群の中ノ沢層からは、アンモナイトをはじめ、ジュラ紀後期の海洋生物化石が数多く見つかっています。そして最上部の小山田層では、白亜紀初期のアンモナイトも産出しています。
たくさんのアンモナイトが泳ぐ太古の福島県の海。多くの化石標本によって生物相が解明されたことで、私たちには当時の海洋環境が鮮明に見えてくるのです。




そして、福島県を代表する古生物と聞いて多くの方がイメージするのは、日本産の首長竜フタバサウルスです! 本種は銀幕デビューを果たしており、映画『ドラえもん のび太の恐竜』では「ピー助」というフタバサウルスの幼体が登場します。なお、1つだけ理解していただきたいのですが、首長竜は海洋爬虫類であり、恐竜ではありません。
「自然」展示室の中央に佇むフタバサウルス。本展示で彼らの実像を学びつつ、白亜紀の海洋で首長竜が悠然と泳ぐ姿をイメージしてみてください。





フタバサウルスが発見された地層は、いわき市から楢葉町にかけて分布する双葉層群です。この地層は日本有数の白亜紀初期の化石産地であり、陸上・海洋の生物化石が多産しています。双葉層群の化石学習を通して、フタバサウルスと同じ時代を生きていた動植物について深く理解できます。





フタバサウルスや様々な古生物を探究していくうちに、太古の福島県の壮大なスケールに圧倒されます。はるかな海洋で首長竜が群れをなして遊泳し、地上では多様な恐竜たちが力強く闊歩するーー想像を超えたメガファウナが陸にも海にも存在していたのです。
広野町のヒロノリュウのように、これから福島県では恐竜たちの化石も発見されていくことでしょう。古生物ファンを熱くさせるロマンが、福島県全体に満ちています!

古生物学を探究し、地球と人類の未来を考える!
恐竜や首長竜が覇を唱えた中生代は終わり、時代は新生代へと移っていきます。新生代初期には日本はまだユーラシア大陸の一部であり、化石で発見される生物群集の構成は、大陸産の生物化石と共通しています。本館に展示された白水層群産の化石たちが、新生代の前半期の環境を我々に教えてくれます。





約1800万〜約1500万年前(中新世中期)に日本が大陸から分離、そして日本海が生まれました。中新世の福島県には海が広がっており、阿武隈山地や飯豊山地は海上の島となりました。私たちの知る福島県とはまったく違った環境において、どのような生き物たちが暮らしていたのでしょうか。





中新世の海成層は各地で見られます。中でも、伊達市の梁川層からは、世界的に見ても極めて珍しいほぼ完全な状態のパレオパラドキシア(海に棲んでいた大型哺乳類)の骨格化石が産出しています。
化石の名産地たる福島県の名声は、世界にまで轟いています。パレオパラドキシアが生きていた時代の環境を、本館の化石学習で深く理解してください。





永く海の時代が続いてきた福島県ですが、中新世末期には土石台の隆起が始まり、海が狭まっていきます。激変する環境の時代では、どのような生命が生きていたのでしょうか。各地の化石産地の解説を読み、化石標本を観察しながら、当時の世界を想像してみたいと思います。




会津地方の陸成層からは、植物化石が多産しています。また、陸上火山活動が活発に起こり、カルデラの形成によって湖成層が堆積しました。
地形や気候が大きく変わる時代において、植生を研究することは極めて重要です。より古環境への理解を深めるため、太古の会津で栄えていた植物について、ぜひ詳しく学びたいと思います。



約530万~約80万年前(鮮新世後期~更新世後期)の山脈形成の時代、会津地域は完全に陸地となりましたが、浜通り地域(いわき市や南相馬市などの福島県東部の太平洋沿岸地域)はまだ海底にありました。その海底に堆積した富岡層からは、海洋生物化石が豊富に見つかっています。当該地域からはなんとセイウチ類の化石も出土しており、当時の福島県の生物多様性の豊かさを感じさせてくれます。



時代は移り変わり、有名なナウマンゾウの生きていた更新世へ突入します。この時代は超寒冷な氷期と比較的温暖な間氷期が周期的に繰り返されており、氷期になって海水面が低下した時期に、ナウマンゾウなどの動物たちが大陸から日本へと渡ってきました。
本館の展示では、最後の間氷期と最後の氷期の生物化石を拝むことができます。厳しく変化する環境の中においても、生命が力強く生き続けていました。極寒の氷期に負けずにたくさんの生命が咲き誇っていた事実を、美しい化石標本の姿から感じ取ってください。





「自然」展示室の古生物学習は以上となりますが、福島県の歴史の「原始」ゾーンにも一部自然科学展示があります。人文科学の世界に入る前に、更新世末期の福島県の世界を学んでおきましょう。ナウマンゾウが生きていた頃の福島県の古環境について、さらに理解を深められます。



生き物たちの姿を観察していると、自然と人類の関係について深く考えさせられます。
言葉に表せられないほどの衝撃をもらたらした東日本大震災。津波で浸水した沿岸部では、ミズアオイの種子が目覚めて群落を形成しました。ミズアオイが我々に見せた生命の営みは、自然と人類の未来について多くのことを問いかけているように思えます。
生命の探究は、自然を理解し、地球と人類の未来を考えることにつながります。博物館での自然学習の意義の大きさを改めて感じました。


福島県立博物館 総合レビュー
所在地:福島県会津若松市城東町1-25
強み:非常に広範な時代に及ぶ福島県産の多種多様な生物化石展示、キャプション資料や立体造形を用いた古環境の濃密な解説、福島県の生物・環境の変遷を詳しく理解できる明瞭な展示構成
アクセス面:博物館は会津若松駅から少し離れていますので、車の利用をオススメします。もちろん、有名な観光地ですので、バス交通網も充実しており、会津若松駅前から路線バスにのって向かうのも大いにありです。その際は駅前の事務所で1日パスを買っておけば、鶴ヶ城などのスポットも心置きなく回れます。ただ、本格的に古生物を学習したいマニアの方には、やはりレンタカーを推奨します。車さえあれば、県立博物館はもちろん、スムーズに喜多方市のカイギュウランドへ行って古生物学習や化石発掘体験ができます。
古生代から新生代まで、福島県の生命史を一挙に濃密学習できる化石展示が強み! 有名なフタバサウルスから古生物ファン垂涎のマニアックな生き物まで、実に多様な生命の化石標本と出会えます。福島県の古生物学を探究しつつ、地球の歴史を黎明期から総合学習できます。
解説資料も実に濃密であり、太古の福島県の生態系を時代ごとに詳しく理解できます。膨大な実物化石を時代ごとにカテゴライズし、福島県の化石産地の特徴を説きながら、総括的な展示解説を展開されています。有名なフタバサウルスはもちろん、パレオパラドキシアやステゴロフォドンなど古代の大型脊椎動物の展示解説も充実しており、本館での学習によって膨大な量の古生物学の知識が得られます。
なお、もう一度申しておきますが、福島県立博物館の自然科学展示は大部分が古生物学分野です。現代の動植物について学びたい方は、ムシテックワールド・アクアマリンふくしま・アクアマリンいなわしろカワセミ水族館・野生生物共生センターなどの学術施設を訪れてみましょう!

