明治のギャルに学べ! 着物の国のはてな 片野ゆか
普段から着物を着る人、着物は興味があるけれど難しそう…と思っている人、着物って特別なものでしょ?と思っている人。
着物に興味があってもなくても、この本を読んでもらいたい。
あなたが思っている「着物の常識」って、本当に常識ですか?
あなたが思っている「着物のルール」って、本当にルールですか?
この本を読めば、堅苦しい・難しそうと思っている着物の世界が、実はそうではないことが分かる。
しきたりやルールがいつどこで作られたか分かれば、怖いものとは感じなくなるはず。
(勘違いしないでいただきたいのですが、私は着物警察と呼ばれる方々を批判したいのではありません。本当に。
どうか最後までお読みください。)
著者・片野ゆかさんはノンフィクション作家である。
さすがノンフィクション作家。
着付け講師、専門家、大学教授、着物メーカーに直接問い合わせ足を運んで調べた内容のほか、プロ伝授の着物を綺麗に着るコツ、着物の選び方のワンポイントアドバイスもあり!
私はこの本を読んで、着物が5000倍楽しくなりました。
吾輩は猫派であるが、「平成犬バカ編集部」という本がめちゃくちゃ好きである。
今回世界中に紹介して回りたい本「着物の国のはてな」は、何を隠そう「犬バカ」著者の片野ゆかさん。
カジュアルな着物姿で犬の散歩へ、犬同伴で飲み屋へと、着物ライフも犬ライフも楽しんでいらっしゃる。格好良い!
2冊読んで、私は片野ゆかさんがさらに大好きになってしまった。
好きすぎて、ゆかさんってお呼びしたい。
(当記事では恐れ多くも、ゆかさんと呼ばせていただきます)
ゆかさんが好きすぎて、今回のレビューはちょっと長めである。
平成犬バカ編集部の取材の細かさと文章の面白さを知っていたので、この本は絶対良い本に決まっている、と確信して手に取った。
ふつふつ感じていた疑問が解消されたのはもちろんのこと、胸を張って着物ライフを楽しむ自信までいただいた。
着物警察、怖い
着物を着ない人でも、「着物警察」というワードは聞いたことがあるかもしれない。
そしてそのせいで、着物の敷居がスカイツリー並に高いものと思ってしまっている人もいるのではないだろうか。
着物は格式高いもの、正装、お金がかかるもの、なんかすごいもの。
畏れ、に近いものを感じている方も少なくないかもしれない。
しかしその一方で、無料の着付け教室の広告をやたら見るし、気軽に着られるものだとも聞く。
ゆかさん自身、気軽に着物の世界に飛び込んでみたものの正体不明のルールや謎の伝統に頭を抱えた一人だ。
私は母の影響でお正月は家族で着物を着て過ごすし、茶道をしていたこともあってちょっとお出掛けに着物を着ることもある。でも、着物の世界は分からないことばかりだ。
着物の国は「はてな」が多すぎる!
フォーマルな着物の「伝統」「それが格というものだから」「そういうルールだから」で済まされているその「伝統、ルール」って、一体どこから来たの?
そんな「はてな」の答えが、この本にぎゅーっと詰まっている。
(着物業界的には、あまり知られたくないことなのかも?)
着物警察に遭遇した時の撃退法、についてもアドバイスがあるので必見である。
勘違いしないでいただきたいのですが、私は着物警察と呼ばれる方々を批判したいのではありません。本当に。
繰り返しになりますが、どうか最後までお読みください。
白い半衿なんてダサすぎて無理、と校則を破る明治時代のギャル達
結論から言えば、カジュアルダウンして着る着物に、特にルールもしきたりもない。
半衿は好きな色柄を使えば良いし、帯の結び方だってさまざま。
帯揚げの柄を楽しむためにたっぷり出して、誰に迷惑がかかるというのかしら?
竹久夢二の描く美人画や抒情画を見てみてほしい。
当時の女子たちは着物にネックレス、レース、サンダルにブーツ、スパンコールのバッグなど、和洋折衷なファッションを思いっきり楽しんでいた。
帯揚げの出し方、半衿の見せ方、着こなし着崩し、現代の着物警察が見たら卒倒してしまうような着方のオンパレードである。
校則で決められた白い半衿のダサさが耐えられず、通学中は色柄ものを重ねて校門の手前でサッと抜き、なに食わぬ顔をして登校していた明治時代の女学生の日記については、声を出して笑ってしまった。
今も昔も、可愛い・格好良いが正義なのである。
カジュアルダウンして着る時くらい、好きに楽しんだって良いではないか。
フォーマルな場面で着物を着たいなら
フォーマルな場面で着物を着る場合は、もうプロに丸投げお任せで「着物の世界のルール」に従う。分からないので、お願いする。
それが現代の正解なのだと私は思う。
何度か着物のプロにフォーマル用の着物をトータルコーディネートしていただいたことがある。
どんな会なのか、どのような方が集まるのか、会場の規模は、と色々なことを訊かれ、最初は戸惑ったがどの質問も大事なことなのだ。
当日は、完璧に仕立て上げていただいた。
自分では絶対に選ばないであろう着物や帯、小物が、完全に調和して見事な美しさを演出してくれていた。
「これって、本当に私…?」ってやつである。
今でも忘れられない経験だ。
カジュアルダウンして着物を着る時は、普段着なのだから好きなように着たい。
だからこそ正装の場面では、職人の方々、日本の伝統を作り上げてきてきた人々、守り続けている方々に委ねる。
洋装でも和装でも、フォーマルな場はしきたりを守って参加する、そういうものなのだから。
ちなみに本書によると、戦後の「着物のルール」のベースになってるのは、裏千家家元の長女・塩月弥栄子氏が書いた「冠婚葬祭入門」「きものの本」で、この「きものの本」には茶道の決まり事をベースに着物を着る上での注意点が390個も!書かれているそうだ。
そしてこの本、二つ合わせて700万部のベストセラーになっている。
洋服文化が浸透し、着物ってどうやって着たら良いの?と困った人々を導いたのが、この戦後のベストセラーに書かれている「茶道の決まり事」をベースにした着物のルールなのだろう。
現在のフォーマルのルーツは、どうやらここにあるようだ。
なおウィキペディアによると彼女の著書に対して着物業界からクレームがあり、一部改変された内容もあるようなので、フォーマルのルールは時代によって変わる、ということを頭に入れておいても良いかもしれない。
着物って、着る物なんだから好きに着れば良いんじゃない? by戦前のギャル
着物警察、と呼ばれる方々の行動は、ほとんどが善意なのだと思う。
おそらくフォーマルな着付け方法をベースにしているからこそ、崩れたように見える着方は直してあげたい、恥ずかしい思いをしないように注意してあげたい、そんな親切心なのではないだろうか。
私は大変ありがたいことに、茶道の教室や落語の席、道ゆく人に褒めていただいたことしかないのだが、それはたまたま「褒めて伸ばす」思考のお姉様方だったのかもしれない。
振り返ってみるとひどい着付けだったと反省する点も多いので、もしかしたら皮肉だったのかしら?
皮肉だとしても、「あんたのその着付け、ダメねぇ!」と頭ごなしに言われるよりは1億倍マシである。
褒めていただいたことで気をよくして、今現在も着物ライフを楽しむことができている。お姉様方には感謝の気持ちでいっぱいだ。
私も、ゆかさんと同じく、カジュアルダウン着物派である。
金糸が入っているもの、訪問着など特別な時は「おばあちゃん、組み合わせこれで良い?」と確認して、慎重に。もしくは丸ごとプロにおまかせ。
普段は祖母や母から譲ってもらった着物を、小物のアップデートなどで「可愛く・格好良く」気軽に。
「普段着でしょ?着物って”着る物”なんだから、楽しく着れば良いんじゃない?」
明治時代の女学生に相談したら、きっとそう言ってくれる(はず)。
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