(感想)そこにしかない面白い存在
2025年9月11日(木)19時開演、劇団「遊学生」2025年公演『金色ノ湯気』を金沢21世紀美術館シアター21にて鑑賞。劇団「遊学生」は、大学生が土地に滞在し、その土地での出会いから演劇を作る。今年は石川県金沢市湯涌地区を舞台に滞在制作と上演が行われた。
町で唯一の銭湯で番頭をしている青年、栃尾涌斗(松田蓮)の前に、怪しげな黒服の二人(竹本晴登、築珠美)が現れる。彼らはこの町を高級リゾート地に変えようと話を持ち掛けてくる。一度は断った涌斗だったが、幼なじみ・芝原湯衣(本田美結)の勤める飲食店が閉店するなど、町の活気が落ちていく現状を憂え、怪しい二人組の話に乗る。豪華なリゾートホテルが建ち、町には観光客が押し寄せる。涌斗は成功したかのように思えたのだが。
町の変化は本当によいものなのか。皆が見たがる、欲しがるものが提供できれば、それでいいのか。バズる物、映える風景。SNSで誰かが発信していた何かを自分も手にして安心する。そんなインスタントな欲望にこの物語は冷静な視線を向け、さらりと小さな批判を述べてみせる。
土地に滞在し、その土地の人々から話を聞き、その土地にある物を見て、演劇作品を作る。そのような活動をしている遊学生の学生たちは、「そこにしかない」何かの大切さを実感しているのだろう。映えはしないかもしれない。みんながすぐ飛びつきはしないかもしれない。でも、じっと向き合ってみればそれはとても面白かったりする。そんな存在があることを、彼らは知っている。
多分、湯涌地区の方だろう観客からのみ、笑いが起こっていたシーンもあった。それこそが「そこにしかない面白い存在」なのだろう。そこに住んでいる自分達にとっては当たり前である何かを、遊学生たちが見つけ直してくれたのではないか。あれ、これ実は面白いんだ。そんな違う視点を、遊学生たちが教えてくれたのではないか。
もちろん、遊学生側が湯涌地区の人々から教えられたことも多くあるのだろう。人々と時間を共にした上でのやりとりなどが、芝居に活きていたのではないかと思う。湯涌に伝わる河童伝説を交え、土地を知ろうという好奇心と、出会ったものから何かを吸収しようとする向上心が作り上げた芝居だと感じた。
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