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マリアナ海溝より深い、濵田崇裕という沼の話。



沼落ちのきっかけ

元々Snow Manを推していた私は、自覚ある「ライト層」だった。 「ハマちゃんとコージのお上手です」を毎週欠かさずチェックし、WESTubeを時折覗いては「メンバーの顔と名前が一致する」程度。当時の私にとって、濵田崇裕というアイドルは「ほんわかした、関西の面白いお兄ちゃん」という、穏やかな陽だまりのような存在だった。

昨年5月、映画「裏社員」を観に行った時でさえ、私はまだ、膝下まで水に浸かってパシャパシャと遊んでいるつもりだった。 「舞台好きだし、演技が見てみたいな」 そんな軽い気持ちで映画館を後にした私の感想は、「普通に面白かったな」という平熱。この時点では、まさか自分の人生が数日後に一変するなど、微塵も思っていなかった。


逃げ場のない「潜行」の始まり

沼への入り口は、映画が面白かったことへの、ほんの少しの「お布施」のつもりでポチった、1枚のCDだった。 『ウェッサイソウル!/BIG LOVE SONG』初回盤A。 この中に、私を深海へと引きずり込む怪物が潜んでいた。

このCDの3曲目「君の嫌いな君」である。

「愛が嫌いなんて 潤んだ目で 言わないでよ」

冒頭のワンフレーズが鼓膜を震わせた瞬間、私の頭上から光が消えた。 凄まじい水圧。抗えない重力。 切なく、けれど鋭く訴えかける濵田崇裕の歌声と、感情を逆なでするようなギターサウンドが、私を深淵へと突き落とした。

その時、脳裏をよぎったのは、今の今まで忘れていたはずの記憶だった。 Janne Da Arc、DIR EN GREY。 学生時代、狂ったように聴き漁っていたV系ロックの残響。 友人が歌っていた『Cage』、何度もリピートした『ヴァンパイア』や『sister』…。

「なんだこれは……」

アイドルの曲を聴いているはずなのに、私を貫いたのは、あの頃の、ヒリヒリとしたノスタルジーだった。 (のちに、濵田さんがかつて『月光花』を愛唱していたことや、この曲の作曲家さんがDIR好きであることを知り、もはやこれは「宿命」だったのだと震えることになる)

遠い記憶を強制的に呼び起こすほどの、圧倒的な歌唱力。 こんなアイドルが、この世に存在していたのか? もっと聴きたい。もっと浴びたい。この声が、この魂が、もっと欲しい。

そしてマリアナ海溝へ

そこからの潜行速度は、自分でも恐ろしいほどだった。 WEST.の全楽曲を、MVを、貪るように摂取した。 そして、かつてSnow Manに落ちた時と同じように、 メンバーのパーソナルデータをExcelにまとめ始めたのだ。 客観的なデータ整理――それは、もはや私にとっての「沼入り」という名の帰還不能宣言だった。

CDを揃え、流れるようにファンクラブに入会し、気づけば私は京都劇場で、濵田崇裕主演の舞台『市場三郎』を観劇していた。 わずか3ヶ月。
WESSIONFESで人生最高に楽しい日を更新し、かつて野球観戦で通った京セラドームは、いつの間にか『WESTA!』でブチ上がった聖地へと変わった。

私の沼への入り方は、少し特殊かもしれない。 けれど、あの日聴いた「君の嫌いな君」には、時空を超えて私の魂を揺さぶる、爆発的な引力があった。

もしあの日、初回盤Aを買っていなかったら。 もしあの時、彼の歌声に耳を貸さなかったら。 今頃私は、もっとずっと浅い場所で、冷めた空気を吸っていたのだろう。

水深11㎞の海底で、濵田崇裕という光に照らされる今の私は、間違いなく幸せだ。 あの日の自分に、そして今の自分に、心から言いたい。

この道は、「間違っちゃいない」と。




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