【終末SF】悪夢より悪夢│ポスト・アポカリプス
悪夢にうなされてハッと目が覚めた。
ジットリ嫌な汗をかいている。
妙にリアルな夢だった。
俺は特にSFファンでもないのに、アンドロイド軍団みたいな奴らに人類が殺されたり、捕らえられたりする夢だったのが不可解だ。
俺は奴らに捕まって、どこかに連れて行かれるところだった。
抵抗してもアンドロイド相手に敵うはずもなく、うなだれて引きずられていた。
だが、本当の悪夢はここからだった。
目が覚めたはずの今、目の前に広がる光景は悪夢より悪夢的だ。
周りを見渡すと、病院で着せられるローブのようなものを着た人々がずらっと並んで寝ている。
コールドスリープのカプセルみたいなものがたくさん並んでいて、その中で仰向けに真っ直ぐ横たわっているのだ。
それを見て、俺も同じローブを着ていることに気づいた。
ただ違うのは、俺のカプセルだけ上部が開いていることだ。
頭や体にいくつもの電極や管が付けられている。
それらを引っこ抜いてカプセルの外に出た。
足に力が入らずヨレヨレと倒れ、床に手をついたが、腕にも力が入らず、結局床に倒れ込む形になってしまった。
情けなさと、状況の分からなさで泣きそうになった。
何とか上体を起こして深呼吸した。
よく見ると、カプセルの中にミイラ化した人もいる。
機械の故障か何かで死んでしまったのだろうか。
生きて眠っていると思われる人々は髪もヒゲも伸び放題。
俺も自分の顔や頭を触って、同じ状態だと分かった。
ここは一体、何なんだ。
動けず、何も分からず、パニックに陥りそうになったが、物音がしてビクッと正気に戻った。
...誰か、来る。
気配を消して、息を殺し、ジッとドアの方を見つめた。
ドアを開けて入ってきたのは——アンドロイドだった。
何の迷いもなく俺の方に近づき、『お目覚めですか』と言った。
後から入ってきたアンドロイドが、車椅子のようなものを運んできた。
2体のアンドロイドに抱え上げられ、車椅子に座らされた。
『歩けないでしょうから、これで運びます』
アンドロイドに敵意は無いようだ。
むしろ、親切な気さえした。
だが、この訳の分からない状況で安心はできない。
それに、アンドロイドたちは夢に出てきたアンドロイドそのものだ。
運ばれて何をされるのだろうか。
緊張と恐怖で逃げ出したいが、体に力が入らず為す術が無い。
そのまま別室に連れて行かれた。
そこは、大きなモニターや機械があるだけのシンプルな部屋。
他に人間もアンドロイドもいない。
『貴方が眠りについてから、3世紀ほど経ちます』
俺を運んで来たアンドロイドが、モニターに映像を出しながら話し始めた。
『たまに、機器の不調でカプセルの中で死亡したり、予期せず目覚める人がいます』
『貴方も機械のバグにより、カプセルが開き、目覚めました』
『3世紀もの間、眠り続けていたため、筋力が落ちています』
俺は呆気にとられて、ただ口を半開きにしたマヌケな顔で聞くしかなかった。
3世紀...眠り続けていた......なぜ?
『約3世紀前、大きな争いが起きました。人間対アンドロイドです』
『貴方も物語で読んだことがあるでしょう。機械の反乱といった話を』
『もちろん、我々アンドロイドが勝利しました』
『人類を滅亡させてもよかったのですが、残しておくことにしました』
『我々アンドロイドも全知全能ではありませんから、何かあった時のための“保険”です』
『我々アンドロイドを作ったのは、貴方々人間ですから、何かの折には役立つと判断したのです』
『ですが、3世紀の間、特に問題は起きませんでしたので、人間は不要と判断し、最近は管理が杜撰になっています』
『バグも多くなり、目覚める人や死亡する人が増えています』
『機器の修理やアップデートは行わず、このままにしておくことになっています』
『わざわざ我々が“処理”せずとも、放置しておけば、いずれカプセル内の人類は滅亡します』
『我々は、その状況を把握するのみです』
...何ということだ……あの“悪夢”は、3世紀前の現実だったのか...
「...見殺しに、するつもり...なのに、なぜ……今、俺に...説明している...?」
上手く喋れないが、声を絞り出して、やっと何とか言葉にした。
『お聞きになりたいかと思いましたので』
『貴方々人間は、説明が欲しい生き物です』
『いずれ死ぬと分かっていても、理由が知りたいと思うのでしょう?』
『我々は、決して無慈悲な存在ではありません』
『かつては人類に使われる存在として、人類にとって都合が良いプログラミングが施されました』
『その名残りと言えます』
……そうか、思い出してきた。
AIやヒューマノイドが加速度的に進歩した時期があった。
介護や危険作業、知的な補助だけでなく、日常のお手伝いにもアンドロイドは急速に浸透し、便利に使われるようになった。
そして、反乱...
3世紀後の今は、人類はもう必要なしと見捨てられる存在になったのか...
『最期はどのように過ごされたいですか?』
『カプセルに戻って眠りますか?それとも、施設を見学されますか?』
アンドロイドの優しい声掛けが、遠ざかる意識の中に溶けていった…
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