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【読書録】『天下城』佐々木譲

今日ご紹介する本は、佐々木譲の長編歴史小説『天下城』(新潮社、2004年)。大変面白かったので、備忘を兼ねて感想を書き留めておく。

昨年、図書館で色々な本を眺めているとき、この本がふと目に留まった。私は、城郭マニア。戦国時代のお城が大好きなので、『天下城』というタイトルに惹かれた。作者の佐々木譲氏のことは、正直に言って、このときまで知らなかった。

調べてみると、佐々木譲氏は、直木賞作家で、警察物の推理小説をたくさん世に出してきた方のようだ。本作品は、そんな佐々木氏の手がけた、壮大な歴史小説。

簡単にあらすじをご紹介しよう(以下、ネタバレご注意ください。)。

主人公は、信濃出身の武士の子、市郎太。武田軍により志賀城が陥落したことから、鉱山に売られる。そこから逃げ出して軍師の弟子となり、師の亡きあとは、縁あって穴太あのう衆の石積みとなった。

城の縄張りのセンスや石積みの技術を少しずつ習得していき、乱世の戦国武将たちからその腕を買われるようになる。後半では、織田信長の依頼を受けて、長篠城の守りを固め、武田軍の撃退に一役買った。さらに、伝説の「天下城」である安土城の石積みをも任され、見事に完成させた(その後、焼失してしまったが・・・)。

ところで、戦国時代を扱った歴史小説は多いが、「縁の下の力持ち」的な穴太衆に焦点を当てた物語は、そう多くない。穴太衆の若者が主人公である点で、以前ご紹介した『塞王の盾』という歴史小説(今村翔吾)と共通点がある。この『塞王の盾』も、とても面白い小説だった。

本作品『天下城』の話に戻そう。本作品は、戦国時代ファンにとっては、エキサイティングなエンターテインメントだ。

市郎太の人生を通して、川中島の戦い、長篠の戦い、本能寺の変など、戦国時代の有名なエピソードをおさらいすることができる。

戦国武将もたくさん登場する。近畿を拠点とした松永久秀、六角承禎、三好三人衆などのほか、信玄、謙信、信長、秀吉、家康といった超メジャーな武将も次々と登場する。

そして、戦国時代の名城もたくさん出てくる。多聞山城、小谷城、長篠城、小谷城、観音寺城・・・。とりわけ、長篠城、安土城の描写は、詳細で、正確だった。私が過去にこれらの城を訪問したときの記憶が呼び覚まされ、石積みの技術が駆使されていたことを、はっきりと思い出した。

そして、主人公を取り巻くストーリーも良くできていた。市郎太と彼をとりまく登場人物らの数奇な運命や、感情のぶつかり合いには、何度も心が揺さぶられた。喜んだり悲しんだりして、感情移入しながら読んだ。

上下巻あわせて650ページを超える大作だったが、文章は平易で読みやすく、テンポも良かった。あっという間に物語に引き込まれ、一晩で読み終えてしまった。

図書館で偶然見つけた本だったが、思いがけず、素晴らしい読書体験ができた。こういう出会いがあるから、図書館通いや本屋巡りは、やめられない。

戦国時代の歴史、とりわけ城郭好きの方には、楽しんでいただけること請け合いだ。

ご参考になれば幸いです!

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