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【読書録】『サイコパスから見た世界』デイヴィッド・ギレスピー

今日ご紹介する本は、デイヴィッド・ギレスピー(David Gillespie)著の『サイコパスから見た世界』(東洋経済新報社、2025年)。副題は、『「共感能力が欠落した人」がこうして職場を地獄にする』。訳は、栗木さつき。

そのタイトルのとおり、読者が、職場でサイコパスの犠牲になることなく、自分の身を守る方法を指南する本だ。

著者は、企業の顧問弁護士の経験を持ち、ソフトウェア会社の共同創業者として、またテクノロジー投資家として成功をおさめたという。医学の専門家ではないようだが、科学的根拠や豊富な実例を交えながら、サイコパスの特徴や、サイコパスへの対処法についてとても詳しくまとめている。

結論から言って、良書だと思った。この本と出会えて良かった。サイコパスの特徴、その怖さ、そしてその対応策は、目から鱗で、納得感があった。サイコパスでない人が、サイコパスから身を守るための必読書だと感じた。

以下、備忘を兼ねて、本書からの学びをまとめておく。


サイコパスに関する研究の紹介

⦁ サイコパスは、他人にいっさい共感をもたない。
⦁ サイコパスは、少なくとも20人に1人の割合(5%)で存在する。
⦁ 共感力には、「フォン・エコノモ・ニューロン」という神経細胞が関わっている。
⦁ サイコパスの脳では、扁桃体(基本的感情をつかさどり本能的に反応する)と前頭前皮質(複雑な計画や推論を立てる)の接続に問題が生じており、扁桃体が前頭前皮質より優位に働いている。
⦁ サイコパスには、扁桃体と内側前頭前皮質をつなぐフォン・エコノモ・ニューロンを含む組織(側頭極)に障害がみられ、感情を処理したり道徳的な意思決定をおこなったりする際に、反応が鈍い。
⦁ フォン・エコノモ・ニューロンがなければ、報酬と罰に関するドーパミンの信号を適切にコード化することができない。
⦁ オキシトシンとバソプレシンは、共感力を高めるホルモン。
⦁ 解熱鎮痛剤アセトアミノフェンは、オキシトシンとバソプレシンを抑制し、共感力を弱める。

サイコパスの特徴

⦁ よく嘘をつく。
⦁ 大切なのは自分の感情だけ。
⦁ 他人の気持ちを思いやることはない。そもそも他人の感情を感じることができない。
⦁ 他人の感情は、必要に迫られて注意を向けるものにすぎず、仕方なく対応するもの。
⦁ 相手を信用するための神経回路が形成されていないため、誰も信用できない。
⦁ 表面的にはとても魅力的。
⦁ 自分の目標達成のために他人に恐怖心を植え付けて他人を意のままにすることができる。
⦁ 自分が絶対に正しく、間違った決断をくだしたことは一度もないと思っている。
⦁ 誰も信用できないため、マイクロマネジメントする。
⦁ 絶対にミスをしない自信があり、誤りから学ばないので、迷うことなく瞬時に決定し、仕事を片付けるのが異常に早い。
⦁ 意思決定の際には、常に、自分が直接利益を得られる選択肢を選ぶ
⦁ 自分とは利害関係のない件については、判断を他人に任せる。
⦁ 社会の秩序を守るという観点から推論ができない。
⦁ 他人が恐怖や苦痛を示しても、共感を覚えず、いっさい反応しない。
⦁ 怒ればかならず報復する。サイコパスでない人は、怒ってもその報復の程度は自分がされたのと同じ程度にとどめるが、サイコパスはいっさい報復に制限をかけようとしない。
⦁ 4つの教訓:①サイコパスの人生は、いまその場での損得に基づく判断の連続。②いつでも嘘をつく。③手段をえらばず、他人への害悪にも無関心、④印象操作の達人。

サイコパスと関わる場合の5つの対応策

①ロボットになる:言われたことを実行し、集中してずっと冷静でいる。礼儀正しく受け答えをすると同時に、余計な情報を与えない。
②挑発に乗らない:平静を保ち、正確な指示を説明してほしいと頼み、書面で確認する。
③おやつを用意しておく:馬鹿げた指示にも従い、お世辞を言う。
④立ち向ってはならない:勝てる戦いではない。反撃しようものなら、サイコパスはあらゆる手段を講じてあなたを排除しようとする。
⑤外部のサポートが欠かせない:理解者のサポートを得る。指示の文書化と職場の透明性をはかる。

サイコパスの管理者としての対応策

⦁ サイコパスは自分に利益をもたらす人間の前では仮面をつけるので、サイコパスと見抜くのは困難。
⦁ サイコパスのもたらす被害は甚大なので、早期発見が重要。
⦁ 赤信号に気づいたら、チームのメンバーと個別に秘密厳守で話し合う場を設ける。
⦁ 誠実で透明性を重視し、組織の隅々まで信頼と協力を重視する体質にする。
⦁ 誠実、責任感、寛容、思いやりが、企業の業績を向上させるCEOの性格。
⦁ つねに誠実に行動し、正直に規律を守る。

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あっという間に読了した。背筋が凍る思いをしながら、その内容に引き込まれた。

まずは、20人にひとりの割合でサイコパスがいると知り、ショックを受けた。

そして、小説仕立てのケーススタディが、強烈に印象に残った。平和な職場に、たったひとりサイコパスが入社しただけで、職場も、周りの人の人生も、めちゃくちゃに破壊されてゆく・・・。そして、それは、私たちの身近なコミュニティーで、いつ起きてもおかしくないことなのだ。まさに、ホラーだ。

読みながら、自然と、自分の半世紀にわたる人生を振り返っていた。昔の同級生や、上司、同僚、部下から、ひどい仕打ちを受けた場面が、次々と蘇ってきた。あのときのあの人は、サイコパスだったに違いない。そして、あのときの、あの人も・・・。あのとき、このような本と出会っていれば、あれほど悩まず、あれほど傷つかなくて済んだかもしれない。

また、サイコパスが印象操作の達人で、表面的には魅力的だという点が、とても恐ろしいと感じた。

そういえば、昔、職場でこんなこともあった。部下Aさんから、彼女が、別の部下Bさんからいじめられている、と告げられた。しかしBさんは、上司である私にはとても愛想がよく、業績もよくて、非の打ちどころがないように思えた。他部署の上層部の受けも良い。Aさんの証言以外には、ハラスメントのはっきりとした証拠がなく、対処に困っていた。そのうち、Bさんは自ら退職したため、おおごとにはならなかった。今から思うと、このBさんは、サイコパスだったのかもしれない。

これからの人生においても、きっと、何度かサイコパスに遭遇することがあるだろう。でも、もう大丈夫。サイコパスの特徴と、対処法を理解したから。これからは、きっと自分自身や部下たちを、もっとうまく守れるはずだ。

ただ、本書を読んで気になったことが、2つある。

ひとつは、自分の家族がサイコパスである場合には、どうすればよいのだろうか、ということだ。本書は、職場でサイコパスに対処する方法が書かれていて、基本的には、できるだけ関わらないことだと理解した。でも、家族がサイコパスであれば、関わらないわけにはいかない。そのような場合には、どうすればよいのだろう。

もうひとつ。サイコパスでない普通の人が、サイコパス化することはないのだろうか。サイコパスは、「フォン・エコノモ・ニューロン」という神経細胞が少なく、共感力に欠けるという。しかし、今は普通の人であっても、たとえば過度のストレスを受けるなどにより、神経細胞にダメージを受け、共感力が鈍感になることはないのだろうか。あり得るとすると、それを防ぐにはどうしたらよいのだろうか。

この記事を読んでくださった方には、本書を強くお勧めしたい。本書をお読みになって、いつか遭遇するかもしれないサイコパスの攻撃に備えていただければと願っている。もちろん、私自身の家族や友人などにも、この本を読むように勧めるつもりだ。

ご参考になれば幸いです!

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