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630「インフレ時代の年金戦略」:なぜ私は20%減額の繰上げ受給を選んだのか?

卒業アルバムと学校写真のエキスパート 一級写真技能士の田賀谷浩です。今回もお目通しいただきありがとうございます。

未だ60歳10ヶ月ですが、年金を受給する事になりました。

大概の方は「え?減額されてもったいない!」と思われる事でしょう。ご存知の通り、現在の制度では給付開始の基準日が65歳の誕生日とされ、60歳から70歳までの間で繰り上げ繰り下げする事が出来ます。繰り上げは1ヶ月早めるごとに0.4%減額されるため、60歳10ヶ月目から受給となる私の場合は50ヶ月の繰上げとなり20%の減額率となります。じゃあなんで?

答えから先に申せば「インフレの時代になったから」

永く続いたデフレから脱却した日本経済。世間の風潮も物の価格が値上がりする事にだいぶ慣れてきた感があります。価格が上がるという事は相対的にお金の価値が下がるわけですから、購買力(お金の実際の価値)を考慮してシミュレーションしてみましょう。

インフレ下(年2%)での損得シミュレーション

深く考えないと「20%も少なくなる!」と一言で片付けられそうですがそうではありません。

「何歳の段階でいくら貰えているか」
「一定年齢で貰えている総額の差額はいくらか」
をちゃんと計算してみましょう。

65歳から標準の支給金額で年額100万円もらう場合と、60歳10ヶ月からの繰上げ支給で20%減額の年額80万円もらう場合とで対比します。毎年平均2%のインフレで「お金の価値が目減りしていく」と仮定すると、その受給総額(=購買力)の累計は以下のように推移します。

年齢    20%減額受給額          標準額(65歳)受給額     差額  
65歳  
 約 330万円         0円     約330万円
70歳   約 690万円     約 470万円     約220万円
75歳   約 1,020万円     約 890万円     約130万円
80歳   約 1,320万円    約 1,270万円     約50万円
85歳   約 1,590万円     約 1,620万円      -約30万円

金額はそれぞれの年齢で受給されている総額で、差額は前倒し受給した場合のプラスマイナスです。インフレがない(0%)場合、20%減額でのトータル損益分岐点は80歳0ヶ月ですが、毎年2%のインフレを加味した場合、受給総額の損益分岐点は83歳前後となります。0%のシミュレーションよりもさらに3歳永らえなければなりません。自分の家系を遡ってみてもその年齢では全員がそれなりに衰えがあり、85歳前後で身罷っています。自信を持って万全な体調で損益分岐点を超えられるとは・・・、私は言い切れないですね。

このシミュレーションから言えること

年間20万円(月額約1.6万円)の差額をどう捉えるかがポイントになります。「生涯受給額が1円でも多い方が得だ」「私は満額(あるいは増額)された方がいい」という価値観の方もおありでしょう。あくまで個人の自由です。

でもちょっと待ってください。

60代前半の「使える期間」の価値
年額80万円(月々約6.6万円)が60歳10ヶ月から手元に入ることで、65歳までの約4年間で約330万円の確実なキャッシュが生まれます。インフレ局面において、この「今すぐ動かせるお金」が手元にある精神的安心感と、それを日々の生活防衛や活動の原資に充てられるメリットは非常に大きいです。
借入があれば返済の原資に充て利息の返済や元本の減額に用いる事もできるし、資産運用の資金にする事も出来ますから、やりようによっては増額させる事も出来るわけです。もちろん元本割れがないわけではないですが、自分のお金なんですから自分の意思で取り決めした方がたとえ目減りを生じる事があっても気分はスッキリするのではないでしょうか。

さらに加齢による健康状態の変化はどうでしょうか。20年経てばそれなりに衰えが生じて今と同じ状態をキープし続けられる人はほとんどいないでしょう。お金はあるのに思うように使えない身体の状態であまり満足を感じられないよりも、身体の不自由が少ない状態で存分に楽しめる期間を長く持ち、様々な体験の機会を沢山作る方が幸せなんじゃないかと思います。

逆転されてからの影響度
現在価格が10,000円のものは、20年経って80歳になった時にいったいいくらになっているでしょう?同じ価格であり続けているとはちょっと考えにくいのではないでしょうか。仮に15,000円だったとすると50%の価格上昇です。逆の言い方で言えばお金の価値は2/3になっているという事です。20%余分に貰えても割が合わないのではないでしょうか。もし83歳を超えて長生きし、65歳受給時に逆転されたとしても、その差は90歳時点で年に総額で約100万円、年間では数万円程度の差に留まります。その時に今と同じ貨幣価値である事は、多分あり得ないでしょう。

自分の健康状態も、景気の状況も、世間の有り様も、いつどのようになっているかなんて未来のことは誰にも確定的な事は分かりません。楽しみを先延ばしして待ちわびるのも決して悪くはありませんが、価値が目減りする前に使えるお金を最大化して『今を楽しむ』というのが人生の後半には一番のキーワードなんじゃないでしょうか。

「年金は何歳から貰うのが一番得か」なんてよく話題になりますが、デフレが続いていた頃ならともかく、減額率を上回るインフレ(本来はこれが通常)が予想される世の中であれば、とっとと貰い始めて自分の意思が反映される状態にして、貯めたり増やしたり使ったりするのが賢いやり方だと思います。

年金は自分のものなんですから。

参考になったり共感していただけたら「スキ」をいただけると励みになります。最後までお読みいただきありがとうございました。

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