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不耕起栽培の農学的解釈

多雨の日本と乾燥地では、同じ技術の意味が逆転する

不耕起栽培は、しばしば「土を守る環境に優しい農法」として紹介されます。土壌侵食を減らし、土壌有機炭素を蓄積し、微生物やミミズを増やし、農業機械の燃料消費も削減する。さらに、干ばつに強く、気候変動対策にもなる。こう説明されれば、耕起は過去の技術であり、不耕起こそ農業の進むべき方向だと思えるかもしれません。ですが、この理解は半分しか正しくありません。

不耕起が大きな成果を上げてきた北米、南米、オーストラリア、中国北西部などの乾燥・半乾燥地域と、梅雨、台風、集中豪雨、湿潤な夏をもつ日本とでは、土壌における最大の制約が異なるからです。

乾燥地で不足しているものは、主として「水」です。一方、多雨地域の土壌では、時として不足しているのは水ではなく「空気」です。この違いを無視して、不耕起という形式だけを輸入すると、乾燥地では土壌を救う技術だったものが、日本では播種不良、湿害、地温低下、雑草増加、窒素損失、病害の温床になる可能性があります。

不耕起の価値は、耕さないこと自体にはありません。その土地で作物生産を制限している要因を、不耕起によって緩和できるかどうかにあります。なお、この記事では湛水水田を除き、畑作、樹園地、水田転換畑などの非湛水条件を対象とします。水田は酸化還元状態、メタン生成、窒素動態が畑地とは大きく異なり、同じ枠組みで論じるべきではないためです。

「不耕起」と「保全農業」を分けて考える
不耕起栽培は、土壌を耕さず、播種溝だけを開いて作物を栽培する技術です。一方、国際的に議論される保全農業、すなわちConservation Agricultureは、単なる不耕起ではありません。一般には、土壌攪乱の最小化、作物残渣などによる恒常的な地表被覆、輪作や混作による作物多様性という複数の要素を組み合わせた生産体系を意味します。この違いは極めて重要です。

世界446研究、5,230組の比較データを解析したメタ分析では、不耕起単独では畑作物の収量が平均5%低下しています。コムギでは7.7%、トウモロコシでは2.3%の低下です。一方、不耕起に作物残渣の還元と輪作を組み合わせると、収量低下は2.44%まで縮小し、土壌有機炭素の増加幅は最大12.77%になりました。つまり、成果をもたらしているのは「耕さない」という単独操作ではなく、炭素投入、地表被覆、輪作を含むシステム全体なのです。

したがって、「不耕起にしたが収量が落ちた」という結果と、「保全農業によって土壌機能が改善した」という結果は矛盾しません。両者は、比較している技術体系が違うのです。

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