取り越し苦労をしてはいけない
取り越し苦労をしてはいけないと作家の内田樹氏は言う。取り越し苦労しても始まらないと言っているのではない。「そうしてはいけない」とはっきり言っている。
取り越し苦労というのは、まだ起こっていないことをつぶさに想像することで、それは強い刺激をもって脳に烙印を押すことになる。こういうこともあるかもしれないと考えて策を練るのとは違う、もっとリアルな映像を脳に映すことになる。
これはずっと昔に聞いた話だけれど、一度でも船の事故を起こした船長には、決して船の舵を取らせないという。「またぶつかるんじゃないか」と思うと必ずまたぶつかるからだ。
コストをかけた以上、脳は見返りを期待する
福島原発の事故が起こる前に、その現場で働く良心的な労働者は「こんなことではいずれ大変なことが起きる」と思っていたのかもしれない。それを上部層に報告してもうまくあしらわれてしまったのだろう。
けれど集団の想念は、波のような大きなうねりを持って実現する。そこがとても怖いところだ。そこで働いていた人たちが事故を願っていたわけではないが、「そうなるかもしれない」という想念が結局のところ招いた事故なのだという内田氏の説に考えさせられた。
取り越し苦労という、崖からふみはずすような明瞭に想像された未来、その
細部まで想像された未来は強い吸引力をもつ。
「予想通りになった」というよりも、そのように行動していることに、
無意識だから本人には気がついていない。
最悪の場合に備える心の使い方をまちがえると、無意識のうちに最悪の事態を待つようになる。
その恐さを、人はこれまた無意識のうちに感知しているかもしれない。
「取り越し苦労をするな」というのは、楽観的になりなさい、ということではない。内田氏流に言うと「全方位的にリラックスして構えていないと対応できないよ」ということ。
合気道に似ているかもしれない。そしてそれは十分に生き方に応用できる。
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