あなたが「人生の主役」であるための医療【ドクターズ・インサイト】
医療の最前線で活躍するドクターたちの素顔と、その信念に迫る『ドクターズ・インサイト』。今回は『札幌いそべ頭痛・もの忘れクリニック』理事長・磯部千明先生にお話を伺いました。
磯部先生の言葉には「人生の主役はいつも“あなた自身”である」という、一貫したメッセージがありました。
Q. 「頭痛と物忘れ」に特化したクリニックを開設された理由を教えてください
磯部:医師は「職人」であると同時に、開業すれば「経営者」にもなります。私は、スタッフが幸せに働きながら力を発揮し、能力を伸ばし、その対価として良い給与を得ていく ――そんな舞台をつくることが、経営者として大切な役割だと思っています。
そのためには「社会の中で最もニーズが高い領域」を引き受けることが必要です。
脳神経外科の領域には、いわゆる「5大疾患(頭痛、脳卒中、認知症、パーキンソン病、てんかん)」があります。
その中でも特に患者さんの数が多く、かつ医療の恩恵を受けきれていないと感じていたのが「頭痛」と「認知症(もの忘れ)」でした。
私はパーキンソン病を専門としており、学位は認知症で取得しました。脳卒中も数多く診てきました。
自分の人生をかけて「どこで一番喜びを提供できるか」と考えたとき、頭痛ともの忘れこそが、多くの方の人生を変えられるフィールドだと思ったのです。
「症状を改善したい」と患者さん自身が心から思ったときに、安心して手を伸ばせる場所をつくりたい。
その想いが、現在のクリニックにつながっています。

Q. 「年齢のせい」「精神的なもの」と諦めてしまいがちな症状には、どんなリスクがありますか?
磯部:まず、「年齢のせい」「ストレスのせい」と決めつけてしまうと、そこで思考と行動が止まってしまうリスクがあります。
私はよく「事実は一つ、解釈は無数」とお話しします。
同じ症状を前にしても「仕方ない」と思う解釈もあれば、「今より良くなれるはずだ」と解釈することもできます。
過去に病院で「異常なし」と言われた経験があったり、周囲の人がそうだったりすると、「どうせ変わらない」と思いやすくなります。
これを「現状維持バイアス」と呼びます。
しかし、考え方が変わると行動が変わります。
「求めよ、さらば与えられん」という言葉がありますが、「良くなりたい」と決めた瞬間に、人生は確実に変わり始めます。
Q. 頭痛やもの忘れの早期発見・予防で、大切だと考えていることは何ですか?
磯部:情報は世の中に溢れています。しかし、「知っている」と「行動する」は全く別です。
私が何より大切だと思うのは、「自分はどんな人生を生きたいのか」という原点です。
・子どもや孫の成長をどんな状態で見守りたいか
・趣味や仕事をどれだけ楽しみ続けたいか
・どんな最期を迎えたいか
こうした「人生の目的」が明確になると、「症状を放置する」という選択肢は自然と消えていきます。
医学的にも、頭痛や認知症を予防するためのエビデンスは増えていますが、私はまずこう問いかけます。
「あなたは、どんな未来を選びたいですか?」
「そのために、今できる一歩は何ですか?」
早期発見や予防というのは、「怖い病気を探すこと」ではなく、「自分の望む未来から逆算して、今を選ぶこと」だと考えています。

Q. 患者さんと向き合ううえで大切にしていることを教えてください
磯部:診察で大切にしているのは「今の症状が、その人の人生の中でどんな意味を持っているのか」を一緒に整理することです。
頭痛や眠れない、もの忘れ、気力の低下――。
これらは身体や脳からのサインです。
「このままでは良くない」と教えてくれているのです。
私はまず、患者さんに「あなたの人生は、あなたに責任があります」とお話します。これは責めているのではなく、「変える力もあなたの中にある」という希望のメッセージです。
生活習慣、睡眠、食事、人間関係などを一緒に振り返りながら、「患者さん自身が、本当はどうありたかったのか」を言語化していきます。
私自身、大病や人生のどん底を何度も経験しました。
その経験を自己開示することで、患者さんも「まだやり直せるかもしれない」と感じてくださいます。
人は過去を受け入れたときに、初めて“これから”を選べます。
診察室では、数値や結果だけを見るのではなく、「今日からどう良くなっていくか」を一緒に探すようにしています。
Q. 頭痛や物忘れ以外で、ぜひ相談してほしい症状はありますか?
磯部:たくさんありますが、まとめるなら「なんとなく、ずっと調子が悪い」という状態です。
・原因不明の疲れ
・とりあえず薬だけ出されて終わっている痛み
・気力の低下
・手足が冷える
・眠りが浅い
・検査では「異常なし」なのに不調がある
こうした「グレーゾーン」にいる人は、とても多いと思います。
日本の医学教育では、「診断名がつかない状態」を体系的に扱う場が少ないのが現状です。
また、西洋医学は臓器ごと・検査数値ごとに判断するため「検査で見えないもの」は軽視されがちです。
本当に大事なのは「検査で異常があるかどうか」だけではありません。
「日常生活の中でどれだけ困っているか」という視点が大切です。
ムズムズ脚症候群のように鉄不足や脳の過敏性が関わる疾患や、背景の複雑なパーキンソン病など、原因はさまざまです。
「原因不明=原因がない」ではありません。
単にまだ見つかっていないだけです。
当院では、ホルモンや栄養、睡眠、生活背景なども丁寧に見える化します。
「異常なし」はスタート地点です。ここから一緒に整えていきましょう。

Q. 最後に、読者へメッセージをお願いします
磯部:繰り返しますが、「あなたの人生は、あなた自身の手で変えることができます」。
悩むということは、「本当は良くなりたい」という心のサインです。
頭痛、もの忘れ、疲労、気力の低下――。
これらは「人生をどう生きたいのか」を問われている瞬間でもあります。
・誰のために、何のために生きるのか
・どんな最期を迎えたいのか
・これからの人生をどう過ごしたいのか
健康は、そのすべての土台です。
「習慣は第二の天性」、日々の選択が未来の自分をつくります。
どうか、「自分には関係ない」と思わないでください。
行動する人だけが、未来を変えられます。
人はいつからでも、どこからでも良い方向へ変わることができます。
その一歩を踏み出したいとき、私たちがお力になれればうれしく思います。
札幌いそべ頭痛・もの忘れクリニック
理事長 磯部 千明
