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Nameless第44話 ビジュアルブックと透明な空気感

現在の時刻は深夜、よしたか(喜多川吉隆)は関内の自宅で、ポルトガル帰りの疲れを癒しながら次の計画に思いを巡らせていた。夜型や朝型、決めずに働けるのがバイネームの強みだな、ちょっと命削りすぎかもだけど、と思いながら。

出版社社長として文芸業界で知られるよしたかは、ポルトガルの若手詩人の恋愛叙事詩をビジュアルブックとして出版するプロジェクトを進めていた。

そのビジュアルブックに、是非、日本の新人の写真家の作品を使いたい。

ポルトガル人の詩人が世界初の出版を日本で迎えるなら、日本で出会うフォトグラファーもまた同じ感性を持つ人が合うのではないか。そんな思いがよしたかの心を駆り立てていた。

人選に迷っていたよしたかは、翌日、恋人の桜子(西川桜子)に相談した。シングルマザーでnote作家の桜子は、よしたかの情熱をいつもイマジネーションから支える存在だった。

桜子は目を輝かせて提案した。「この人はどうかな?」と、うらやんさんというフォトグラファーの作品を見せてくれた。

管理職経験を持ち、現在はご実家の家業を継ぐ若手フォトグラファーだった。



作品は、ソリッドな質感と透明感溢れる空気感が特徴で、見ているだけでさっぱりと高潔な気持ちにさせるものだった。

また、管理職経験があるというのも、ポルトガルの農園のバックヤードで出会った経理の彼に近いものを感じる。
日本とポルトガル。

こんなに離れてるのに、働く、才能あるアーティストという不思議なリンクが生まれる奇跡に感動する。

よしたかはその写真に魅了され、「モデルをアサインして、恋人たちを撮ってもらいたいな。

特に被写体撮影が抜群に良いね。構図と空気感。」と興奮気味に呟いた。

すぐにアポを取り、翌朝、新幹線に飛び乗り、うらやんさんに会いに行った。

静かな地方都市で待つうらやんさんは、よしたかの情熱に共感し、快諾してくれた。

「ビジュアルブックに写真を提供できるなんて光栄です。ポートフォリオの中ではどれがお好みですか?
近い空気で、恋人たちの自然な愛を切り取ります」と笑顔で答えた。

よしたかは帰りの新幹線で、うらやんさんの写真が詩と調和するビジュアルブックを想像し、ますます完成が楽しみでたまらなかった。

桜子の感性と笑顔がまた彼に新たな才能を引き寄せた瞬間だった。

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