「見栄え良くして」に感じる違和感。
違和感を感じた打ち合わせ
「いい感じにしてもらえますか?」
「もう少しオシャレな感じで」
「なんかパッとしないんで、見栄え良くして」
この手の依頼を受けるたびに、ちょっとだけ ”?” な気持ちになる。
否定するわけじゃないし、悪意がないのもわかっている。
だけど、何かが「ズレているなぁ」という感覚がずっーとあった。
そしてつい先日、その違和感がより明確になる出来事があった。
あるサイト制作を依頼してくれたクライアントとの追加で紙のチラシも作りたいという「チラシの制作会議」に同席したとき、担当したwebデザイナーがこんなことを言っていいた。
「WebだとCVが数値で見えるんですが、チラシだとCVが測れないので難しいですよね〜」
クライアントも「そうなんですよね〜」とうなずいていた。
ちょっと待てなんかずれている???
CVが「測れる・測れない」「見える・見えない」の話じゃなくて、CVをどう定義するか、何をゴールに設計するかの話じゃないのか?
そもそも、CVの事を間違って把握していそうだな。
「紙はCVが測れないから」——この言葉の裏には、CV=Webのクリック(CTAとの混同?)という誤った前提がある様だ。
そして、その前提で仕事をしている人が、デザイナーと呼ばれてクライアントに助言している。
これは責める気にはなれないけど、正直に言えば「それは違う」と声を出して言いたかった。(黙っていたけどw)
なぜズレが起きるのか
「コンバージョン」という言葉が、ここ数年でずいぶん普及した。
Webデザイナーやマーケターがこぞって使うようになって、気づいたら「CV=Webのクリック・フォーム送信」みたいな認識が広がっていった様な気がするのは気のせいか・・・。
でも本来、コンバージョン(CV)というのは「ゴールとして設定した行動への転換」ではないだろうか。
「最終的に何をしてもらいたいか」
それが「電話」でも「来店」でも「購入」でも・・・
それに向けた行動の変化が「CV」であって、Webに限った話じゃないと思うのは私だけだろうか。
チラシだって、ポスターだって、CVは設計できる。「電話をかけてもらう」「QRコードからアクセスしてもらう」「来店してもらう」
——これは全部、CVではないのか?
なのに「紙はCVが測れない」という言葉が当たり前に使われ、クライアントが「そうかぁ」とうなずく光景が生まれる。
*先に言っておくが、これはもしかしたら私のごく小さい周りでの出来事であり、一般的にはこんな光景はないのかもしれないと言うことを・・・💦

言葉が一人歩きして、本質がすり抜けていく。
同じような事で、「デザイン=ビジュアルを整えること」という思い込みもそうなのではないだろうか?
デザイン=仕組みの設計
デザイン(design)という言葉の語源は「計画する、設計する」だ。
見た目を整えることじゃない。(きっぱり!)
何かを実現するために、要素を配置し、流れをつくり、人の行動を誘導する——それがデザインの本質だと私は思っている。
チラシを例にとれば、「見やすくする」と言うのはデザインの仕事の一部でしかない。
「誰に届けるか」「何を伝えるか」「どんな行動を促すか」「どこに置くか」
つまり、ゴールを設定した上での見た目(まさにCV)
——これら全部がセットで「設計」であり、ビジュアルはその最後のアウトプットに過ぎない。
見た目を整えることは必要だ。でもそれは、設計の結果として整うものであって、出発点じゃない。
「いい感じにして」という依頼を受けて、レイアウトを整えてフォントを変えて色を調整して・・・。
それで終わらせると、何が起きるか。
見た目はきれいになるかもしれない。でも成果は出ない。
なぜなら「何のためのデザインか」が設計されていないから。
これが、私がずっと感じている「見栄え良くして」への違和感の正体だった様だ!
*ただし、見た目の美しさも導線をつくる上で大事な要素であることは、念のため添えておく。
なぜ「ビジュアル偏重」になるのか
業界の構造的な問題もある、と思っている。
デザインのアウトプットは目に見える。
ポートフォリオに載る。
「かっこいい」と評価される。
発注する側も「これを作りたい」とビジュアルで選ぶ。
その結果、デザイナーはビジュアルの精度を上げることにフォーカスしがちになる。評価軸がそこにあるから、当然と言えば当然だ。
でも本来の評価軸は「成果が出たかどうか」ではないだろうか?
「見た目がきれいかどうか」より、「ゴールに向けて人が動いたかどうか」。
この評価軸のズレが、業界全体に「デザイン=見た目を整えること優先」という認識を根付かせてしまっていると感じているのだが・・・。

「デザイナー」という呼称への、ちょっとしたモヤモヤ
そうなってくると、もう一つ、ずっと引っかかっている事がある。
「デザイナー」という言葉が、あまりにも簡単に広く使われすぎていることである。
Webデザイナー、グラフィックデザイナー、UIデザイナー、UXデザイナー、プロダクトデザイナー…
全員が「デザイナー」と呼ばれるけど、やってることは全然違う。
最近では造語なのか「Canvaデザイナー」とか「LPデザイナー」なんて言い方も出回っている。
さらに言えば、「Webデザイナー」と名乗る人の中にも、ビジュアルだけ整える人もいれば、設計から一貫して担う人もいる。
名前が同じだから、クライアントは同じものを期待する。
でも受け取るアウトプットは全然違う。
このミスマッチが、「依頼したけど思ってたのと違った」「成果が出なかった」という不満を生んでいるのではないだろうか?
「デザイナー」という呼称は悪くない。でも、責任範囲が曖昧なままで使われすぎているのが問題だと勝手に危惧している。
責任範囲で整理するべきだと思う
私が今思うのは、「デザイナー」を責任範囲で区別したらどうなんだろうか?ということ。
ざっくり言えば、こういう分け方だ。
ビジュアルに特化するデザイナー:渡されたコンテンツや方針をもとに、見た目を美しく・わかりやすく整える。責任範囲はビジュアルの品質。
設計から入るデザイナー:「何を達成するか」から考え、ゴール設定・導線設計・コンテンツ構成・ビジュアルまでを一貫して担う。責任範囲はアウトプットの設計全体。
私が目標としているのは後者、「設計から入るデザイン」だ。
どちらが優れているということではない。
プロジェクトによって、クライアントの状況によって、必要なのは違う。
でも今、多くのクライアントが求めているのは後者のハズなのに、前者として依頼してしまっているケース、また、デザイナーと呼ばれる人もそのつもりで請け負っているケースが多い気がする。
だから名乗り方も、仕事の受け方も、変えていった方がよいのではないか?と勝手に思っている。
実際の会話から、わかること
これは少し前に実際にあったやり取り(許可を得て掲載)。
地域のサービス事業者が、既存のチラシについて相談してくれた。
クライアント:「このチラシの反応も見たいんですよね。」
私:「いいですね。ちなみに今回のCVって、どの行動を指していますか?」
クライアント:「え?CV?クリックとかの奴??…」
私:「あ、そうですね、Webの話だとクリックの事も含まれるんですけど、CVって"最終的な行動"という意味なんですよ。チラシで言うと、電話・来店・QRアクセスなどがそれに該当します。ですので、今回は"どの行動をゴールにするか"から考えていきませんか?」
クライアント:「あ〜!そういうことなんですね。CVってwebの用語かと思ってました。」
この会話で気づいたことは、クライアントは「チラシをかっこよくしてほしい」と思うのが「第一優先」ではなかったと言うこと。「集客したい」「認知してもらいたい」「反応を上げたい」という、つまり成果を出したかったということ。
聞くと、いままでもデザイナーと呼ばれる人と打ち合わせたとき「何をゴールにするか」を一緒に考えた事はなかったようだ。
ビジュアルを整える前に、ゴールを設定する。
これが「設計から入るデザイン」の、いちばんシンプルな入り口ではないだろうか?(本来のデザイン)
今、検証している最中です
さて、そんな偉そうに記事を書いているが、わたしも若い頃はそう思っていたし、そう上司から教えられた気がする。専門学校など出ていないので学校ではどう教えていたか確認はしていないが、先輩方がたがそう言うのだから、そう教えていたのだと勝手に判断している。
そして、正直に書くが、私はまだ「設計型デザイナー」としての実績を積み上げている最中で、「この手法で成果を出した」と胸を張れるケースがたくさんあるわけじゃない。
考え方としては確信はあるが、実際のビジネスの場でどう機能するか、今まさに試しながら学んでいる段階。(いくつになっても日々鍛練)
だからこの記事は、「これが正解」という記事ではない。
同じような違和感を持っている人と話したい、という気持ちで書いた。
「設計から入ったら成果が変わった」という話があれば、ぜひ聞かせてほしいし、「そんな甘くないよ」という声も聞きたい。
それでも、設計から入ることにこだわりたい
「見栄え良くして」は、悪い依頼じゃない。
でもその前に、「何のための見栄えか」を問わないと、どんなに整えても空回りする。
デザインは、目的を達成するための仕組みだ。
ビジュアルはその仕組みの中の一部であって、全部じゃない。
「デザイナー」という呼称が何でもありになっている今だからこそ、責任範囲を明確にして、設計から入るデザインを仕事の軸にしたいと思っている。
同じようなモヤモヤを感じているデザイナーに、この記事が届いたらうれしい。そして、依頼する側の人にも、「デザインに何を頼むか」を一緒に考えてもらえたら、もっとうれしい。
最後に——ツールより先に、考え方を
…と、ここで締めるつもりだったが、もう一つだけ。
SNSを見ていると、「独立レベルのスキルがつくまで教えます」「Canvaですぐにデザイナーになれます」といったスクールの広告を最近よく目にする。
ここまで読んでくれた人なら、少しひっかかるものがあるんじゃないだろうか。実際のところ、こういったスクールの多くが教えているのは「デザイン」ではなく「ツールの使い方」だ。これは批判ではなく、実際に体験して話を聞いた上での率直な感想として書いている。
「ツールの使い方」を学ぶことにも、ちゃんと意味がある。
ただ、ツールが使えることと、設計ができることは別の話だ。それを知った上で学び始めると、見えてくる景色がかなり変わってくると思う。
そこで私は、デザインの基礎や現場で経験してきたことを、「現場の声」としてそのまま伝える「オンラインサロン」みたいなものを開きたいと考えている。スクールよりも「一緒に考える場」に近いイメージ。
興味があったら、参加してみたいとDMくれたらうれしい。
話し相手として、気軽に参加できる場にしたい m(__)m
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