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ネトウヨ、ツイフェミ、反ワクQアノン――被害妄想型陰謀論者というカテゴライズ

近年SNS上で激しい攻撃性を露わにするエコーチャンバーとして、ネトウヨ(ネット右翼)、左派ハッシュタグ・アクティビズム集団、ツイフェミなどの集団がある。これらに加え明白に陰謀論として扱われる「反ワク・Qアノン」といった集団は、一見すると政治的信条や主張のベクトルが全く異なるように思われる。しかし、それら各陣営の深層心理や行動原理には共通した認知の歪みが浮かび上がる。

本稿では、欧州委員会による定義などをベースとして陰謀論者とは何かについて論じ、これら諸集団を「被害妄想型陰謀論者」という枠組みで包括的にカテゴライズすることで、現代社会を蝕む分断を考察する。


陰謀論とは何か

陰謀論とは、一般に「ある出来事や状況が、否定的な意図を持つ強力な勢力によって、裏で密かに操作されている」という信念を指す。欧州委員会(European Commission=EUの中核に当たる組織)は、多くの陰謀論には以下の6つの共通点が見られるとする。

1. What are they?(陰謀論者とはどんな人ですか?)
The belief that certain events or situations are secretly manipulated behind the scenes by powerful forces with negative intent.(ある出来事や状況が、否定的な意図を持つ強力な勢力によって、裏で密かに操作されているという信念。)

2. Conspiracy theories have these 6 things in common(陰謀論には、これら6つの共通点がある)
1. An alleged, secret plot.
(極秘の計画が存在するという主張)
2. A group of conspirators.
(陰謀をたくらむ集団の存在を主張)
3. ‘Evidence’ that seems to support the conspiracy theory.
(陰謀論を裏付けているように見える「証拠」の提示)
4. They falsely suggest that nothing happens by accident and that there are no coincidences; nothing is as it appears and everything is connected.
(偶然の否定; すべては必然で、裏でつながっているという歪んだ決定論)
5. They divide the world into good or bad.
(世界を善と悪に二分する二元論)
6. They scapegoat people and groups.
(特定の個人や集団をスケープゴートとして敵視する)

Identifying conspiracy theories. European Commission

また、近年の研究(van Prooijen & Douglas, 2018)では、陰謀論の基本原則として以下の4点が挙げられている。

Principle 1: Conspiracy Beliefs are Consequential
(実害性; 反ワクチンなど実際に社会に害悪をもたらす)
Principle 2: Conspiracy Beliefs are Universal
(普遍性; 時代・地域を超えてどこにでも出現する)
Principle 3: Conspiracy Beliefs are Emotional
(感情性; 一見論理的な説明をするが、実際には感情が支配している)
Principle 4: Conspiracy Beliefs are Social
(社会性; 陰謀論は社会的な敵対構造の中で発生する)

van Prooijen JW, Douglas KM. Belief in conspiracy theories: Basic principles of an emerging research domain. Eur J Soc Psychol. 2018 Dec;48(7):897-908. doi: 10.1002/ejsp.2530. Epub 2018 Aug 24. PMID: 30555188; PMCID: PMC6282974.

陰謀論者の心理的特徴

心理学的研究(Abalakina-Paap et al., 1999)では陰謀論的傾向を助長する要因をいくつか挙げている。まず日本語でさっと解説されているものを読んでみよう。

「こんな出来事が起きたのは、世の中がこうなっているのは、明確な原因や意味があるのだ」と理解したい。つまり、私たちは世界を自分の認知的なコントロール下に置きたいのである。いくつかの心理学的研究でも、自分自身や環境に対するコントロール感の欠如が陰謀論的信念を増大させることが示されている。ある調査では、疎外感、無力感、敵意、不当に不利益を被っているという感情と陰謀論的信念の間には、正の相関があった。

陰謀論とは何か そのメカニズムと対処法 2021/11/02 読売新聞
「ある調査」は以下の研究を示す Abalakina‐Paap, M., Craig, T., Gregory, W L. (1999) “Beliefs in conspiracies”, Political Psychology 20 (3), 637-647

陰謀論の特徴――自己中心的な被害者意識

前掲の新聞記事では、「ある調査では、疎外感、無力感、敵意、不当に不利益を被っているという感情と陰謀論的信念の間には、正の相関があった」としているが、陰謀論者の顕著な特徴として、「自己中心的な被害者意識(Victimhood)」が挙げられる。この手の研究で比較的新しいBertin(2024)の論文の総括が分かりやすいところである。

Victimhood has been linked to conspiracy beliefs in various contexts... Together, these results document that conspiracy beliefs have a self-oriented victimizing effect and that it is crucial to account for intergroup conflicts when studying the link between these beliefs and collective-level victimhood.
被害者意識は様々な文脈で陰謀論と結びつけられてきました……これらの結果は、陰謀論的信念が自己中心的な被害者化効果を持ち、これらの信念と集団レベルの被害者意識との関連を研究する際には、集団間の対立を考慮することが極めて重要であることを示しています。

P. Bertin, “The Victimizing Effects of Conspiracy Beliefs,” Zeitschrift für Psychologie, vol. 232, no. 1, pp. 26–37, Jan. 2024, doi: 10.1027/2151-2604/a000542.

そしてこの自己中心的な被害者意識が、《自らを善属性、自分にとって都合の悪い誰かや、本来無関係のスケープゴートを悪属性として、悪属性とラベル付けした人を、正義の鉄槌のつもりで何でも許されると思って激しく攻撃する》という行動を起こす。EUの定義では5、6あたりがここに来る。

このことは、論友であるマクロン氏がかなり以前から言っていて都合の悪い事実に対して言い返すことを優先して嘘をつくタイプを政治的主張のいかんを問わず被害妄想型としている。私自身の言い方にすれば、「自らを善属性、他者を悪属性として、自属性は被害者であるという自己意識を持ち、ありとあらゆることを属性に基づく迫害として理解しようとする」となる。

陰謀論の特徴――善悪二元論の世界観と、「味方でないものは全て敵」とする思考

陰謀論者は基本的に【善属性である自分と、自分に同調する仲間】 vs 【悪属性である(妄想的に)選び出されたスケープゴートや、自分に同調しない人間】という世界観を持っている。そしてこの悪属性は自分に同調しない人間というのは、言ってしまえば世界の人間の大半は潜在的にそうなので、陰謀論者はしばしば世界全体を敵視し自分たちは少数の正気の戦士ということになりがちである。

Goertzel (1994)が陰謀論者の特徴として指摘したものに、一つの陰謀を信じると、それが他の無関係な陰謀を支持する証拠となり、最終的に「世界のすべては裏でつながっている」という閉ざされた論理に陥る現象、「独白的(モノロジカル)な信念体系」がある。例えばSamayoa et al. (2022)は、COVID-19に関する陰謀論が、他の陰謀論を信じやすくする「ゲートウェイ陰謀論」ではないかという議論をしているが、反ワクチンの人が他の陰謀論――例えばディープステート陰謀論では政府職員を「悪」とする――に触れると、その陰謀論の「悪」がワクチンを推奨する「悪の親玉」に見えてくるという具合である(多くの場合政府機関などはワクチン接種を推奨するので「つながっている証拠」はあふれかえっている)。

自分に同調しないとすぐに悪・敵認定する心性と、敵は全部裏でつながっていると短絡化するモノロジカルな信念体系により、世界のあらゆるものが《The 敵》によって支配されているように見えてくるのであろう。


陰謀論者としてのネット右翼

ここまでの陰謀論者の特徴を見たとき、いわゆるネット右翼はこれに該当することに気が付く人もいるだろう。ここまでのエントリをGemini・Copilot・GrokのLLMに読み込ませたうえで、「ネット右翼について検索して調べ、彼らの特徴のうち、読み込んだ陰謀論者の特徴に当てはまるものを箇条書きしてください。」というプロンプトを打ったところ、おおむね以下のような回答が出力された(Geminiが一番整理されていたので基本はGeminiベース)。

1. 構造的な共通点(EUの6つの共通点への該当)

  • 秘密の計画と集団の想定:「在日特権」や「反日工作」など、特定の集団が裏で日本を支配・操作しているという言説を強く支持する。

  • 偶然の否定とすべての連結:不祥事や社会問題が起きると、いわゆる「在日認定」を行って偶然の産物ではなく"悪の勢力の仕業"として解釈する。

  • 善悪二元論とスケープゴート:「親日・愛国者(善)」対「反日・売国奴(悪)」という極端な二分法を用いる。韓国(在日コリアン)や中国、リベラルな政治勢力を一括して敵視し、彼らを諸悪の根源として攻撃する。

2. 心理的・原則的な共通点(心理学的原則への該当)

  • 自己中心的な被害者意識:「真面目な日本人が不当に損をしている」「マイノリティばかりが優遇されている」といった、「不当に不利益を被っている」という強い感情が活動の原動力となっている。

  • 認知的コントロール感の獲得:国際情勢や社会問題を「在日韓国・朝鮮人が裏で特権を享受し、日本人の利益を奪っている」という単一の原因に集約で理解することで、世界を自分のコントロール下(理解可能な範囲)に置こうとする。

  • 感情性と社会性(敵対構造):ヘイトや誹謗中傷などの過激な表現が、論理より感情主導で繰り返される。SNSや掲示板を介して感情的な結束が生まれ、集団行動や抗議・妨害に発展する事例が確認されている。

3. 論理体系の共通点(モノロジカルな信念体系)

  • ゲートウェイとしての機能:参政党や神真都Q会などで顕著なように、ネット右翼層として出発しつつ、健康不安やスピリチュアルな要素を混ぜることで、「ディープステート」や「パンデミックの陰謀」など他の陰謀論と混ざり合っている。

  • 「味方でないものは全て敵」とする思考:日本保守党の支持層は「100点満点の味方」以外は潜在的な敵として、一般的に右翼と考えられている人物でも激しく攻撃する。


陰謀論者としての左派ハッシュタグ・アクティビズム

論友の青野氏がよく指摘しており、私自身も「左派から参政党に流入するフローがある」ことを以前指摘したが、ネット右翼とは真逆であるはずの護憲派エコーチャンバー(ハッシュタグ・アクティビズムをよくやっている人たち)も実は陰謀論的傾向を持っている(arxivに研究が載っていたりする)。先ほどと同様の手法で「ネット上の護憲派について検索して調べ、彼らの特徴のうち、読み込んだ陰謀論者の特徴に当てはまるものを箇条書きしてください。」きいたところ、基本はGeminiベースでおおむね以下のような回答が出力された。

1. 構造的な共通点(EUの6つの共通点への該当)

  • 秘密の計画と集団の想定:「軍産複合体」ないし日本会議や統一教会が政府のあらゆる決定(経済政策から災害対応まで)が、これら組織の指令にで動いているという、実態を大幅に超越した全能の黒幕として描かれる。

  • 偶然の否定とすべての連結:政権に不都合なニュース(不祥事など)が出ると、その直後に起きた芸能人の逮捕や大きな事件を「政権が国民の目を逸らすために裏で糸を引いた(スピン)」と断定する言説が多発する。

  • 善悪二元論とスケープゴート:「反米=平和主義(善)」対「親米=戦争屋(悪)」という極端な二分法を用いる。ロシアが戦争を起こし中国の覇権主義的な傾向が周囲の国から批判されても「アメリカに対する抵抗」として称賛する。

2. 心理的・原則的な共通点(心理学的原則への該当)

  • 自己中心的な被害者意識:自分たちを「戦前のような軍国主義化を食い止める唯一の良心」と定義し、それ以外の国民を「洗脳された人々」、政権を「ヒトラーの再来(ファシスト)」と極端にラベル付けする。

  • 認知的コントロール感の獲得:現代の紛争は多層的で複雑な要因で起こるが、これを「自民党が戦争をしたがっている」「軍産複合体に操られている」というシンプルな悪意に原因を求め、憲法があれば問題がないと単純化することで認知的コントロール感を得ている。

  • 感情性と社会性(敵対構造):エコーチェンバー内では、少しでも現実的な妥協案や法的な整合性を語る身内に対しても、「裏切り者」「偽装護憲派」として即座に排除(ブロックや糾弾)が行われる。これにより、集団内の言説はより過激で「感情的」なものへと先鋭化していく。

3. 論理体系の共通点(モノロジカルな信念体系)

  • ゲートウェイとしての機能:反核運動に含まれる放射線への不安に、一般的な健康不安やスピリチュアルな要素を混ぜることで、次第に「反ワクチン」や「ケムトレイル陰謀論」と混ざり合っている。また反米的な素地から「ウクライナをめぐる陰謀論」とも接続する。この傾向はれいわ新選組などで顕著である。

  • 「味方でないものは全て敵」とする思考:中立的な意見や事実に基づいた反論であっても、「御用学者」「ネトウヨ」などのレッテルを使って排除し、自らの信念体系を守ろうとする。

非常に逆説的なのだが、ネット右翼が陰謀論者の特徴に当てはまる一方で、「ネトウヨ」という語が左派陰謀論を強化するワードになっている。これは陰謀論の基本原則4、社会性=陰謀論は社会的な敵対構造の中で発生する、というテーゼに合致するだろう。

なお、彼らの前身たる新左翼についも、概ね同じように陰謀論であるとする判定が出力された。全文載せると長くなりすぎるので端的な部分だけを示すと以下のようになる。

  • 実害性:テロ行為

  • 善悪二元論:「反米・革命勢力(善)」と「親米・体制側・反動(悪)」

  • 味方でないものは全て敵とする思考:セクト化、内ゲバ

  • 自己中心的な被害者意識:「抑圧された民衆の代表」という被害者意識

  • モノロジカル:あらゆる社会事象を「階級闘争」の文脈で読み解く


被害妄想型陰謀論者としてのフェミニズム

いわゆるツイフェミも陰謀論者としての特徴を持っている。先ほどと同様の手法で「いわゆるツイフェミついて検索して調べ、彼女らの特徴のうち、読み込んだ陰謀論者の特徴に当てはまるものを箇条書きしてください。」と打ったが、以下はGeminiの出力を文体の調整以外ほとんどそのまま使っている。それぞれの条項について、当てはまりとしては無理やり感はないと思うが、いかがだろうか。

1. 構造的な共通点(EUの6つの共通点への該当)

  • 秘密の計画と強力な勢力の想定:社会のあらゆる不平等を家父長制という目に見えない巨大な支配構造の意図的な工作として捉え、すべては男性優位社会を維持するための「極秘の計画」の一環であると解釈する。

  • 偶然の否定とすべての連結:広告のデザイン、アニメの表現、何気ない他者の発言などを、単なる偶然や個人の嗜好ではなく、「女性を抑圧しようとする構造的な意図」として裏でつながっていると解釈する。

  • 善悪二元論とスケープゴート:世界を「抑圧される女性(善)」対「抑圧する男性および名誉男性(悪)」に二分する。男性一般をスケープゴート化にするほか、特にアニメを「女性差別の象徴」とする行為が見られる。

2. 心理的・原則的な共通点(心理学的原則への該当)

  • 自己中心的な被害者意識:「女性は常に被害者である」という立場(被害者原理主義)をアイデンティティの核とする。「私は被害に遭った」という告白があらゆる論理に優先し、異論・反論を「女叩き(差別)」と読み替えることで、自らの正当性を守ろうとする。

  • 認知的コントロール感の獲得:世の中の複雑な問題をすべて「ジェンダー問題」に還元して理解することで、自分自身の不安や不満に明確な「原因」を与え、世界をコントロール可能な状態に置こうとする。

  • 「目覚めた者」としての選民意識(社会性):自分たちは「社会の構造的な差別に気づいた目覚めた存在」であり、気づかない他者を「洗脳されている」と見なします。これは陰謀論者の「真実を知る少数派」という意識と一致する。

3. 特徴的な思考パターンの共通点

  • モノロジカル(独白的)な信念体系:HPVワクチンを契機として反ワクチン陰謀論と混ざりあっている。災害デマを拡散するアカウントが、同時に避難所での性犯罪などのデマを主張を展開する例が報告されている。

  • 「味方でないものは全て敵」とする思考:少しでも自分たちの手法や過激さを批判する人間(たとえ同じフェミニストであっても)を「ミソジニスト」や「名誉男性」、「内面化された女性差別」として敵認定し、排除・ブロックする傾向がある。

追記すれば、陰謀論の共通点として《信念体系を守るためにデマを連発し、周りからそれが虚偽であると指摘されても改めない》という現象があるが、ツイフェミにおける「嘘松」もその類である。


LLMに当てはめさせる手法の問題

ただし、このようにLLMにあてはめさせる手法は、LLMが全般に質問者に迎合した回答を返す傾向があるため、適当に「○○は陰謀論者の特徴にあてはまるか」と聞いてもかなりガバい判定で返してくることが多い(ベンチマークとして学術機関を対象に同じ手法を取ったところ、大学内のWoke思想を当てはめて陰謀論者であると返してきたことがある)。

これは、手法のガバさという問題もあぶりだすが、同時に我々は多かれ少なかれ陰謀論に陥る脆弱性をはらんでおり、陰謀論者との違いはせいぜい完全な陰謀論に嵌る(世界を記述する認知能力の限界を迎える)僅かなケイパビリティの違いなのではないか、ということも示唆しているように思えてしまう。

またジェネリックな話でお茶を濁してきたことが何回かあったため、「実例が乏しいのに強引に当てはめようとしているので書き直せ、できないなら無理と出力しろ」と指示を出したことは付記しておくし(その結果実際の事件に当てはめた答えを返してきたが)、最終的には私の文責としてこれを公開している。


その他の付記

フェミニズムに関しては女性全体がうっすら賛成しているが、陰謀論化するほどひどいのは一部である、ということは認識は必要であろう。日本人が全員ネット右翼ではないというのと一緒である。


フェミニズムがゲートウェイ陰謀論となって右翼と接続される可能性についても議論されている。これについては、TERF(Trans-Exclusionary Radical Feminist; トランス排斥的ラディカルフェミニスト)問題は10年以上続いているし、フェミニスト活動家として知られる北原みのりは、アメリカの保守福音派ベースであるキリスト教婦人矯風会にシンパシーを感じるという発言をしており、現在でも散発的に見られる現象であると言える。


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