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最後の恩返し

3年ほど前、ずっと一緒だった祖母が特養に入所しました。

自宅から施設へ行き、祖母に会いに行く日々が始まりました。

当日は電車の遅延があっても間に合うように早めに行き、カフェに入ることが多かったです。

ここはかつて、祖父母と一緒に行った思い出の場所でした。

物思いに耽りつつ、アイスココアを飲みながら、今日も祖母に会えるのが楽しみだなぁと胸を躍らせていました。


初めての夏が来て、電車から降りると汗だくで、暑さから逃れるためにカフェに入り、のんびりしていると、入所が決まった時に、妹に送ったメールを思い出しました。


「たくさんお世話になったから最後の最後に私が出来る最大限の恩返しをしたいと思っているよ。良かったら会いに行ってあげてね」



私の思いとは裏腹に、

返信は「よかったね」の一言だけでした。


私は私で出来ることをやろう。

最後までやり抜くんだ。

あの日の決意は、例え身内からの言葉でも変わりませんでした。

面会が終わったらどんな様子だったか何を話したかメモ帳にまとめていました。




20XX年 7月 X日 XX時〜面会  @居室にて
おじいちゃんについては、「たくさんお世話になった。ありがとう。」と私に向かって軽く会釈しつつ言って感謝の気持ちがあるようでした。「『ありがとう』とか、『ごめんなさい』とか、言えない人も、いるよね?(おばあちゃん「うん」)だから、そういう気持ちがあるのは、いい事だと思うよ。」とこちらが言ったら「そうだね☺️」と言っていました。

20XX年7月翌週 XX時〜面会 @面会室にて
今回は、「もう来なくていいよ。」ではなく、
「もう、帰りなさい。」と気遣ってくれる優しさが身に染みた。

当時の記録より 一部抜粋


入所してすぐの頃は頻繁に帰りたいと言っていました。

祖父に反対されたけど、出来るなら連れて帰りたかったです。

それからしばらく経った頃、祖母は、

「色んな経験をしてみると良いよ。」

とアドバイスをくれました。


暑さと涼しさが混ざる頃には、施設内のプログラムに参加させて頂く機会が増えました。

顔馴染みとなった職員さんや初対面のボランティアの皆さんに混じっての参加です。

「あんたが好きなところに花を挿していいよ」

祖母と交互に花を取り、一緒に作品を作るのが毎回楽しみでした。

一緒に作ったのに、作品を紹介する時は、私が作ったことにしてくれたこと。全然出しゃばらないところは、病気になっても変わらないままでした。

**

施設での初めての冬。

プログラムの日は、雪が静かに降っていました。

子供のようにはしゃいでしまったけど、祖母は何も言わないでいてくれて、

それが祖母らしかったです。

2人で見た最初で最後の雪となりました。


2度目の春にも、満開の桜の下、部屋から外に出て散歩をしました。

「亀がいる」と祖母が指をさしました。

とても綺麗な桜でした。

1度目の時、桜が散ってしまったのを惜しむ私に

「桜は来年も咲くからね」

と言っていた祖母の声を思い出します。

桜並木の下を祖父母と叔母の3人が並んで歩く姿は、今も脳裏に焼き付いています。

施設の近くの桜


あと何回、会えるだろう。

あと何回、笑い合えるだろう。

無性に怖くなる時もあり、施設を出た瞬間、涙が溢れて止まらないことも何度もありました。

でも祖母は祖母で、会いに行くと喜んでくれて、それだけで十分でした。

最後の面会の時、祖母と祖父と3人だけの時間がありました。

祖父が「新しい時代だな」と言い、私は「置いてかれちゃうね、私たち」と呟きました。

私の言葉を聞いた祖母は私の顔を見つめて、何とも言えない表情をしていました。

話せたら、なんて思っていたのか、聞きたかったです。

まだまだ祖母が元気で旅行に行ったりしていた頃、送ってくれた手紙に「貴女が育ってきた歴史は私が生きてきた時間でもあります。ありがとう!!」と忘れられないメッセージが記されているけれど、今、改めて思うのは、祖母から30年以上の時間を頂いた、ということです。

少しは恩返し、出来たかな?

どうか、これからを見守っててね。


#エッセイ
#絆
#祖母
#ずっと一緒


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