あなたへ花を手向ける、名もなき後輩として。
記録として心情を残す。
明日の献花式に行くのが、少し怖い。
メンバーが気丈に振る舞っているから、
この二週間はわたしも、できる限りうつむかないようにしてきた。
さみしさは、思い出を書き連ねることで紛らわせていた。
だけど明日だけは、悲しみに押しつぶされそうだ。
敬愛するミュージシャンを亡くしたという事実と、正面から向き合わなければならない。
それでも、自分の意志で行かないという選択肢はわたしにはない。
いわば、ファンのための告別式なのだから。
それなら、どうしたらいいか。
わたしは考えた。
式は、故人に近づける機会。
花を手向ける瞬間、
そのファンが誰なのか、どんな気持ちでいるかは
きっとわかるはずだ。
それならば、自分は一番見てほしい姿でありたい。そう思った。
見てほしい姿……
熱心なファンならツアーTシャツやコスプレで行くかもしれないし、
シックな黒服で行く方も多いだろう。
わたしは、なりたかった自分になったつもりで行こう。
衣装を着る。
何本かに書いた通り、かつては音楽をやっていて、
ステージに立っていた。
そんなことはとうに忘れていたし、
エッセイにするとも思っていなかったが、
大好きだったLUNA SEA の呼びかけが聞こえて、
LUNATIC TOKYO 2025へ行き、
一年かけて音に関する感覚が戻ってきていた。
きわめつけは昨日、地元から音楽仲間が訪ねてきたことだ。
二人で渋谷のカラオケに寄り、ルナフェスごっこをやった。
お互いずっとクラシック寄りだと思っていたのに、
蓋を開けたらビジュアル系だった。
その子は SOPHIAが大好きだったのに、昨夜まで封印していたらしい。
わたしのほうは LUNA SEAを、一年早く解いたわけだけれども。
うまく声が出なかったけど、最後は一緒に黒夢を歌って、
「今日が転機だ。ビジュアル系になろう!」と、
謎の誓いを立てた(笑)
待ち合わせ場所へ行く際に、こうも思った。
いつも仕事ついでに立ち寄る街。
だけど仲間と落ち合う昨夜だけは、その街が本当の渋谷に見えた。
90年代から音楽の夢を抱いて、
(音楽ジャンルは変わるが)このTRFの歌詞のような生き方を、
無理やり地方でやっていたのに、
肝心の渋谷を、
わたしは夢も希望もなく
パソコンと水筒を背負って、ただ通り過ぎていたのだ。
ステージに戻るのにはトレーニングが必要で
しばらく時間がかかる。
それでも今すぐ自分のことを、一人のミュージシャンだと自認したい。
そして明日、会場へと向かうのだ。
スマホの中から、頑張っていた頃の写真が見つかった。
当時はよく、ゆるキャラとショーに出ていた。
わたしは赤いツイードジャケットを着ている。

十数年が経ち、この面々が今どうしているかはわからない。
だけどわたしは、自分が何をしていたのかを思い出せた。
楽屋に挨拶しに行くようなことは、もう叶わない。
それでも明日は、
何万人といる後輩ミュージシャンの一人として、
真矢さんに花を手向けたい。
