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保護する空


テアトルシネマグループなどでかつての名作映画を12本、月替わりで上映するプロジェクトがある。
その中でベルナルド・ベルトリッチ監督のシェルタリング・スカイが上映されるという情報を仕入れて、絶対に絶対に映画館で観たくて上映が始まったその日にわざわざ有給を取って劇場まで観に行った。

シェルタリング・スカイは1991年に公開された映画で、わたしが初めて観たのは高校生の頃だった。当時サブスクはなかったので、TSUTAYAか GEOでレンタルしたDVDを家で観た。
高校生、いや大学生だったような気もしてきたがまあどっちでもいい。

高校生なら実家、大学生なら一人暮らしのマンションなのだが、どちらにしても家にあるちょっと良いスピーカーに繋いで、映画館には及ばずとも自宅でも出来る限りの音響を楽しめるような努力をして映画を観るようにしている。小学生の頃からの父の教えだ。

自宅で初めて観たその時から、理由は上手く説明できないがわたしの大好きな映画5本に入るぐらいにシェルタリング・スカイの虜になってしまったし、生涯で一度でいいからモロッコに行ってみたいと思うようになった。


ニューヨークから北アフリカへやってきた作曲家の夫と戯曲家の妻と、その友人。倦怠期を迎えている夫婦は観光目的の旅行ではなく、すれ違ったお互いの心向き合いたい、だけど現実から目を背けて異国の地に癒されたい、そんな感じの旅をしていくお話。

広大なサハラ砂漠とどこまでも続く空、言葉が通じないだけで世界から切り離されてしまうような感覚、疫病、孤独、愛

耽美で少し退廃的で難解なストーリーに対して、映像美と劇中の音楽はわかりやすく美しくて、眼から耳から浴びて酔いしれた。

坂本龍一さんの音楽が作品の良さを最大限に引き出していた。
日本人であるはずの坂本龍一さんが、どうしてこんなにも離れた土地で描かれる映像とストーリーにふさわしい曲を作れるんだろうと不思議でたまらなかった。

何度も観たくてBlu-rayも買ったし、サウンドトラックCDも買った。楽譜も買って、家のピアノで自分で弾いてみたりもした。
美しい映像に加えて坂本龍一さんの作る心揺さぶられる劇中音楽があったからこそ、作品の大ファンになったのかもしれない。

今回その大好きな映像美と美しい音楽を映画館という最高の環境で浴びられたのは至福の時間だった。

ただ、何度映画を観てもこれは結局何が伝えたい話なのか問われると、良い大人になった今でも上手く答えられない。
何度も観てるくらい好きな映画のはずなのに、あらすじを説明するのも難しい。
ただわたしが文化的に浅い人間なだけなのかもしれない可能性もだいぶ高い。


シェルタリング・スカイはもともとポール・ボウルズというアメリカの作家が書いた原作本があって、日本語のタイトルは「極地の空」。響きがかっこいい。

シェルタリング・スカイって保護する空、みたいな意味になると思うけど、
守ってくれる空の向こうには何があるのだろう。あの夫婦にとって、サハラ砂漠は人生という旅のシェルターのような存在だったのか。
だとしたら何から守られたかったのだろう。


原作の本を読んでみたくなって、映画館の帰りの地下鉄でGoogleを開いて探した。
原作本は廃版になっているようで、かなり入手困難な上に、今出回っている古書はびっくりするほど高値で売られていた。
ついでにポール・ボウルズの他の書籍も読んでみたくなり少し調べてみたが、大きめの書店でも置いてあるかどうか怪しいぐらいの入手難易度だった。

諦めきれず、比較的良心的な出品者からシェルタリング・スカイの原作本と、「世界の真上で」を購入した。

映画館でシェルタリング・スカイを鑑賞するという夢が叶った今、死ぬまでに古本屋で運命的にポール・ボウルズの作品を見つけてニマニマして、地道に集めていくという新しい夢ができた。



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