退職前後のお金の決め方ロードマップ|順番と連動で1枚に
受け取り方、退職した年の税金、その翌年の社会保険料、年金をいつから受け取るか——退職前後は、決めることが次々と出てきて、しかも互いに絡み合います。「どれか一つだけ正解を選べばいい」と思って動くと、後の年に思わぬ所で効いてくる、というのが、この時期のいちばんやっかいな所だと思います。
退職金・iDeCo/企業型DC・公的年金が「ある」けれど、受け取り方・受け取る時期・税・社会保険料が絡まって、どこから手をつければいいか分からない——そんな方へ。この1冊は、退職前後3〜5年のお金の決定を、"順番と連動"で1枚に落とすためのものです。
この1冊で「できるようになること」
退職前後3〜5年(おおむね60→65→70歳)のお金の決定を、1本の年表に並べて見渡せます
「1つの決定が、次の決定に連動する」つながり(受け取り方→翌年の社会保険料→年金の開始時期→申告)を、自分の数字で追えます
バラバラの判断を、生涯の"手取り総額"という1つのものさしで見比べられます
この1冊を書いている人
私はアクチュアリー(年金数理の専門家)の準会員として、企業が将来支払う退職金や年金の額を数理的に計算し、その内容を説明する仕事をしてきました。その立場から、制度のしくみと「決定どうしの連動」を、できるだけやさしく、中立に整理します。特定の金融商品や受け取り方をすすめるもの、個別の損得を断定するものではありません。
⚠️ 免責:本記事は公的制度のしくみと計算手順を整理した教育コンテンツです。投資・税務の個別助言や損得の断定ではなく、計算結果は目安です。控除額・要件・税率・保険料率・年金額は年度や自治体や個人の状況で異なります。最終判断の前に、勤務先の規定・所轄税務署・お住まいの市区町村・年金事務所・税理士・社会保険労務士でご確認ください。金額・人物はすべて架空の例です。
なぜ「1枚のロードマップ」が要るのか——決定は"連動"するからです
退職前後のお金の決定は、ひとつずつ独立しているように見えて、実はつながっています。たとえば——
退職金をどう受け取るか(一時金か年金か)で、その年の税が変わります。
受け取り方や金額は、翌年の社会保険料(国民健康保険料・介護保険料は前年の所得で決まります)に効いてきます。
公的年金をいつから受け取るか(繰下げ)で額面が増えますが、額面が増えると税・社会保険料も連動して増え、手取りは同じ割合では増えません。
受け取り始めたあとは、確定申告の要否が関わってきます。
つまり、「受け取り方だけ」「年金の時期だけ」を単独で最適にしても、全体の手取りが最適になるとは限りません。年金数理の仕事では、この「部分最適と全体最適のズレ」を必ず見ます。この1冊は、その見方を、あなたの数字で1枚に落とすためのものです。
たとえば同じ退職金1,800万円でも、受け取り方ひとつで"その後10年の社会保険料"が100万円規模で変わることがあります(お住まいや他の収入で変わるので、あくまで一例です)。受け取り方単体の損得だけを見て決めると、この10年ぶんの差が見えないまま進んでしまいます。
この1冊の進め方——架空の「Aさん」と一緒に、自分の数字を入れます
抽象論で終わらせないために、架空のAさんを最初から最後まで一緒に連れていきます。各章で、Aさんの数字がどう動くかを見ながら、自分の数字を入れていく構成です。
モデル:Aさん … 勤続31年・退職金1,800万円・65歳から公的年金180万円/年の見込み。iDeCoはなし。(※架空の例です)
まず、全体の地図(第0章)
退職前後のお金の決定を、年表に並べると、おおまかにこうなります(順番・年齢は人により前後します)。各時期で「決めること」と、それが「次に連動する先」を示します。
退職の年:退職金の受け取り方(一時金/年金分割/順番)→ 退職所得の税 → 翌年の社会保険料へ連動
退職の翌年〜:社会保険料(国保・介護)の備え(前年所得で1年遅れて効く) → 年金の受給設計へ
65歳前後:公的年金の開始時期(繰下げ)・働き方(在職老齢年金) → 税・社保・申告へ
受給開始後:税と申告(公的年金等控除・確定申告不要制度の落とし穴を確認) → 毎年の見直しへ
記入してみましょう … あなたの退職(予定)年齢=____歳 / 公的年金の受給開始予定=____歳 / iDeCo・DCの受取可能年齢=____歳
第1章(入口) 退職年の税——退職所得控除を出す(ここまで無料)
退職金を一時金で受け取ると、「退職所得」として、他の所得と分けて(分離課税で)計算されます。まず控除を引き、残りの半分だけが課税対象になります。控除額は勤続年数で決まります。
勤続20年以下:退職所得控除=40万円 × 勤続年数(最低80万円)
勤続20年超:退職所得控除=800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)
Aさんの場合:勤続31年 → 退職所得控除=800万+70万×(31−20)=1,570万円。課税退職所得=(1,800万−1,570万)÷2=115万円。
あなたの退職所得控除額 = ______ 万円(勤続年数の端数は1年に切り上げ。30年2か月→31年)。あなたの課税退職所得 =(退職金 − 控除)÷ 2 = ______ 万円。※勤続5年以下の役員等は「÷2」が使えない例外があります(原則は÷2)。
ここで出した「課税退職所得」が、この先のすべての判断の入口になります。ここから先(有料)では、Aさんと一緒に——②受け取り方で手取りがどう変わるか、③それが翌年の社会保険料にいくら連動するか、④年金をいつから受け取るか、⑤受け取り始めてからの税と申告——を、順番に、数字で1枚に落とします。
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