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退職後の健康保険「3択 比較シート」——任意継続・国保・扶養を、自分の数字で1枚に並べる(令和8年度)

退職の手続きを調べはじめると、「任意継続・国民健康保険・扶養の3つがある」までは分かっても、結局どれが自分にとって安いのかは、いくら調べても出てこない——そう感じている方が多いのではないでしょうか。

理由は、3つとも保険料の決まり方がバラバラで、同じ人でも選び方ひとつで負担が変わるからです。たとえば(以下は架空の例です)、退職した1年目は、国保が在職中の高い所得をもとに計算されるため高くつき、任意継続のほうが安く収まることがよくあります。ところが2年目になると、国保が下がった前年所得で計算し直され、今度は国保のほうが安くなる——というように、1年目と2年目で「安いほう」が入れ替わることすらあります。選び方を1年目だけで決めると、2年分では数万円単位の差がついてしまうこともあります。

たとえば同じ収入・同じ家族構成でも、任意継続を選ぶか国民健康保険を選ぶかで、1年間の保険料が数万円〜十数万円ちがう、ということは珍しくありません(お住まいや前年の所得、扶養に入れるかで変わります)。だからこそ、なんとなくで決めず、自分の数字で並べて見ることに意味があります。

この記事は、その分かれ道をあなた自身の数字で1枚に並べ、見て決められるようにするためのワークシートです。

この記事は、こういう人向けです

  • 無料記事で「任意継続・国民健康保険・扶養の3つがある」「決まり方が違う」ことは分かった。次は自分の場合はいくらになるのかを、実際に出して比べてみたい。

  • 役所や会社の窓口に行く前に、3つを同じ土俵で並べた1枚を手元に持っておきたい。

  • どれが正解かを誰かに断定してほしいのではなく、自分で見比べて決められる材料がほしい。

この記事で「できるようになること」

  • 任意継続の保険料を、自分の標準報酬月額から"実数"で出せるようになります(架空の例ではなく、あなたの数字で)。

  • 国民健康保険の保険料を、前年所得から自分で概算で出せるようになります(なぜ退職した年は高く、翌年度に下がるのかも、数字で見通せます)。

  • 任意継続・国保・扶養の3つを、1枚の比較表に「1年目」「2年目」で並べて見比べられるようになります。

  • 自分がどの型(A〜D)かを特定して、「役所・会社の窓口で何を聞けばいいか」が決まります。

この記事を書いている人

退職給付債務の数理計算と、その説明を担当してきたアクチュアリー準会員です。退職前後の制度を、特定の選択肢をすすめるのではなく、中立にやさしく整理して発信しています。本記事も、損得を断定するものではなく、自分で見比べるための計算手順をお伝えします。

この記事は、退職後の健康保険(任意継続・国保・扶養)の3択を、自分の数字で見くらべるための地図です。保険料や軽減の可否は、お住まいの市区町村や加入していた健康保険、個別の事情で変わるので、金額は目安としてお使いください。登場する人物・金額はすべて架空の例です。ご自身のケースの正確な金額は、退職する会社や協会けんぽ・健康保険組合、市区町村の窓口にも確認しながら進めると安心です。

まず、3つの「決まり方」をそろえて見ます(しくみのおさらい)

退職後の健康保険は、おもに3つから選びます。やっかいなのは、3つとも保険料の決まり方が違うことです。だから「どれが安いか」は人によって変わります。

  • ① 任意継続(前の会社の保険を継続)退職時の標準報酬月額(上限あり)× 保険料率で決まります。自己負担は全額(会社負担分がなくなります)。

  • ② 国民健康保険前年(1〜12月)の所得+加入人数(自治体ごと)で決まります。自己負担は全額です。

  • ③ 家族の扶養に入る:入れれば保険料はなしです。

本記事は、この3つを「自分の数字」で同じ表に並べるためのワークシートです。まずは、いちばん安い③扶養に入れるかどうかから確かめます。

ステップ0 扶養に入れるか先に確認する(入れれば保険料はゼロ)

3つのなかで、入れるなら扶養がいちばん安く済みます(保険料の負担がありません)。先にここを確かめます。

  • 働いている家族(配偶者・子どもなど)がいて、その家族の健康保険に被扶養者として入れそうか。

  • これから先1年間の見込み収入が 130万円未満(あなたが60歳以上、または障害がある場合は 180万円未満)におさまるか。

  • この収入には、公的年金も含めて数えます。たとえば60歳以上で年金が年180万円以上ある人は、扶養には入れません(税金の「扶養」とは基準が別ですので、取り違えないようにします)。

▷ 扶養に入れそう? → はい = 保険料ゼロが第一候補(下の比較で①②と「0円」で並べます) / いいえ = ①任意継続と②国保を実数で比べます。

ここからは、①任意継続の保険料を自分の標準報酬月額から実数で出し、②国保を前年所得から概算で出して並べ、③3つそろった記入済みサンプルと、④自分の型に応じて窓口でそのまま読み上げられる質問文まで、1枚に仕上げます。

📌 この記事は令和8年度(2026年6月時点)の数値で作成しています。健康保険料率や国民健康保険の料率・上限額は毎年度のように改定されるため、最新の数値はご加入の健康保険・お住まいの市区町村でご確認ください。

使う前に:手元に用意する数字(3つ)

  • ① 直近の給与明細(=標準報酬月額が分かります。健康保険料の欄や、給与明細の「標準報酬」から逆算できます。分からなければ会社・健保に聞けます)

  • ② 源泉徴収票または前年の課税証明書(=前年の所得が分かります。国保の見通しに使います)

  • ③ 40歳〜64歳かどうか(=介護保険料がかかる年齢かどうか。かかる場合は保険料率に上乗せします)

ステップ1 任意継続の保険料を「実数」で出す

任意継続の保険料は、次の式で出します。会社が半分払ってくれていた分がなくなるので、在職中のおよそ2倍が目安です。

任意継続の月額保険料 = 〔退職時の標準報酬月額 と 上限額 の低いほう〕 × 保険料率

  • 上限額: 協会けんぽの場合、令和8年度は標準報酬月額32万円が上限です。退職時の標準報酬月額が32万円を超えていた人は、32万円で頭打ちになります(=高給だった人ほど、この上限のおかげで国保より安くなることがあります)。

  • 保険料率: 協会けんぽは都道府県ごとに違い、令和8年度の全国平均は9.90%(いちばん低い県で9.21%、高い県で10.55%)です。自分の県の率は協会けんぽの「都道府県毎の保険料率」で確認します。 40〜64歳の人は、これに介護保険料率1.62%(令和8年度・全国一律)を足します。

  • ⚠️ 令和8年4月分から、公的医療保険には子ども・子育て支援金が上乗せされます。協会けんぽの任意継続被保険者は0.23%(全国一律)で、労使折半がないため全額が自己負担です。国民健康保険にも令和8年4月分から同じ趣旨の「子ども・子育て支援金分」が加わり、料率は市区町村ごとに違います。任意継続にも国保にも同じ上乗せがあるので、比べるときは両方に入れて見てください。

  • ⚠️ 健康保険組合に入っていた人は、計算の基準や率が組合の規約で異なり、2倍にならないこともあります。その場合は組合の任意継続の案内・早見表で確認してください(以下は協会けんぽを前提にした目安です)。

【記入済みサンプル:退職時の標準報酬月額が38万円・44歳(介護該当)・全国平均率で試算】

退職時38万円 > 上限32万円 → 計算は32万円を使います。

  • 健康分: 32万円 × 9.90% = 31,680円/月

  • 子ども・子育て支援金分: 32万円 × 0.23% = 736円/月

  • 介護分: 32万円 × 1.62% = 5,184円/月

  • 月額合計 約37,600円 → 年額 約45.1万円

(在職中は会社と折半でこの半分=約18,800円/月でした。上限のおかげで、給料が高かった人ほど「2倍」より抑えられています。)

▷ あなたの計算:

  • 基準額 = 〔退職時の標準報酬月額 ____ 万円 と 上限32万円 の低いほう〕= ____ 万円

  • 健康分 = 基準額 × ____%(自分の県の率)= ______ 円/月

  • 介護分(40〜64歳のみ)= 基準額 × 1.62% = ______ 円/月

  • 子ども・子育て支援金分 = 基準額 × 0.23% = ______ 円/月

  • あなたの任意継続 月額 = ______ 円 → 年額 = ______ 円

ステップ2 国民健康保険を「概算」で出す

国保は自治体ごとに料率が違うため、最後の1円まで合わせるには市区町村の試算が要ります。ですが、自分で概算の数字を置くことはできます。任意継続と同じ土俵で並べるために、ここまでやります。

国保の年額 ≈〔前年の総所得 − 43万円〕×〔所得割率〕+〔均等割 × 加入人数〕

  • 賦課のもとになる額: 前年(1〜12月)の総所得から、住民税の基礎控除43万円だけを引きます(社会保険料控除や扶養控除などは引けません)。

  • 所得割率・均等割は自治体ごとに違います。 下は東京23区(令和7年度)を例にした数字です。お住まいの市区町村の率に置き換えてください(各市区町村のサイトに「国保料率」「保険料の決め方」のページがあります)。

  • 例(東京23区・令和7年度・65歳以上=介護分なし): 所得割率 約10.40%(医療分7.71%+後期高齢者支援金分2.69%)/ 均等割 約64,100円/人(医療分47,300+支援分16,800)。

  • 40〜64歳の人は、これに介護分(所得割・均等割)が上乗せされます。介護分の率・均等割も自治体の国保ページで確認してください。

  • 国保にも年間の上限額(賦課限度額)があります。所得がかなり高い人は、ここで頭打ちになります。

  • ※ここでの23区の率は令和7年度の例です(国保の率は毎年度・自治体ごとに改定されます)。任意継続の例(令和8年度)とは年度が異なりますので、最新の額はお住まいの自治体・協会けんぽ/組合の最新の料率で置き換えてください。

【記入済みサンプル:単身・前年の給与所得220万円・65歳・東京23区の例】

  • 賦課のもとになる額 = 220万 − 43万 = 177万円

  • 所得割 = 177万 × 10.40% = 184,080円

  • 均等割 = 64,100円 ×1人 = 64,100円

  • 1年目の国保 年額 ≈ 約24.8万円(前年に給料があったので高めです)

  • 2年目: 退職した年は収入が大きく減ります。たとえば翌年が公的年金200万円のみなら、65歳以上の公的年金等控除110万を引いた残り90万から43万を引いた47万が賦課のもと → 所得割 47万×10.40%=48,880円 + 均等割64,100円 = 約11.3万円。1年目の半分以下に下がります。ここが2年ほぼ一定の任意継続との分かれ目です。

▷ あなたの概算:

  • 前年の総所得(源泉徴収票の給与所得など)= ____ 万円 − 43万 = ____ 万円

  • 所得割 = ____ 万 ×____%(自分の自治体の率)= ______ 円

  • 均等割 = ______ 円 ×____人 = ______ 円

  • あなたの国保 1年目 年額 ≈ ______ 円 / 2年目(収入が減った後)= ______ 円

  • 会社都合(倒産・解雇・雇止め)で辞めた? → はい = 1年目から軽減あり(前年の給与所得を「100分の30」とみなす。離職時65歳未満・要申請・離職翌日〜翌年度末)。定年・自己都合は原則対象外。離職理由コード(雇用保険受給資格者証)を確認します。

ステップ3 集約比較表:この1枚を自分の数字で並べる(=ゴール)

3つを「1年目」「2年目」の年額でそろえて並べます。ポイントは2年分で見ることです。任意継続は2年ほぼ一定、国保は2年目に下がるので、1年目だけで決めると逆転を見落とします。

【記入済みサンプル:単身・退職時の標準報酬月額40万円・前年の給与所得220万円・65歳・東京23区・自己都合退職】

  • ① 任意継続:1年目 約38.9万円(32万上限×〔9.90%+子ども・子育て支援金0.23%〕)/ 2年目 約38.9万円 / 2年合計 約77.8万円(2年ほぼ一定)。

  • ② 国民健康保険:1年目 約24.8万円 / 2年目 約11.3万円 / 2年合計 約36.1万円(2年目に大きく下がる)。

  • ③ 扶養:入れる家族なし=対象外(入れる人は0円)。

⚠️ ①は令和8年度(子ども・子育て支援金0.23%を含む)の率、②は東京23区の令和7年度の率で計算しています。国民健康保険にも令和8年4月分から子ども・子育て支援金分が加わるため、②の実際の額はここより上がります。年度の基準がそろっていない点を承知のうえで、大小の傾向をつかむ目安としてお使いください。

→ この単身の例では、2年合計で国保(約36万)が任意継続(約78万)より安く、乗り換えも要りません。一方、扶養する家族が多い人は、国保だと均等割が人数分かかるのに対し、任意継続は家族が増えても保険料が変わらないため、逆に任意継続が安くなることがあります。だから、自分の人数で並べることが大事です。

▷ あなたの比較表(自分の数字で埋めます):

  • ① 任意継続:1年目 ______ 円 / 2年目 ①とほぼ同じ ______ 円 / 2年合計 ______ 円(家族が増えても保険料は変わりません)。

  • ② 国民健康保険:1年目 ______ 円(前年所得=高め)/ 2年目 ______ 円(下がる見込み)/ 2年合計 ______ 円(加入する人数が増えると均等割も増えます)。

  • ③ 扶養(入れる人):1年目 0円 / 2年目 0円 / 2年合計 0円。

  • 3つの「2年合計」を見比べます。いちばん小さい列が、あなたの第一候補です。

  • 国保のセルは概算で構いません。市区町村の試算で正確な額が出たら、置き換えます。

ステップ4 「途中で乗り換える」を計算に入れる(2022年改正)

2022年(令和4年)1月の改正で、任意継続は本人が申し出れば途中でやめられるようになりました(以前の「2年縛り」が解消)。これを使うと、比較表の結論が変わることがあります。

  • 例:「1年目は任意継続(国保が高い年を上限つきの任意継続でしのぐ)→ 保険料が下がる2年目から国保へ切り替える」。

  • 例:「家族の扶養に入れるようになったら、任意継続をやめて扶養に入る」。

  • 申し出ると、その翌月1日にやめられます。ただし原則あとから取り消せませんので、切り替え先(国保・扶養)の保険料・加入条件を先に確認してから決めます。

▷ 自分の比較表で、1年目と2年目で安い選択肢が入れ替わっていたら、「乗り換え」を前提にもう一度2年合計を出し直します。

判断フローチャート:自分の「型」を特定して、窓口で聞くことを決める

上から順に当てはめて、自分の型を1つ決めます。型が決まれば、聞く窓口と聞く言葉が決まります(そのまま読み上げられる文を用意しました)。

  1. 家族の扶養に入れる(年金含む見込み収入が130万/180万未満)? → はい = 型A

  2. 退職時の標準報酬月額が32万円を超えていた(=上限で頭打ち)、または扶養する家族が複数いる? → はい = 型B

  3. 会社都合(倒産・解雇・雇止め)で離職した? → はい = 型C

  4. 上のどれでもない(自己都合・定年で、給料は上限以下、単身に近い) → 型D

型A(扶養が第一候補) → 家族の勤務先の健保へ。

「退職して収入がなくなる(または年金中心になる)ので、◯◯さんの健康保険の被扶養者に入れますか。私の今後1年の見込み収入は、年金を含めて約____万円です。手続きに必要な書類を教えてください。」

型B(任意継続が有利になりやすい) → 退職する会社の健保担当か協会けんぽ・健保組合へ。

「任意継続にした場合の私の月額保険料はいくらになりますか(退職時の標準報酬月額は____円です)。上限で頭打ちになりますか。扶養家族(____人)を入れても保険料は変わりませんか。」あわせて市区町村で国保1年目も試算し、表で比べます。

型C(国保の軽減対象になりうる) → まず市区町村の国保窓口へ。

「会社都合(離職理由コード____)で退職しました。非自発的失業者の保険料軽減(前年の給与所得を100分の30とみなす)の対象になりますか。対象なら、軽減後の1年目の保険料を試算してください。申請に必要な書類も教えてください。」

型D(1年目と2年目で逆転しやすい) → 市区町村と会社の両方へ。

市区町村に「国保の1年目(前年所得____万円)と、2年目(収入が年金中心に減った場合)の保険料を、両方とも試算してください」。会社・協会けんぽに「任意継続の月額」を確認。1年目が国保のほうが高ければ、「1年目は任意継続→2年目に国保へ乗り換え」も比較表で試します(2022年改正で乗り換え可)。

まとめ

退職後の健康保険に、唯一の正解はありません。決まり方が3つで違うので、いちばん安い選択は、前年の所得・標準報酬月額・家族構成・離職理由で変わります。本ワークシートは、その3つを自分の数字で1枚に並べ、1年目だけでなく2年目まで見比べるための道具です。最後の正確な金額は、必ず協会けんぽ・健康保険組合・市区町村の窓口で確認してください。

なお、保険料率や上限額、軽減の要件は改定されることがあります。最終的な金額は、退職する会社や協会けんぽ・健康保険組合、お住まいの市区町村で確かめながら、あなたに合った選び方の地図として使ってください。

この記事は、退職後の健康保険を自分の数字で見くらべるための道具です。最終的な保険料は、加入先の協会けんぽ・健康保険組合と、お住まいの市区町村で確かめながらお使いください。

退職前後のお金のしくみを、制度の一次情報にあたりながら中立に整理して書いています。これから健康保険を決める方のお役に立ちそうでしたら、フォローしていただけるとうれしいです。

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