なぜ千尋の両親は豚になったのか?― 子どもの"物欲"を健全な"意欲"に変える親の役割
おはようございます。今日は映画シリーズです。
実は、もうすぐ娘の誕生日。
12月にはクリスマスもあり、彼女にとってはスペシャルな月が続くのですが、ものを与えたら、それを大事にしてほしいですよね。
「あれ買って!」 「みんな持ってるもん!」
おもちゃ屋さんやスーパーで繰り広げられる子どもの「おねだり」との戦い。 その尽きることのない物欲を前にあなたは途方に暮れてはいませんか。 「ものを大切にしなさい」と教える一方で、次々と新しいものを買い与えてしまう矛盾。
どうすれば子どもは健全な「欲」と付き合い、ものに振り回されない強い心を育むことができるのでしょうか。 そのヒントは宮崎駿監督の傑作『千と千尋の神隠し』のあの衝撃的なシーンにありました。
◆「お客様の食べ物を食べたらおしまいさ」― ルールと感謝

神々の世界に迷い込んでしまった少女千尋とその両親。 誰もいない屋台に並べられた山盛りのご馳走を見た両親は、誰もいないから、あとで払えばいいと誰のための食事なのかを知らず、貪るように食べ始めます。
しかし、その結果彼らは醜い豚の姿に変えられてしまいました。 なぜ彼らは豚になったのでしょうか。
それは彼らが「ルール」を破り「感謝」を忘れたからです。
そこが神々のための食事の場所であるというルール。 そして、その食べ物が誰かの手によって作られたものであるという感謝。 彼らはその二つを無視し、ただ自分の欲望のままに行動した。 その「人間としての尊厳を失った姿」こそが「豚」のメタファーだったのです。
このシーンは子どもに「欲しがる」ことそのものが悪いのではないということを教えます。 問題なのは、ルールや感謝を忘れ、自分の欲望だけを優先してしまうその「姿勢」なのだと。
「お菓子買って!」と言われた時。 「ダメ!」と言う前に。 「そうだね美味しそうだね。でも今日は一つだけというお約束だよ」とルールを確認する。
「これはお店の人が売ってくれるから買えるんだよ。ありがとうだね」と感謝の視点を加える。 そのワンクッションが子どもの欲望をコントロールする心のブレーキを育てます。
◆「働かざる者食うべからず」― "欲"を"意欲"に変える

両親を人間に戻し、元の世界に帰る為に湯屋「油屋」で働くことになった千尋。 彼女はそこで厳しい世界の摂理を学びます。 彼女は、雑巾掛けや風呂釜掃除といった、最も辛い仕事から始めます。 そして、オクサレ様(河の神)を接客した際に大きな儲けをもたらし、徐々に周りからも認められ、自分の「居場所」を確保したのです。
この経験を通じて千尋は「欲しい」という気持ちをただ待つのではなく、「自分の力で手に入れる」という健全な「意欲」へと昇華させていきます。
これは子どもの物欲との向き合い方に大きなヒントを与えてくれます。 お小遣い制もその一つです。 ただお金を与えるのではなく「お風呂掃除をしたら10円」というように労働と対価を結びつける。 その経験が子どもにお金の価値と働くことの尊さを教えてくれます。 そして自分で貯めたお金で買ったおもちゃはきっと今まで以上に大切にするはずです。
◆カオナシが本当に欲しかったもの

物語の中盤に登場する謎の存在カオナシ。 彼は砂金をばらまき、湯屋の従業員たちを歓喜させ、そして、大量に料理を作らせて、風呂に入りながら暴飲暴食。千尋が欲しがらないことに怒り狂い、従業員たちを次々と飲み込んで巨大化していきます。 彼は際限のない「物欲」の化身のようです。
しかし、彼が本当に欲しかったのは豪華な食事や金ではありませんでした。 彼が本当に欲しかったのは「千尋の関心」であり「誰かと繋がりたい」という切実な愛情への渇望だったのです。

子どもが過剰にものを欲しがる時。 その背景にはカオナシのような心の「寂しさ」や「不安」が隠れていることがあります。
親の関心を引きたい。友達の輪に入りたい。 その満たされない心の隙間を「もの」で埋めようとしているのかもしれません。
「あれ買って!」という言葉の裏にある子どもの本当の「心の声」に耳を澄ませてみませんか。 本当に必要なのは新しいおもちゃではなく親子で向き合う温かい時間なのかもしれません。
『千と千尋の神隠し』は私たちに教えてくれます。 ものを大切にするとは物欲をなくすことではない。 自分の「欲」と正しく向き合いそれをコントロールし、そしてものだけでは埋められない心の豊かさを知ることなのだと。
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