主人公 《詩》

「主人公」
形の無いものが どれだけ
ロマンチックなのかを
想像してごらん
時として誰も望まない事が起きる
誰かがそれを望んだ訳ではない
今まで丁寧に積み上げて
来たもの全てが
一瞬にして崩れ去ってしまう
誰のせいでもない
自己の手に余る傷が発生し
その傷はとうてい受け入れられる
様なものではない
その苦しさから
逃げようとしてもがく
長い時間だけが過ぎていく
時間だけに身を任せて一日が終わる
傷を癒す事が出来るのは時間だけだ
ある意味でそれは
死を受け入れる事に似ている
ある情景を想像する事だ
今はまだ形すらないものを
季節はきっと春か夏の始め
家々の軒先に小さな花が
咲き乱れている
僕等は空を飛ぶ鳥の声を聴いた
太陽の光を受けて反射する
海の波を見てその音を聴いた
暖かい風が穏やかに吹いている
美しくて静かな時間に包まれて
君の顔を見つめている
自閉症の少年だった僕と
片足を失くした
バレーダンサーの君
僕等が同じ夢を見て想像する時
ふたりは小説の主人公になる
信じられないほど甘美な夢が
現実になる事を見る
愛してると君が言ってくれるなら
僕はもっと強くなれるだろう
未来を願い 幸せを願う
君の為に 僕の為に

