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月のない夜に 《詩》

「月のない夜に」

朝が変わる 都会のべたついた淀み

灯台の様な孤独が
星になる自由を求めていた

ドアが俺の前で音もなく開く

天使の翼の様に滑らかな偽善

テーブルの上をとんとんと
叩き続ける女の指先

そして女は長い袖を引き上げて
腕時計に目をやった

率直に話せない種類の物事が
時間を刻む
 

俺は女が脚を組み替えた時から

隣に座り腰骨を抱き寄せる
機会を狙っていた

握っているグラスからウィスキーを
こぼさない様に

残っている正気を必死で集めた

精神異常の文学で本棚を
いっぱいにした隔離された空間

太陽に背き間違いを犯した月と共に
消えていく幾つもの嘘

銀色の渦の彼方では

鏡の中に血に似た紅い花が咲いる

深い夜に永遠が導く事を願った

俺の仮説と女の仮説が交差していく

まだ少し酔っていた

心地よい酔いだ

良い酒と良い女はこう言う残り方を
すると言う

お手本の様な酔い方だった

そう 女の唇に唇を重ねた時

それは半開きになって熱い吐息が
俺の身体の中に送り込まれた

女は目を閉じたままだった

知らない男への保留のない嫉妬と
柔らかな混沌

彼奴と違う指先で女に触れた 


揺れ動く駆け引き 癖の違う愛撫

探り当てた場所 確かに感じていた

女の瞳の中に夜を見た 
甘美な幻が呼んでいる

風は通り過ぎた後だった

夜空に月はあるはずもない

そして違う朝が訪れる

Photo : SA

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