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赤紙 《詩》

「赤紙」

果たされる事のない夢の気配に
景色がぼやけている

僕等は殺し合う為に
生まれて来た訳じゃない

僕等は死ぬ為に
生まれて来た訳じゃない

不確かなる大義の為に
確かな血が流されている

国家は自らの正義に対して
然るべき確信を持ち戦争へ向かう

その揺るがざる根拠が大義である


僕等にとっては
不確かなものでしかない

奴等の言う大義の先に
幸せな出口があるとは思えなかった

徴兵通知は僕の手の中にある

叫ぶだけの反戦反核が
風の様に通り過ぎる

だけど叫ばない訳にはいかない

赤紙は直ぐ傍まで来ている


人は何度顔を背けるのだろう
見ないふりをして

白鳩はどれだけ海を渡れば
砂の上で休む事が出来るのだろう

僕等は殺し合う為に
生まれて来た訳じゃない

僕等は死ぬ為に
生まれて来た訳じゃない

僕等の叫ぶ声が風の様に通り過ぎ
街の雑踏に掻き消されていく

黙した視線の晩夏の太陽が
絶対的な沈黙の中で僕を見ていた

さよならを言ったのかどうか
僕は覚えてはいない

僕は戦争に行ったのだ


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