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ダウン症候群の成人期医療 ー 主な合併症と未解明な課題ー

ダウン症候群の成人期の医療について、2025年に、医師向けの学術集会の講演に使用したスライドです。ダウン症候群の医療に関わる方への参考になればと思い、ここに公開しました。一般の方にも理解していただける内容だと思います。今後も内容は追加していきます。(なお、心苦しいのですが有料化させていただきました。理由の一つは、「ダウン症、健康管理」の検索ワードで本稿がヒットしないためです。 )


ダウン症候群の方の平均寿命は、ここ数十年で大きく改善しています。アメリカやオーストラリアでは、中央値・平均値ともに60歳前後という報告があります。これは、先天性心疾患への外科的治療や、医療全体の質の向上が大きく寄与していると考えられます。
少し古い研究ですが、デンマークの全国データを用いたコホート研究では、登録されたダウン症候群の方のうち、約3分の1が60歳まで生存していたと報告されています。特にモザイク型では、死亡リスクが低いことも明らかになりました。
一方で、ダウン症候群の方々の死因に関する研究は限られており、てんかんや向精神薬など、個別のリスク要因の分析にとどまっています。終末期に医療の関与が少ないことも、死因の把握を難しくしている要因かもしれません。
今日お話する内容の一覧です


ダウン症候群では、全年齢において甲状腺機能異常の頻度が高く、成人期には約35%に何らかの異常が認められます。特に自己抗体の陽性率が高く、甲状腺ホルモンに加えて、抗TPO抗体や抗TG抗体の測定が推奨されています。欧州のガイドラインでは、生涯にわたって2年に1回のスクリーニングが勧められています。
なぜダウン症候群の方に甲状腺自己抗体が高頻度でみられるのかは、現時点では明らかになっていません。21番染色体上には免疫に関わる複数の遺伝子が存在しており、それらの過剰発現、特にAIREが関与している可能性が指摘されています。
高尿酸血症も、ダウン症候群の成人で多く認められ、報告によれば約28%にみられます。 右のグラフは、今年愛知医大・愛知学院大学の鬼頭敏幸先生が発表された研究成果で、尿酸値は年齢とともに上昇し、全年齢で同年齢の平均値よりも高いことが示されています。 思春期以降に顕在化し、10代で痛風を発症する例もあります。原因としては、尿酸排泄の低下、プリン代謝の亢進に加えて、エピジェネティックな因子の関与も指摘されていますが、まだ明確な結論には至っていません。
思春期から成人期にかけて、言葉を発しなくなる、生活動作が著しく低下するなどの急激な退行様の変化がみられることがあります。 日本では1980年代から、主に児童精神科医や教育関係者からこのような現象が報告されていました。報告では、発症年齢は10歳から30歳代と幅広く、経時的に回復する人もいれば、そうでない人も少なからず存在します。発症の背景や特性についても、さまざまな検討が行われています。
2000年代には、厚生労働省の研究としてこの病態が取り上げられ、徐々に医療関係者にも認識されるようになりました。複数の名称や分類が提唱されています。

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