好き化粧(#毎週ショートショートnote裏のお題)
僕はいつも教室の隅にいる。
好きな子はいる。
でも僕は、いないみたいな扱いだ。
目も合わない。
話しかけても「うん」で終わる。
存在感、ほぼ透明。
ある日、ネットで見つけた言葉。
「好き化粧」
意中の人に好かれるためのメイク。
女子向けの記事だったけど、ふと思った。
男がやったらダメって誰が決めた?
放課後、ドラッグストアで震える手。
ファンデ、アイライン、涙袋、リップにグロス。
YouTube見ながら格闘二時間。
鏡の前に現れたのは、知らない誰か。
「え、やばっ!」
軽いノリでSNSに上げた。
バズった。
「神」
「顔面優勝」
「次のイベント出ません?」
気づけばコスプレイベントに呼ばれ、
スポットライトを浴び、
写真撮影の列ができる。
もてるもてる。
握手、サイン、DMの嵐。
でも。
学校帰り、制服姿の彼女を見つけた。
勇気を出して声をかける。
「どう? ちょっと変わったでしょ?」
彼女は一瞬、僕を見て、眉をひそめた。
そして、スマホをいじりながら言った。
「え、ムリ。てかキモ。そういうのガチで無理なんだけど」
その瞬間、スポットライトは消えた。
好き化粧。
好かれたい一心で塗り重ねた僕。
世間には受け入れられたけど、
たった一人には、届かなかった。
文字数:488文字
