新科目「歴史総合」をよむ 3-1-7. 地域連携の拡大
■西ヨーロッパの域内協力とヨーロッパ共同体の発足
サブ・クエスチョン
ヨーロッパは、なぜ地域連携を強めていったのだろうか?
第二次世界大戦後の西欧諸国は、第二次世界大戦に対する反省から域内協力を進めていった。
ヨーロッパの統合構想にはいくつかの源流がある。
なかでもフランス企画院長官であったジャン・モネが起草したシューマン・プランが重要だ。
モネは第二次世界大戦後に、フランス復興計画を立てた立案者でもある。
彼は、長年のフランスとドイツの対立を終わらせるためには「ヨーロッパ連邦」発足が必要で、そのためにまずECSC(ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体、1952年発足)を発足させ、初代委員長に就任した。ECSCは石炭と鉄鋼の資源管理を、国の主権の枠外に置くものであり、のちの欧州統合の基礎とされる。
サブ・サブ・クエスチョン
当時のフランスは、なぜヨーロッパ統合に積極的だったのだろうか?
資料 西ドイツ再軍備とヨーロッパ統合のはじまり
冷戦の構図がもっとも典型的にあらわれたヨーロッパは、アメリカにとってソ連と対決する主戦場だった。NATOはそのための最も重要な軍事同盟であった。そうしたなかで最大の問題だったのが、独立したばかりの西ドイツの再軍備である。東西ドイツの分離独立によって、ドイツは「冷戦」の最前線となった。アメリカとしては、西ドイツに自前の軍隊を持たせて東ドイツと対峙させなければならない。全世界に軍事力を展開するコストがかかりすぎているアメリカにとって、これは喫緊の課題だった。
西ドイツのアデナウアー首相は再軍備に前向きだった。しかし真っ向から反対したのは、過去数十年間にわたってドイツ軍の侵略を受けてきたフランスである。ナチ・ドイツの支配からまだ間がないなかでの再軍備は、国民感情として納得がいかなかった。
しかしアメリカ意向は無視できない。そこでフランスが考えたのが、西ドイツを含めたヨーロッパ統合を推進することで、西ドイツの軍事力をとりこむことであった。(中略)
そしてECSCの設立は、西ドイツの再軍備とセットであった。1954年、フランスなど諸国は西ドイツの主権回復と再軍備を認め、翌年のパリ協定によってこれらが実現すると同時に、西ドイツはNATOに加盟した。ヨーロッパ統合は冷戦の構図のもとでスタートしたのである。
一方で、ECSCは、冷戦の構図のもとで押しとおされた西ドイツ再軍備の脅威を、西ヨーロッパ自身の手で無害化する意味あいを持っていた。西ヨーロッパは基本的にアメリカに従順であったが、自立性は失わなかった。
しかしイギリスは独自の動きをすすめ、1960年にはヨーロッパ自由貿易連合(EFTA)を結成して対抗した。1961年にはEECへの加盟を申請するも、フランスのド・ゴール政権の反対によって加盟交渉は阻まれた。一方、1963年にフランスと西ドイツはエリゼ条約を締結し、和解と交流の拡大をとりきめた。
イギリスがECに加盟できたのは、ド・ゴールの退陣後である1973年のことであった。
■アジアにおける地域連携
サブ・クエスチョン
アジアは、なぜ地域連携を強めていったのだろうか?
第二次世界大戦後の独立したアジア諸国でも、地域的な連携協力をすすめる動きがあった。
東南アジアでは、イギリスが天然ゴムや錫といった一次産品を確保しようとしたため、マレー半島からボルネオ島にかけての英領マラヤの独立は遅れた。1963年にようやくマラヤ連邦(1957年独立)とシンガポール、ボルネオ島北部のサバ、サラワクが統合して連邦制のマレーシアが成立した。
しかし、マレーシアが、マレー人優遇政策をとったことに、シンガポールが反発し、1965年に分離独立した。シンガポールは華僑・華人による国内外における活動やイギリスの植民地支配の下で発達した港湾インフラや金融ネットワークや、英語教育を主軸に据えた学校制度を生かして、経済的な発展を遂げていくこととなる。
インドネシアでは、マレーシアと対立したスカルノ政権が、中国やソ連に接近。1965年に軍事クーデタがおきてスカルノ政権が崩壊し、軍人スハルトを中心とする軍事政権が成立して共産党が弾圧された背景には、スカルノの中国・ソ連への接近をきらうアメリカの工作があったという説もある。
ベトナム戦争を背景として、アメリカ合衆国のジョンソン大統領は東南アジア諸国に経済支援を表明し、日本も技術援助や借款などを通じた経済協力を推進した。1965年に北ベトナムに対する北爆がはじまった2年後の1967年には、反共同盟としてインドネシア、マレーシア、シンガポール、フィリピン、タイの5か国が東南アジア諸国連合(ASEAN)を結成した。
ASEANはしかし、1970年代以降には、東南アジア地域の政治・経済の連携や自立化を目指す組織づくりを志向するようになっていく。
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