同じ英文に、違う入口から何度も戻る――「再訪対話」とは何か
私は最近、ChatGPTとの新しい英語の学び方を試しています。
「再訪対話」と呼んでいるものです。
一つの重要英文を決め、その英文を中心に、ChatGPTと何度も話し合います。
しかし、同じ英文をただ繰り返す暗唱ではありません。
英文は同じでも、戻る道を毎回変えるのです。
中心文は動かさない
例えば、次の英文を選びます。
Silence can be a form of care.
沈黙が、気遣いの一つの形になることもある。
一回の対話中、この中心文は言い換えません。
ChatGPTは、毎回この英文へ戻りながら、質問を一つだけします。
「どんな沈黙なら、気遣いになると思いますか」
「逆に、沈黙が相手を傷つけることはありますか」
「この文の `can` を、今はどう受け取りますか」
「なぜ `kind` ではなく、`form` なのでしょう」
私は、日本語、英語、日英混在のどれかで答えます。
英語で答えられなくても構いません。
大切なのは、自分が実際に感じたことや考えたことを答えることです。
一度に一つだけ見る
再訪するたびに、ChatGPTは英文の一か所だけを短く分析します。
ある時は `Silence`。
ある時は `can be`。
別の時は `a form of care`。
一度に文全体を説明しません。
一つの語を、自分の経験や疑問と照らし合わせ、そのあとで再び全文へ戻ります。
Silence can be a form of care.
最初は「沈黙も優しさになる」という、きれいな言葉に見えるかもしれません。
しかし対話を続けると、
「黙っているだけでは、気遣いにならない」
「相手が話せる時間を作る沈黙なら、気遣いになることがある」
「だから `will` ではなく `can` なのかもしれない」
と、意味が具体的になっていきます。
英文は変わっていません。
変わったのは、その英文から見えるものです。
普通の英会話や反復との違い
普通の英会話では、話題が進むにつれて、使う英文も変わっていきます。
暗唱では、同じ英文を同じ目的で繰り返します。
再訪対話では、中心文は変えませんが、毎回違うところから戻ります。
経験から戻る。
感情から戻る。
疑いから戻る。
語の違いから戻る。
文法から戻る。
生活の中で実際に試したことから戻る。
そうして、一つの英文へ入る道を増やしていきます。
入口だけでなく、出口も増やす
英文へ戻る入口が増えるだけではありません。
自分の言葉で説明する。
中心文を声に出す。
その英文を手掛かりに、何かを決める。
生活の中で試し、その経験を持ってまた戻る。
こうして、英文から外へ出ていく道も増えていきます。
数回の対話ごとに、ChatGPTが中心文を先に見せず、日本語の意味や話し合った場面だけを示します。
そこで、自分から英文を言ってみます。
言えなくても、失敗ではありません。
すぐ原文を見て、また戻ります。
忘れないことより、忘れても戻れることを大切にするからです。
ChatGPTに理解を作ってもらうのではない
再訪対話では、役割を分けます。
ChatGPTは、質問を作り、英文を分析し、別の見方を示します。
私は、自分の経験を思い出し、感じたことを話し、どう受け取るかを判断します。
経験と判断は、自分が引き受ける。
問いと英語の分析には、助けを借りる。
ChatGPTが、私の理解を代わりに作るわけではありません。
問いを入口にして、私自身が英文へ戻るのです。
再訪対話の基本形
流れは、とても単純です。
中心文を読む
↓
一つの質問に答える
↓
英文の一か所を見る
↓
自分の経験や思いと照らし合わせる
↓
元の英文へ戻る
これを、違う入口から繰り返します。
理解が深まれば、必ず英語が自由に出るようになる、とまではまだ言えません。
今は実験の途中です。
それでも、一つの英文が、自分の経験、感情、疑問、語の意味と結びつけば、単なる暗記より戻りやすくなるのではないか。
そして、何度も自分の口で言ううちに、その英文が自分からも出やすくなるのではないか。
それを確かめるのが、再訪対話です。
皆さんにも、何度も戻って話し合ってみたい一文はあるでしょうか。
