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炭素循環農法(たんじゅん農法)とは


炭素循環農法(たんじゅん農法)は、「作物は肥料で育つのではなく、微生物の働きで育つ」という考え方を中心に据えた農法です。💡

正式な名前を分解すると、「炭素(たんそ)が循環する農法」ということになります。

発音しにくいので、「たんじゅん農法」という愛称で親しまれています。

ポイントをひとことでいうと、こうなります。

  • 肥料の代わりに、木材チップや落ち葉などの「炭素資材」を土に入れる

  • 土の中の微生物——とくに糸状菌(しじょうきん)——がその炭素を分解する

  • 分解の過程で野菜が必要な栄養がつくられ、そのまま根から吸収される

農薬も肥料も使わない、シンプルな仕組みです。

でも、その背景には「土と生き物の関係性」についての深い理解があります。

この農法は、ウィキペディアによると「生態ピラミッドにおける植物と菌類(カビやキノコ)の共存共栄関係を利用した農法」と説明されています。

難しく聞こえますが、つまりは植物とキノコ菌が助け合って育つ仕組みを活かしているということです。

(出典:フリー百科事典『ウィキペディア』「炭素循環農法」)
  

「菌ちゃん農法」と「炭素循環農法」って何が違うの?

💡 結論:ざっくり言うと…

実は、この2つの農法は**「根っこの思想はかなり近い」**んです🤝
菌ちゃん農法の吉田俊道先生の言葉を借りるなら、

『炭素循環農法にマルチをかけたもの』

が、菌ちゃん農法という位置づけになります💡
では、具体的に何が違うのか?
3つの違いを見ていきましょう!👇


🌱 違い①:設計思想(原理か、実践マニュアルか)

【炭素循環農法】= 大きな原理・考え方 🧠
肥料や堆肥を一切入れず、「高炭素資材」と「糸状菌(しじょうきん)」などの微生物の循環で土を育てる、という“原理”を重視しています。

【菌ちゃん農法】= 初心者向けの実践マニュアル 📖
その原理をベースにしつつ、「やり方をできるだけ数字で具体化」しているのが特徴! 「初心者でも失敗せずに実行できる」ことを目指した、かなり実践的なノウハウです✨


⛰ 違い②:畝(うね)の作り方

【炭素循環農法】 糸状菌を重視しますが、畝の高さやマルチの有無について、ガチガチの指定があるわけではありません。

【菌ちゃん農法】= 超高畝+マルチの徹底! ⛺️ ここが一番の特徴です!現代農業の紹介でも、以下の手順が強く推奨されています。

  • エサを乗せる前で**「45cm以上」の高畝**を作る⛰

  • 高炭素の粗大有機物をたっぷり入れる🪵

  • **「マルチの屋根」**を張る☂️

  • そのまま3〜4ヶ月しっかり養生する⏳ これらをセットにした、非常に具体的な手順が示されています。


☔️ 違い③:日本の気候への適応

【炭素循環農法】 世界中どこでも通じる、より普遍的・広義の発想です🌍

【菌ちゃん農法】= 日本の「多雨環境」に特化 日本の気候はとにかく雨が多いですよね☔️

実は、土を豊かにしてくれる「糸状菌」は大雨で水浸しになると弱ってしまいます…。

そこで、**「高畝とマルチで糸状菌を大雨から守る!」**という工夫を取り入れたのが菌ちゃん農法なんです💪


実用上の見分け方

最後に、2つの違いをシンプルにまとめます!

  • 🌿 炭素循環農法 高炭素資材と糸状菌を軸にした、より原理的・広義の考え方。

  • 👩‍🌾 菌ちゃん農法 その発想を「高畝・マルチ・養生期間」まで落とし込んだ、再現しやすい実践法。

 

ブラジルから始まった物語

炭素循環農法の歴史は、ブラジル・サンパウロにさかのぼります。🌎

1990年頃、ブラジルで野菜農家が、山を見ながらある疑問を持ちました。

「山の木は、誰も水も肥料もやらないのに、なぜあんなに大きく育つんだろう?」

その疑問をもとに、毎日のように山に入り、土を掘ったり、においをかいだりして徹底的に観察した結果、ひとつの結論にたどりつきます。

「畑では最初にキノコ菌が働き、土を作っている。

キノコ菌を働かせることができれば、他の微生物は勝手に働く」

この発見をもとに、近隣でキノコ栽培を営んでいた林幸美(はやし・ゆきみ)さんが、既存の知識と組み合わせて理論化し、一般の農家でも再現できる農法として体系化しました。

2001年には「炭素循環農法 百姓モドキの有機農法講座」というウェブサイトを開設。

そこから、この農法はじわじわと日本全国に広がっていきました。

農業雑誌『現代農業』でも複数回にわたって紹介され、いまでは家庭菜園から大規模農業まで、多くの実践者がいます。🌾

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「発酵型の土」と「腐敗型の土」の違い

炭素循環農法を理解するうえで、かかせないキーワードがあります。

それが「発酵型」と「腐敗型」の違いです。

ちょっとイメージしてみてください。

冷蔵庫に忘れた野菜が腐るとき、なんともいえない不快な臭いがしますよね。

あれが「腐敗」です。

いっぽう、みそや納豆が発酵するときは、独特の香りはあっても、体にいいものができあがります。

あれが「発酵」です。

土のなかでも、同じことが起きています。

  • 化学肥料や動物性堆肥を多く入れると、窒素が過剰になり、腐敗型の微生物が増える

  • 腐敗型の畑では、土が固くなり、虫がつきやすく、水はけも悪くなる

  • 炭素資材を入れて発酵型の環境をつくると、土がふかふかになり、虫もよりつかない

炭素循環農法の提唱者は、こんな言葉を残しています。

「虫がつく作物は虫のエサで、人間の食べものではない。虫は腐敗を好む」

農薬を使わなくても虫がつかなくなる理由が、ここにあります。

腐敗した土をなくせば、虫が集まるものがなくなる。

だから農薬が必要なくなる——というわけです。

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糸状菌(しじょうきん)がカギを握る

炭素循環農法のなかで、もっとも重要な働きをするのが糸状菌(しじょうきん)です。🔬

糸状菌とは、キノコやカビの仲間のこと。

名前からイメージするよりずっと、農業にとって大切な存在です。

通常の畑では、堆肥などを分解するバクテリア(細菌)が主役になっています。

でも炭素循環農法では、それより「上等な」微生物である糸状菌を主役にします。

  • 木材チップや落ち葉などの炭素資材を分解するのは、糸状菌

  • 糸状菌は窒素を必要としないので、窒素飢餓が起こらない

  • 糸状菌が分解した中間物質を、バクテリア(小売商)がさらに分解し、植物の栄養になる

  • 糸状菌が分泌する粘性物質が、土を「団粒化」させてふかふかにする

糸状菌が「炭素の卸商」として大きな有機物を中間まで分解し、それをバクテリアが「小売商」として植物に届けやすい形まで仕上げる。

農家の仕事は、この「卸商」である糸状菌に炭素のエサを供給し続けること——それだけでいいんです。🌿


炭素資材ってなに?何を使えばいい?

炭素循環農法で土に投入する「炭素資材」は、炭素を多く含む有機物のことです。🍂

大切なのは、C/N比(炭素量と窒素量の比率)が高いもの。

だいたい40以上が目安とされています。

  • 木材チップ・せん定した枝葉(C/N比が高く、使いやすい)

  • 落ち葉・枯れ草(身近に手に入る)

  • 籾殻(もみがら)(C/N比は約80と高め)

  • 竹チップ(C/N比は約280と非常に高い)

  • キノコの廃菌床(糸状菌がすでに豊富で、おすすめ)

(出典:現代農業 2016年10月号)

なかでもキノコの廃菌床(はいきんしょう)は特におすすめです。

キノコを栽培したあとのおがくずのことで、すでに糸状菌が豊富に含まれています。

白い菌糸が目で見えるので、初心者でも菌の活動を確認しやすいのがメリットです。

一方で、炭素率の低いものは避けましょう。

  • 鶏糞(C/N比 約5)→ 低すぎて腐敗型になりやすい

  • 牛糞(C/N比 約15)→ こちらも窒素が多め

これらは炭素循環農法では基本的に使いません。

肥料の代わりに炭素資材を入れる——これが、この農法の基本中の基本です。
  

実践のステップ:どうやってやるの?

では、実際にどうすれば炭素循環農法を始められるでしょうか?📋

基本的な手順をご紹介します。

  • まず畑の排水性を確認する。

水はけが悪い場合は、深さ80cm以上の心土破砕(しんどはさい)を行うか、畝(うね)を高くして対応する

  • 炭素資材(木材チップ・落ち葉・廃菌床など)を表面に敷き、5〜10cm程度浅く土とかき混ぜる

  • 2カ月おきくらいに炭素資材を補給し続ける

  • 数カ月後、土がふかふかになってきたら、発酵型の土に変わってきたサイン🎉

重要なのは、深く耕しすぎないこと。

糸状菌が作ったネットワーク(菌糸のつながり)を壊してしまうからです。

浅くかき混ぜる程度が、ちょうどいいとされています。

プランターや家庭菜園でも取り組めます。

無肥料の培養土をベースに、落ち葉や廃菌床をまぜると、小さなスケールでたんじゅん農法を体験できますよ。
  

農家さんの声:土が変わると野菜が変わる

実際に炭素循環農法に取り組んだ農家さんたちは、どんな変化を感じているでしょうか?🗣️

静岡県掛川市で実践した城 雄二(しろ・ゆうじ)さんは、こんな体験を語っています。

  • 粘土質の畑に炭素資材を投入してから4カ月で、土がほかほかに変わった

  • 春に播いたハクサイにアオムシがつかず、冬よりも立派に育った

  • エンドウを比較実験したら、有機肥料のほうはハモグリ虫の被害があったが、たんじゅん農法では元気に収穫できた

茨城県笠間市でたんじゅん農法でイチゴや葉物野菜を育てているKamosの横山さんは、こんなふうに表現しています。

「野菜を作るのではなく、微生物のお世話をする感覚。農薬で微生物を殺すのではなく、生かす仕組みを作ること」

また、本村博之さんという実践者の畑を訪れた城さんは、驚きの光景を目にします。

「畑に土が見えない。20cmほど掘らないと土が出てこない。棒が1mも深くささる」

4年間、無肥料で生の炭素資材を入れ続けた結果、そんなふかふかの土になっていたそうです。

床を掘ると糸状菌がいっぱい。

虫もつかず、食味も抜群だったといいます。😊


メリットをまとめてみると

炭素循環農法を実践することで、どんなメリットが得られるでしょうか?✨

  • 🌿 肥料代がかからなくなる(ランニングコストを大幅に削減できる)

  • 🐛 虫がつきにくくなり、農薬が必要なくなる

  • 🔄 連作障害が起きにくくなる(同じ作物を続けて育てられる)

  • 💧 土の団粒化が進み、水はけと保水性がともに向上する

  • 🍅 食味が向上する(硝酸態窒素が少なく、野菜本来の甘みが出る)

  • 📈 土壌が整えば、慣行農法の2倍以上の収量も期待できる

  • 🌍 土壌の炭素量が増え、温暖化対策にもつながる

特に注目したいのが収量についてのデータです。

ブラジル・サンパウロ州の炭素循環農法を実践する野菜圃場の単収は、同じ作付け構成(レタス・キャベツ主体)で比べると、ブラジル平均の4.4倍、日本全国平均と比較しても2.4倍という記録があります。


注意点:うまくいかないこともある

炭素循環農法には多くの可能性がありますが、正直に伝えると、すべての人が最初からうまくいくわけではありません。🤔

  • 慣行農法から切り替えると、土が安定するまでに2〜3年かかることが多い

  • 最初の1〜2年は収量が落ちることもある(土の微生物バランスが整うまでの移行期間)

  • 水はけが悪い畑では、炭素資材が腐敗してしまう場合がある

  • 糸状菌は過湿(水浸し)に弱いため、水田(稲作)には向いていない

  • 元の畑の状態によって、効果の出方に差がある

「炭素資材を入れるだけ!」と書くと簡単そうに聞こえますが、実際には土の状態を観察しながら、少しずつ調整していく必要があります。

やることはシンプルでも、「なぜこうなるのか」を理解しながら続けることが、この農法の醍醐味ともいえます。

日々の変化を観察するのが、だんだん楽しくなってくるんです🌱

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まとめ:土を生かすという選択

🌾 炭素循環農法(たんじゅん農法)は、肥料や農薬に頼らず、土の中の微生物——特に糸状菌——を活かして作物を育てる農法です。

木材チップや落ち葉などの炭素資材を土に投入し、微生物が自然に循環する環境をつくることで、野菜に必要な栄養が土の中で生み出されていきます。

転換初期は2〜3年の移行期間が必要なこともあり、すぐに結果が出るわけではありません。

でも、むずかしい技術や高価な資材がなくても始められる。

自然とともにある農のかたちを探している方にとって、炭素循環農法はとても魅力的な選択肢のひとつです。🌱


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