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#73 『意味構築学』から一年── AIの進化が証明し始めたこと

半月ほど、noteの記事の投稿を休んでいた。

その理由は、新しい本の執筆に集中していたからである。

昨年出版した『意味構築学』の続編となる新刊であり、現在、7月中の出版を目標に最終的な推敲を進めている。

振り返れば、この一年間、AIは指数関数的と言ってよいほど急速な進化を遂げてきた。大規模言語モデルはさらに高性能となり、AIエージェントが実用段階へ入り、企業ではトークンコストやデータセンターの電力問題が現実の経営課題として語られるようになった。AIによるサイバー攻撃、評価やガバナンス、ソブリンAI、防衛、創薬、地方創生など、AIは社会のあらゆる分野へ浸透し始めている。

私自身も、この一年間、『意味構築学』を出発点として十数冊の書籍を執筆し、七十数本のnote論考を書き続けてきた。それらは単なる執筆活動ではない。日々変化するAI社会を「意味」という視点から見つめ、その変化を記録し、考察し続けた一年でもあった。

一つ一つの記事は、それぞれ異なるテーマを扱っている。しかし、書き終えて振り返るたびに、別々に見えていた出来事が少しずつ一本の線で結ばれていく感覚があった。

AIエージェントの課題も、トークンコストの問題も、データセンターの電力需要も、AI評価も、サイバーセキュリティも、一見すると別々の問題である。しかし、その奥には共通する構造が存在しているように思えた。

そのことを考え続ける中で、私自身も少しずつ変わっていった。

『意味構築学』を書いた当時は、「意味」という視点からAI社会を捉え直すことが必要ではないかという問題提起であった。しかし、この一年間の出来事を見続ける中で、それは単なる問題提起ではなく、AI社会そのものが避けて通れない課題になりつつあることを実感するようになったのである。

もっとも、「意味」という考え方は、AIを研究するようになって初めて思い付いたものではない。

私は以前から、「良いことにも、悪いことにも、何事にも意味がある」と考えてきた。

人生には思いどおりにならない出来事が数多くある。しかし、その出来事を単なる失敗や不運として終わらせるのか、それともそこから意味を見いだし、次へ生かしていくのかによって、その後の人生は大きく変わる。
私にとって「意味」とは、辞書に書かれている言葉の説明ではない。経験を価値へ変え、未来へつなぐ力であり、人間が生きる上で最も大切なものの一つである。
だからAIと向き合ったときにも、私が最初に抱いた問いは、「AIはどこまで賢くなるのか」ではなかった。

「人間とAIの本質的な違いは何なのか。」
その問いを考え続けた先にあったのが、「意味」という視点である。

そして、この一年間、AI社会を見続ける中で、その問いはさらに深まっていった。論考を書き重ねるたびに、新しい概念が少しずつ姿を現してきたのである。

意味摩擦、意味インターロック、意味雑音――。

これらは最初から用意していた用語ではない。AI社会で起こる様々な出来事を考察し、人間とAIの違いを問い続ける中で、必要に迫られるように生まれてきた概念である。

振り返れば、この一年間は、新しい言葉を増やした一年ではなかった。

Fig.73 『意味構築学』から『意味構築数理学』へ
── この一年間の思索と研究の流れ ──

Fig.73は、『意味構築学』出版後の一年間を振り返り、新刊『意味構築数理学(意味構築学 数理編)』へ至る思考の流れを整理したものである。
この一年間、AIは急速な進化を続ける一方で、AIエージェント、トークンコスト、データセンター、AI評価、ガバナンスなど、従来にはなかった新たな課題が次々と顕在化した。私はそれらを個別の問題としてではなく、「人間とAIの本質的な違い」という視点から考察し続けた。
その結果、意味摩擦、意味インターロック、意味雑音など、新たな概念が自然に生まれ、それらが互いに関係し合う一つの体系を構成していることが見えてきた。
『意味構築数理学』は、その一年間の思索と実証の積み重ねを、工学的・数理的な視点から体系化しようとするものである。

「意味」を理解するために必要な概念が、一つまた一つと形になっていった一年だったのである。

そして、それらを個別に説明するだけでは十分ではないことにも気付いた。それぞれの概念は独立して存在しているのではなく、互いに関係し合い、一つの体系を構成している。その構造を工学的、そして数理的に整理する必要があると考えるようになった。

こうして生まれたのが、『意味構築数理学(意味構築学 数理編)』という構想である。

この本は、最初から書こうと決めていた本ではない。

AI社会を見続け、考え続け、書き続けた一年間の積み重ねが、自然に導いた一冊なのである。

次回からは、この『意味構築数理学』で提示する考え方について、少しずつ紹介していきたいと思う。


参考文献・参考資料

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