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「性」も「血」も超えた、真の人間関係を考える【映画「ハッシュ!」の感想】

映画「ハッシュ! 」の4Kリマスター版を見てきました。ずっと見たかった映画。


※漫画「おひとりさまホテル」で紹介されていた映画でずっと気になっていたもの。この漫画も面白いからみんなみてちょ。

【あらすじ】

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ペットショップで働く直也は、自由に見える毎日の中でどこか満たされなさを感じてる。一方、土木研究所に勤める勝裕は、自分がゲイであることを周囲に隠しながら生きており、気持ちをうまく表に出せずにいる。そんな2人が出会い恋人として関係を深めていく中で、歯科技工士として働く朝子が現れる。精神も病み、ゆきずりでセックスを繰り返し、人とのつながりに半ばあきらめていた中で子宮に両性の筋層内筋腫がみつかった朝子はひょんなことから出会った勝裕に、ゲイであることを知りながら「子どもを産みたいから精子を提供してほしい」と願い出る
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この映画は2001年公開で、当時はゲイも精子提供も、男女の友情も全てがセンセーショナルに映っていたはずだと思う。LGBTQの概念もほとんど理解なく、また「子どもを産みたいがセックスも結婚もしたくない」という思想も、大分うけつけ辛いものであったようにも思うし、今でも避妊治療をしている人からするとどう映るのだろうか とも考えてしまう。
もちろん作品内でも心無い言葉が多くでてくる。時代だからというのもあるのか大分容赦ない表現も多い。

この映画は誰に向けたものなのか。それは「人間関係」や「自分らしさ」に悩む人や、自分の特性ゆえに何かを諦めている人に向けたものだと感じる。まさに「ひと」と「希望」を描く映画だ。
勝裕はゲイだが「自分も親になるという選択肢は捨てる必要があるのか」と考えるようになる。朝子は人間関係がうまくないが、それでも「明日も楽しく生きれたら」と子どもを欲するようになる。直也も巻き込み、一見利害が一致する という内容のみで築かれた関係が、いつしか友人を超えて家族になっていく物語は、色々な障壁や感情、血をも超えた関係性の可能性を示唆している。

「男女」は恋愛のフィルターをかけられがちで、「家族」は血のフィルターをかけられがちだ。そもそも「恋愛」そのものが「男女」のものでカテゴライズされる前提があるのだが、いわゆるそのフィルターやカテゴライズに収まらないものは「イレギュラー」であり、一般社会では表層的な理解は得られながらも一定個人の人間関係やプライベートには線を引かれてしまう。世の中は「理解できるもの」へは心が開かれるし思考も動くが、「理解できないもの」へは拒絶が強弱はあれど発生し、思考もそっちへは靡かない。客観的に理性で理解しても究極本能は受け付けないものだ。
この映画はそもそも「ゲイカップル」と「女性」の話なので恋愛に進展はしていかないが、それでも精子提供により「家族」になろうとする物語だ。恋愛だけでなく家族の形そのものもイレギュラーだから、理解はされるはずもない。
とはいえ、友情や信頼というその型に、性差や年齢や血というのは本来組み込まれるべきものなのだろうか と、常に俺は考えることが多い。人間は動物だし性欲もあるし家族を作ることは生物としての活動としては最もであり、ツガイへの恋愛感情そのものが性欲の起点だとすると、そもそも生物学的には答えは「Yes」なのだと思う。
とはいえ、人間関係にはそんなカテゴライズの範疇だけで留めることにより産まれてしまう苦しさもあると思っている。精神が先か、肉体が先かという話にもなるのかと思っており、俺はこの部分ではかなり「精神が先」に来るタイプだ。性別や血ではなく、理性と本能は本来明確にスイッチを使い分けるべきでもあり、男女である前に、家族である前に、人間関係は精神のうえに成り立ち、かつ懐深く互いが許容されるべき世の中であることが正しいと感じている。思想も思考も否定も排他もない社会は、この概念を先に持ってこないと一生訪れないと感じている。

ハッシュ!は生きづらさや孤独を抱えた3人が、偶然の出会いをきっかけに「家族とは何か」「自分らしく生きるとは何か」を模索していく物語だ。「これが自分たちの幸せの形」だと、互いが視認しあって成り立っている。一般的には到底受け付けられない強固な関係性の美しさと正しさを、教えてくれる映画だ。これは前述したような、「真の関係性」をもっと人々が、この映画以外の形でも認められるような社会への願いとも感じられる。
「自分はわからない」「自分は違う」と、距離を置かれることを恐れずに「自分らしく生きる」という強さで今回は終わっているが、どちらかといえば俺は「自分はわからない」「自分は違う」という拒絶そのものを無くして、皆がフラットに、フェアネスに物を見れる社会になってほしいなと思う。決して生物学的な本能(を起点として訪れる感情)が優先されることなく、流動的に相手を認め、期待しながらも期待しすぎることもなく、互いの尊敬と尊重で築かれる関係性は、性別も年齢も国籍も血も、本来関係なくあるべきものだと思う。もちろん、心の弱さも強さも関係ない。社会はそれらに平等であるべきで、経済もそのうえで発展をするべきだと思っている。どうにもこうにも、理想郷すぎる話なのだが。

だが、この映画には確かにその理想郷が存在する。小さい、アパートの、たった一室にそれは存在する。これがもっとたくさん増えたら、どれだけすくわれる人もいるのだろうか。拒絶されることのない世の中が増えたらどれだけ良いだろう。そういう思いを持ちながら、是非この映画を見てほしいと思う。あと若い田辺誠一がとにかくかっこよくてエグい。

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