アンドロイド転生1773
(夢)
シュウを幻影だと認めたアオイは、モネ(エル)の導きにより、彼女を閉じ込めていた「檻」から今まさに出ようとしていた。しかし、そこに現れたのはクロエだった。
『あれ? モネがいるの? わぁ、久しぶり。5年ぶり?相変わらず綺麗だけど…ババアになったね』
『そっちは見た目も、その性格の悪さも、ちっとも変わらないみたいね』
モネとクロエの視線が激しく火花を散らす。その緊迫した空気に、アオイはただ、呼吸を忘れて立ち尽くすしかなかった。だがモネは冷静だった。ふんと不敵に笑う。
『クロエ、あなたは幻なの。だから、とっとと消えて、地獄に行って』
『はあ?幻?何言ってんの?』
モネの言葉に、クロエは小馬鹿にしたように笑った。だが、一瞬の静寂の後、その顔つきが豹変する。燃えるような瞳には、モネなど敵ではないという絶対的な自信が漲っていた。
『てめえが、地獄へ行きやがれ』
クロエの右手が眩い光に包まれる。あまりの輝きにモネは顔を顰め、目を細めた。光が霧散した跡には、禍々しいサバイバルナイフが握られていた。アオイが短い悲鳴を上げる。
『おい、モネ。本当はお前が犠牲になるはずだったんだ。 でも、てめえは遠い国で旦那とヤリまくってた。その間に、ナツは痛い思いをしたんだ。…全部、お前のせいだ』
『そうやって私に罪悪感を植え付けようとする…本当に、最低の性格ブスね』
クロエは鼻で笑い、ナイフを光にかざして弄んだ。
『じゃあ、てめえは顔ブスにしてやるよ。切り刻んでやるぜ』
『やってごらんなさいよ!私も負けるつもりはないから!』
いつの間にか、モネの手にもサバイバルナイフが現れていた。2人は即座に戦闘態勢に入る。アオイは青ざめ、声も出せずに立ち尽くしていた。
クロエが動いた瞬間に、モネも地を蹴った。しかし、クロエはモネの攻撃をひらりと回避すると、迷わずアオイへと突進した。鋭い刃が、彼女の腹部を深々と貫く。
驚愕に固まるモネ。まさか自分ではなく、無抵抗のアオイを真っ先に狙うとは。アオイは目を見開き、自分の腹部を見つめた。みるみるうちに鮮血が溢れ出し、彼女はそのまま床に崩れ落ちた。クロエの高笑いが部屋に響く。
『甘い! 甘すぎるぜ!モネ! バトルってのは相手の裏の裏まで読むもんだ。ダッセェなあ!あれ? 裏の裏は表か? ま、どうでもいいわ』
モネはアオイに飛びつき、その傷口を両手で必死に押さえた。だが、血はどくどくと溢れ続ける。モネは心を落ち着け、アオイの瞳を真っ直ぐに見つめて言い放った。
『カー、これは夢。あなたは刺されてなんていない! 刺されたと思い込んでいるだけ。しっかりして。大丈夫、血は止まる。そう信じて!』
アオイが不安げに顔を上げたその時、モネの背後にクロエが迫っていた。注意を促す暇もなく、クロエはモネの背中にナイフを突き立てる。モネの顔が苦痛に歪んだ。
彼女は振り向きざまにクロエを睨みつけたが、そのままアオイの上に崩れ落ちた。アオイの悲鳴が上がる。2人の傷口から流れるおびただしい血が、白い床を赤く染めていく。
『ざまあみろ! さぁ、早く死ねよ。いや…待て。それじゃ、つまんねぇな。じっくりとどめを刺してやる。よう!アオイ。お前の目の前でモネをぶっ殺してやるぜ』
嘲笑うクロエを前に、モネは震える手を伸ばし、アオイに囁いた。
『違う…あいつはいない…。カー、強く思って…こいつは幻…私たち、刺されてなんていないの』
モネは床に手を突き、何度も『これは夢』と自分に言い聞かせながら、再びナイフを手に立ち上がり、クロエを睨み、戦闘体制をとった。
