アンドロイド転生1582
【お断り】
ご不快なお気持ちを与える描写が御座います。ご了承下さい。
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(回想) 2049年 84年前の夏 丑三つ時
ホームにて
村を襲ったタウンの若者は、近親婚を否定し、子供に対しても容赦なかった。小さなケンジの手を何度も足で踏みつけ、息を荒げた。
「キモいお前らを、国民にしてやるって言ってんのに、有難く思うどころか拒否しやがって!生意気なんだよ!」
ケンジは悲鳴をあげる。
「おい!クソガキ、ぶっ殺してやる!」
鬼はギラギラとした瞳で睨み、ケンジの首に両手をかけて持ち上げた。小さな体は地上から離れ、宙に脚が彷徨った。鬼はギリギリとケンジの首を締め上げる。
(お父さん!お母さん!助けて…!)
何とか逃れようとケンジは暴れ、相手の手を掴み、爪を立てた。だが5歳の子供に成す術はなかった。どうする事も出来ず、酸素を求めて、やがて息が絶え絶えになる。
そこにリョウヘイが体当たりをした。鬼もろともケンジが倒れ込んだ。鬼の手が首から離れ、ケンジは大きく喘ぎ、何度も咳き込んだ。股が濡れていた。小便を漏らしたのだ。
リョウヘイは鬼に向かって叫んだ。
「息子に何をしやがる!許さんぞ!」
「うるせえ!おっさん!お前も死にやがれ」
鬼はリョウヘイに飛びつき、2人は地面を転がって殴り合いを始めた。
闇夜に激しい音が響く。そんな暴力など見るのは、ケンジは生まれて初めてだった。どうして良いか分からず、オロオロとなる。怖くて堪らず体が震えた。
「お、お父さ…ん」
やがてリョウヘイは劣勢になった。村で畑仕事をしている穏やかな男なのだ。一方、鬼は右翼派の過激な若者だ。既に村人の命を奪っていることから、暴力に狂気が孕んでいた。
「やだ…やだよぉ」
ケンジはその様子に恐れをなした。ピストルを撃ちたくても、鬼に踏まれた手が痛くて力が入らない。このままでは父親はどうなるのか。涙が溢れ、ポロポロと流れ落ちた。
「誰かぁ…助けてぇ」
鬼はリョウヘイの腹に馬乗りになると、何度も往復で顔を殴った。リョウヘイの戦意が喪失したところで、尻のポケットから銃を取り出すと、グリップで彼の横面を叩いた。
リョウヘイは血を吐き、息を荒げ、鬼に歯向かう力もない。鬼は「けっけっけ」と笑い、彼に馬乗りになったまま、ケンジを振り返った。銃口の先はケンジを向いていた。
「まずは、お前の目の前でガキを殺す」
「や、やめてくれ…頼む」
「じゃあ、お前が死ぬか?」
「息子を助けるなら死ぬ。撃て」
「よし、口を開けろ」
鬼はリョウヘイの口の中に銃口を入れた。月明かりであったが、その姿をはっきりとケンジは捉えた。カチリと音がする。ケンジは目を剥いて悲鳴をあげた。
「お父さん!やだぁ!」
ケンジはサッと立ち上がり、鬼に向かって猛突進し、背中に飛びつくと何度も両手で殴った。そのケンジの横面を鬼は銃で思い切り叩いた。小さな体は宙を舞った。
その姿にリョウヘイは激怒した。腹に馬乗りをされていたが、すかさず飛び起きて若者を思い切り殴った。2発目を殴ろうとしたが、銃声が響き、リョウヘイの体が停止した。
ケンジの目には、まるでスローモーションのように映った。父親は大きく手を上げたまま、目を見開いた。驚きで止まったようだった。額から血が吹き出し、そのまま彼は倒れた。
ケンジは呆然となり、動くことができなかった。鬼は立ち上がってヘラヘラと笑っていた。そして再び、ケンジの額に銃口を向けた時に、眩い光が辺り一面を染めた。
