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アンドロイド転生1775

(夢)

「檻の番人」であったシュウは、アオイが真実を理解したことで光となって消え去った。しかし、彼女の深いトラウマは再び敵を創り出す。それは悪の化身、クロエだった。

クロエは瞬く間にアオイとモネを制圧する。絶望が支配する中、世界を揺るがすような声が響いた。誰よりも真っ直ぐで、自信に溢れた忘れもしない声。アオイはその名を叫んだ。

『タ、タケル…!助けて…!!』

叫びに呼応し、眩い光の中から現れたのは、間違いなくタケル(オスカー)だった。アオイは床に伏したまま堪えきれず泣き出した。クロエは動じず不敵に笑う。

『おい、クソ野郎。ヒーローのつもりか』
『つもりじゃなくてヒーローそのものだけどな。勇士とか英雄らしいから』
『けっ!何様だ』

クロエは奇声を上げながら、ナイフを振り上げ、飛びかかってくる。だがタケルはいとも簡単にその攻撃をひらりと躱し、瞬時にクロエからナイフを奪い取った。

驚くクロエだが即座に気持ちを立て直すと、再びナイフを手の中で作り出し、タケルに攻撃を仕掛けてくる。しかし、あっさりとナイフを奪われる。何度繰り返しても同じだ。

焦るクロエをタケルは弾丸のような素早い拳で追い詰める。相手が女性モデルであろうが構わず何度も殴った。クロエなど赤子の手を捻ると言わんばかりの容易さで制圧していく。

タケルがクロエを圧倒できたのは、AIとしての「純粋な演算」ゆえだった。アオイの心が生んだクロエに対し、オスカーは蓄積されたデータを駆使し、最適解を選び続けていたのだ。

同じアンドロイドでも、自我が芽生えたエルには他者への「愛」という人間らしい脆弱さが宿っていた。だから、シュウにもクロエにも敵わなかった。

だが、オスカーを動かすのは「アオイとモネの救出」という条件完遂のためのアルゴリズム。執事としての忠誠を、感情ではなく圧倒的な予測能力で示したのである。

『なんだ?チョロいな』
『う、うるせえ!』

クロエはアンドロイドならではの、素早い動きで拳を繰り出すのだが、タケルはひらりひらりと余裕で躱わし、そして的確な打撃を相手に喰らわす。

狙い通りクロエを壁際へと追い詰めると、奪い取った6本のナイフを弾丸のごとく放ち、クロエの両手足と肩を拘束した。残る3本のナイフを弄び、不敵に笑う。

『次に顔、胸、腹に刺す。覚悟しろ』
『やれるならやってみろ!俺はマシンだ!ダメージなんてねえ!』
『そうだな。痛覚はないが、弱点はあるぞ』
『何言ってやがる』

そこで、タケルはあるデバイスを掲げてみせた。それはエムウェイブ(アンドロイド制御装置)だった。クロエは驚いて絶句する。タケルは笑いながら、アオイの手に預けた。

『あとはお前の好きにしろ』
『う、うん…』
『どうだ?血は止まっただろ』
『え…?あ…』

アオイは慌てて自分の腹部に手を当てた。確かに出血は止まり、痛みも霧散された。タケルの援護によって、自身の精神を支配していた恐怖を塗り替えたのだ。

今、なすべきことは一つ。この悪夢に終止符を打つことだ。クロエは獣のような奇声を上げ、肉が裂け、油が吹き出るのも厭わず強引にナイフを引き抜き、アオイへと飛びかかる。

だがその瞬間、アオイの指がエムウェイブのスイッチを押し込んだ。目に見えない電磁波がクロエを直撃する。彼は成す術なく床に崩れ落ち、4肢の自由を奪われた。

床に仰臥し、毒づきながらも身動きの取れないクロエ。アオイはタケルから手渡された3本のナイフを握りしめ、その傍らに静かにしゃがみ込んだ。

あの日。自由を奪われ、傷つくナツや炎に包まれるタケルを、ただ涙ながらに眺めるしかなかった絶望の構図。それが今、この瞬間に完全に逆転したのである。


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