見出し画像

アンドロイド転生1581

2133年8月13日 午後 (滞在3日目)
ホーム 会議室にて

村長の昔語りは続く。その中には自分の家族が犠牲になった者もいるだろう。タウンの輩たちは、老いも若きも、赤ん坊さえも手にかけて20人の命を奪ったのだ。村長は溜息をつく。

「私は気弱だったが、ケンジは大胆だった。漫画のヒーローに憧れて、行動に移すような子供だ。鬼など倒せると思ったらしい。おもちゃのピストルが勇気を後押ししたんだろう」

・・・

(回想) 2049年 84年前の夏 丑三つ時
ホームにて

両親と長男は森を抜けて祠に向かっていたが、ケンジは家の中に戻った。その頃、両親は次男がいないことに気がつき、父親のリョウヘイはケンジを助けるために、村へ引き返した。

ケンジはピストルを手に、家の裏口から外に出た。そこには鬼が立っていた。実際は右翼派の若者で、今時の服装なのだが、浴衣姿のケンジには別世界の住人に見えた。若者はニヤニヤと笑っている。

「僕ちゃ〜ん?1人?」

ケンジは鬼を見上げ、睨んだ。眉毛が上がり、口元が真一文字になり、鼻息が荒くなる。その表情には逃げないという信念と、何があっても倒すという気概があった。

またどこかで悲鳴が上がる。子供の悲痛な叫びも聞こえた。親に助けを求める声だ。そして高笑いも。その声が何重にも重なる。どうやら鬼は何匹もいるらしい。

村を襲撃された。既に何人も犠牲になった。だが、幼いケンジは憧れの正義のヒーローのように戦うと決めた。目の前の鬼に向かってピストルを突き付けた。

「お前なんか、やっつけてやる!」
「なに?くっそ生意気なガキ」
「ガキじゃない!〇〇だ!」
「へぇ?やれるもんならやってみろ」

ケンジはトリガーを引いた。銃口からは小さな球が連続で飛び出した。それが鬼の頬に当たった。弾かれたような軽い衝撃。痛くも痒くもないが、怒りが湧いた。

そもそも彼は既に何人も手にかけている。目の前にいるのは人間じゃない。「獲物」だと認識していた。鬼は足を上げると、ケンジの胸を突き飛ばした。幼い体は吹っ飛んでいく。

ケンジはゴロゴロと草むらの中に転がった。そんな暴力は生まれて初めてのことだった。鋭い葉が頬を切った。だがさっと起き上がり、どこかに飛んでいったピストルを探す。

すぐに発見し、ピストルを掴んだ。その手を鬼が思い切り踏んだ。ケンジは驚いて見上げた。手を退けたくても鬼はグイグイと踏みつける。痛みと恐怖でケンジの口はワナワナと震えた。

鬼はケンジに向かって唾を吐いた。
「おめえらはキモいんだよ。近親婚の集団だって?親父と娘や、ババアと息子がヤッてんだろ。それでおめえは産まれたんだろ」

幼いケンジには、鬼が何を言ってるか理解が出来なかった。しかし、自分に対して何か否定的なことを言っているのは分かる。無性に腹が立った。

「ち、違うもん!」
「へっ、おまえの色の薄さが言ってるじゃねえか」
「色…」

それはメラニン色素の減少のことを表していた。1000年も続いた近親婚の弊害で、彼らの髪や瞳、そして肌の色が明るかった。ケンジの髪色も金だった。

鬼は、さも不快そうな顔をして、ケンジの小さな手を何度も踏みつけた。ケンジは悲鳴をあげる。若者は弱者に対して、慈悲の心などなかった。


※メラニン色素の減少については、近親婚は関係ありません。あくまでも筆者が作り上げたものです。ご了承ください。


いいなと思ったら応援しよう!