東野圭吾スペシャルドラマ『雪煙チェイス』は、純粋に楽しめるお正月にピッタリの娯楽作でした
大好きなムロツヨシと期待の俳優・細田佳央太がW主演の東野圭吾スペシャルドラマ『雪煙チェイス』が、1月2日、3日の2夜連続で放送されました。
ずいぶん前に渡辺謙主演で、スキーを颯爽と滑りまくっていた東野圭吾のドラマを観たなぁと思って調べてみたら、それは『白銀ジャック』でした。阿部寛主演の映画『疾風ロンド』と共に、"雪山三部作"だったんですね。
今回ムロくんが演じるのは、小杉敦彦という所轄の刑事です。恒松祐里演じる部下の白井琴音とバディを組んで、細田佳央太演じる殺人の容疑をかけられた大学生の脇坂竜実を"チェイス"します。
近頃流行りの考察しながら観るサスペンスとはまったく異なるテイストで(笑)、刑事が容疑者をひたすら追いかけるという単純明快なストーリーで純粋に楽しめました。
今回ムロくんには珍しく(?)静かでシリアスな演技シーンも多かったですが、いつものコメディアンらしい演技も両方観られて、ムロファンとしては"一粒で二度とおいしい"ドラマでした。
ムロくんの"振れ幅の大きい演技"が好きなので、このドラマはその点最高でした。
もう一人の主演、細田佳央太。彼の出演作は、結構観てきていると思います。出演シーンこそ少なかったけれど、ドラマ『フェルマーの料理』で数学の天才役を演じたのがとても印象に残っています。
もっと評価されていい俳優だと感じているので、今年はさらに大きく飛躍してくれることを期待しています!
脇坂が犬の世話をするアルバイトをしていた一軒家の主・平泉成演じる福丸陣吉が、何者かに首を絞められて殺されます。
その殺人事件の容疑者としてあがったのが脇坂でした。散歩中に陣吉の愛犬・ペロにケガをさせてしまい、アルバイトをクビになったことを逆恨みしての犯行と警察はにらんでいました。
脇坂は事件の前日、クビになった後ペロがどうしているかと気になり福丸家の庭に侵入…。ペロの犬小屋を見てペロが亡くなったことを知ると、犬小屋にあったペロとの想い出のリードを思わず持ち出してしまっていました。
そのリードは古いもので、新しい方の同じリードが凶器でした。脇坂の家が家宅捜索された際に持ち出したリードが発見されてしまい、ますます脇坂犯人説が濃厚に…。
実は脇坂は、犯行時刻には現場から遠く離れた新月高原スキー場でスノボを楽しんでいました。つまり明確なアリバイがあったわけですが、一人で行ったので証言してくれる人は誰もいませんでした。
ただ滑る途中で出会った、脇坂があまりの美しさに"ゲレンデの女神"と呼ぶパウダースノー好きのスノーボーダーの女性が唯一の頼みの綱でした。名前も知らないその"女神"は、普段は里沢温泉スキー場で滑ると言っていた…。
その言葉だけを頼りに、醍醐虎汰朗演じる友だちの波川省吾と一緒に脇坂は"女神"を探すために里沢温泉スキー場へ向かいます。
この波川と脇坂の友情物語も、このドラマでは重要な役割を担っていました。波川は法学部で法律や警察の捜査にも詳しく、"お人よし"で頼りない脇坂をしっかりサポートしてくれます。
自分に捜査の手が迫っているにも関わらず"お人よし発動"をする脇坂に呆れながらも、自分にとって大切な友だち脇坂のために尽力します。こんなにいいヤツ、なかなかいません!
そのころ東京では、警視庁捜査一課と所轄署との特別捜査本部が開設されていました。警視庁と所轄の争いはさまざまな刑事ドラマにありがちですが、このドラマにおいてもそれは顕著で…。
高橋ひとみ演じる警視庁捜査一課の管理官・花菱と、吉田鋼太郎演じる所轄の刑事課長・大和田。警察学校時代の同期二人のバチバチの権力争いに、小杉は巻き込まれていきます。
小杉が捜査中に脇坂が里沢温泉スキー場に向かった情報をつかむと、大和田の"コバンザメ"のような八嶋智人演じる南原係長から部下の白井と2人での極秘捜査を命じられてしまいます。
南原からしょっちゅう捜査の進度について電話がかかってきて、無理難題押しつけられては仏頂面で「わっかりました」と電話を切るムロくんの演技にクスッ。
バディの白井と小杉のかけ合いも軽妙で、ここはコメディ・パートとして十分楽しめました。
脇坂と波川は、アリバイ証人になってくれる"女神"探しに奔走します。本当のことは言えないので、脇坂がひと目惚れした女性を探しているという設定で…。
脇坂たちが"女神"を探す上で知り合った、前田公輝演じるスキー場のパトロール隊員・根津の"優しい嘘"にも助けられたり、パウダースノーラン好きの"女神"が滑りそうなコース外の穴場的な場所を中山優馬演じるバックカントリーツアーガイドの高野が内緒で教えてくれたり…。
小杉たちが脇坂たちにたどり着きそうになると優しい人たちが助けてくれて、その度上手く逃れては追っかけっこが続きます。
脇坂は高野が教えてくれたコース外の場所で再び"女神"と思われるスノーボーダーを発見して追いかけますが、転んでしまい追いつけませんでした。でも、"女神"は必ずこのスキー場にいる…!!
一方小杉と白井は、脇坂たちの車を探している途中に仲間由紀恵演じる「お食事処きなし」と「旅館きなし」のおかみさん、元スキー選手・由希子と知り合います。
「おかみさん、俺たちに教えてくれませんか?日本最大級のスキー場で、鬼ごっこで勝つ方法を」
小杉は土地勘もあり頼れる知り合いも多い由希子に、こう言って捜査に協力してもらうことにします。結果的にこの由希子、"チェイス"において大活躍でした。
脇坂はゲレンデウェディングの練習風景を見ていて、ウェアとヘルメットが"女神"と同じ女性がいると波川に訴えます。高野にゲレンデウェディングのスタッフを教えてもらおうと向かったレストランで、脇坂たちはとうとう小杉たちに見つかってしまいます。
脇坂と波川は、二手に別れて慌てて逃げ出します!脇坂は小杉に追われていましたが、小杉が新雪にハマって動けなくなり、"お人よし発動"した脇坂は小杉を助け出します。
このシーン、脇坂の"人となり"を小杉が知る意味で重要なポイントでした。逃亡中なのにわざわざ自分を助けに戻ってくるなんて、本当の殺人犯ならあり得ません。
「大丈夫ですか?」
「えっ?」
「骨とか、折れてないですか?」
「折れてない…」
「良かったです。じゃ、つかまってください」
「はい、引っ張りますよ。せーの!せーの!」
「脇坂…くん…だよね」
「ええ」
「このまま捕まえてもいい?」
「嫌ですけど、逃げちゃダメですよね?」
「うん…」
由希子が波川を捕まえて、二人は小杉と白井に事件前日から事件当日までの話をします。小杉たちはそれを"作り話"とは思えず、二人が殺人事件を起こすような人間ではないことを確信します。
南原からの電話に出た小杉はまだ脇坂たちが見つかっていないと嘘をつき「自分の考えに基づいて動いてみたくなったから」と、結果的に"女神"探しに協力してあげる形になりました。
思えばこのドラマ、お人よしの優しい登場人物ばかりでしたね。小杉も一見とっつきにくそうながら脇坂の話を信じてあげたり、みんな優しい人たちでした。
ゲレンデウェディングの演出を手がけている武田玲奈演じる千晶に協力してもらってスタッフ全員に確認してみたけれど、一昨日新月高原スキー場で滑っていたスタッフは誰もいませんでした。
落胆した脇坂は波川も警察に追われていることを知り、これ以上波川を巻き込みたくないと自首することを決断します。
その頃小杉は由希子から、亡き夫の話を聞かされます。昔スキー場が大企業に買収されそうになったとき、村最大の財産を売るのは魂を売るのと同じだといって唯一反対したのが由希子の夫でした。
村の人たち一人ひとりの存在って小さいけど、その魂を結集すれば大きな力になる…みんなを説得して回り、買収は免れました。そんな夫の口癖が「一寸の虫にも五分の魂」でした。
「小杉さんの魂はどうなの?」
「俺にどうしろと?」
「警察官は犯人を逮捕するのが仕事でしょ?犯人じゃないって分かってる人間を捕まえてる暇があったら、真犯人を探すことに精を出した方がいいんじゃない?」
由希子にそう言われて、ハッとした様子の小杉でした。
ここまできてあきらめきれない波川は、根津と千晶に翌朝ゲレンデウェディングのスタッフの人たちに直接会って顔を確かめさせてほしいと懇願します。
「脇坂くんはもういいと言ってるのに、どうして?」
「きっと本心じゃないと思うんです。"女神"探しあきらめて警察出頭するって言い出したんですけど、それも俺が共犯者扱いされて内定取り消されるって思ったからなんです。多分…。レアなやつなんです。俺はアイツと真逆で、ネガティブで猜疑心の塊みたいな人間だから…。完全に心許せる友だちって、アイツしかいなくて。アイツのことだけは、何があっても信じてやりたいって。そう思ってるんです。俺と一緒にいる以上は、絶対貧乏くじ引かせたくないんです。だから、お願いします」
「なら、明日の朝9時に長峰ゴンドラに来て。最終リハするためにみんな集合するから」
「ありがとうございます」
小杉と一緒に波川の言葉を聞いていた脇坂は、思わず涙顔で波川に抱きつきます。
「俺、やっぱり探すよ。最後まであきらめない。"女神"のこと絶対見つける!」
脇坂のために真犯人を見つけようと決めた小杉と白井は、脇坂と波川に事件の詳細について話し、犯人の心当たりがないかどうか尋ねてみます。
現場の状況の写真を見た脇坂は事件当時テレビがどうなっていたかが気になるようで、セクシータレントのイメージDVDが流れていたことを知ると、仏壇が開いていることがおかしいと指摘します。
セクシー系のDVDを観るときは「カミさんに見られると恥ずかしいときは閉めるんだ」と陣吉は言っていたのに、現場の写真は仏壇が開いている…。
つまり誰かが仏壇を開けたか、誰かがセクシー系のDVDをセットしたか…。セクシー系以外で陣吉が観るとしたら、囲碁のDVD…。
小杉は推理を働かせ、明日の始発で東京に戻ると白井に告げます。小杉は脇坂と波川に「君たちは何が何でもその"女神"を見つけてくれ。自分の身は自分で守れ。それが出来ない場合は…全力で逃げろ」と。
そんな中警視庁捜査一課も脇坂たちがスキー場にいるという情報をつかみ、最後の"チェイス"が始まります。
ゲレンデウェディングのスタッフの女性メンバー全員の顔を直接確認した脇坂でしたが、残念ながら"女神"はいませんでした。いよいよ万事休す…!と思ったそのとき、千晶のヘルメットの星印のシールを見た脇坂は、"女神"のヘルメットにも貼ってあったことを思い出します。
そのシールは、千晶がスノーボードクロスのライバルと二人で大会で優勝した数だけ貼ろうと作ったものでした。
そのライバルはゲレンデウェディングのプロデューサー、高田夏帆演じる成宮莉央でした。
莉央に会いに行こうとしたゴンドラで長野県警に見つかってしまった脇坂は、小杉の言葉を思い出して全力で逃げます!スキーとスノボの"チェイス"、爽快感ありました。
こうして、とうとう捜査一課の白洲迅演じる中条に捕まりそうになった脇坂。この中条、カッコつけで舌打ちがクセの嫌〜なやつで、白洲迅ファンとしては非常に残念でした(笑)。
…が、そこに"女神"が現れます!!ヘルメットを脱いで"女神"の顔を見た脇坂は…!?
「違う。この人じゃない…」
えっ?もう絶体絶命じゃない!…と思ったらその女性が、
「待ってください!私、彼が言ってる"女神"の居場所分かります」
実は脇坂の探していた女神は、ゲレンデウェディングの主人公、小林涼子演じる莉央の姉・葉月でした!やっと巡り会えた"女神"…。葉月のスマホには脇坂が撮ってあげた写真がバッチリ残っていて、これでアリバイ成立でした。
それでも脇坂たちを東京へ連行しようとする中条の元に、小杉から容疑者確保の連絡が入ります。被害者の囲碁仲間で、本人も自供していると。
陣吉にお金を借りに来たものの断られ、息子に連絡されそうになったため居間にあったペロのリードで首を絞め、現金を盗んで逃げたというのが事件の真相でした。
「脇坂竜実も波川省吾もこの殺人とは無関係です。もしすでに身柄を拘束でもしていたら、天下の捜査一課が大恥をかくことになると思い、取り急ぎ連絡させていただきました」
小杉のこのセリフ、スカッとしました!その後に大コケする中条の姿…なんとも言えなかったです。
殺人事件を追うストーリーとしてはサスペンスとまでは言い切れない感じではありましたが、刑事と容疑者の間に生まれる対人間同士の絆みたいなものが心地良かったです。
スノボの滑走シーンも多いので、スキーをしていた頃を懐かしく思い出しました。雪山って、なんだかテンション上がりますよね!
誰も踏み入れていないパウダースノーの上を滑るって、上級者にはこれ以上ない快感だというのも理解できるので…。ちなみに私は中級者程度だったので、絶対にそんなことはしませんでしたが(笑)。
東野圭吾スペシャルドラマ『雪煙チェイス』は、肩肘張らずに楽しめるお正月にピッタリの娯楽作でした。スカッとしたい方に、オススメします。
