ドラマ『終活シェアハウス』は世代を超えた"奇跡の絆"を味わえる、優しくて心温まる作品です!
ドラマのタイトルが気になって、BS放送を録画して観てみたドラマ『終活シェアハウス』。何の前知識もなかったんですが、演技巧者のベテラン俳優陣とフレッシュな若手俳優の対比もあいまって、なかなか興味深い作品だと感じました。
先日、今は二十代の若者たちもすでに"終活"を始めているという内容のバラエティ番組を観ました。
世代問わず、自分の人生の最後については誰もがフト考えてしまうものだと思います。もちろん私自身も…。
〈人生の終盤を、誰と、どこで、どう生きるか…〉このドラマは、そんな問いにひとつの答えを示してくれるようです。
舞台は、東京近郊のとあるシェアハウス。そこに暮らすのは、60年来の友人である3人の熟女たち。竹下景子演じる料理研究家・歌子、室井滋演じる厚子、戸田恵子演じる瑞恵。
このおばさまたちに秘書という名の"雑用係"として採用されたのが、城桧吏演じる主人公・速水翔太。翔太はお人好しで流されやすく、就職活動も苦戦中で将来のビジョンが見えない大学3年生。
かわいい友だち?恋人?、畑芽育演じる専門学生・林美果との恋の進展もなかなか進まず…。このドラマは翔太と美果のラヴストーリーの側面もあるんですが、美果の"心の声"のナレーションがツンデレかつキュートで、畑芽育は美果にピッタリです。
初めて美果が翔太の部屋に行った日に、歌子との出会いについて話をされます。
ある日スーパーで買い物をしていた翔太は、会計を終えたところで歌子から突然声をかけられます。
「ねぇ、君。うちで秘書を探してるんだけど、どう?」
「秘書?」
「時給も待遇も悪くないわよぉ。はい」
「えっ?」
「君にだけ特別にご紹介。まっ、電話してみて」
歌子の名刺を渡された翔太は、料理研究家の秘書の仕事に興味がわいて連絡してみたというわけです。
歌子の家には厚子と瑞恵もいて、根掘り葉掘りいろいろ質問攻めにあう翔太でした。おばさまたちの迫力に押され気味の翔太でしたが、手作りの中華ちまきを食べて「うま〜っ」と素直に喜ぶ純粋な翔太を見て、歌子は「速水翔太くん、あなたをめでたく秘書として採用いたします」と。
「ここは私の料理スタジオって言いたいとこなんだけど、実際は賢女のシェアハウスってとこ。あっ賢女って分かる?賢い女ってこと。人生の後半を賢く生きる女の館」
「シェアハウス…賢女」
「ちなみに私たちは、小学校からず〜っと一緒の60年越しの友だちよ」
「60年…でね。いずれ一人になったら一緒に暮らそうって約束してたの」
「その約束は果たされて、この賢女の館は文字通り賢女の館となったわけだけれども、だけど、自らを賢いと呼ぶのは私たちの美学に反するから、だから正式名称を考えようってことになったのよ」
「そっ。正式名称は『カメ・ハウス』」
なぜ"カメ"なのか?は、第1話のラストの方で明かされることになります。
それぞれ生活費を出し合って、家事も分担して、もともとの仲良しだからコミュニケーションも上手く取れていて…。
けれど、か弱い!?女3人だから、家具を移動させたり、電球を変えたり、美味しそうな食材を市場でたくさん買ったり…。そんなときに、助けてくれる人がいたなら…。
「そう、助けてほしいの。毎日じゃなくていいのよ。必要なときに飛んできてくれて、ちょっとした用事や頼みごとをチャチャチャっと気持ちよくやってくれたら」
そこから翔太は美果に、おばさまたちのことについて熱く語り出します。年齢差こそあれ、おばさまたちの生き様から学ぶべきところがたくさんありそうだと感じ取れる翔太は、イマドキの若者ながら"いい感性"を持ち合わせていると感じました。
「改めてお部屋を見てみると、置かれてあるものは決して新しくはないけど、どれもキレイに整えられていて、隅々まで掃除が行き届いていて…。この人たち、生活を楽しんでるんだなぁって。本当に必要なものだけをシンプルにムダなく置いてあって、丁寧に暮らしてる…。カッコいいなぁって…」
緊急会議に呼び出された翔太は、緑川恒子という4人グループのもう一人のメンバーについて話を聞かされます。実は4人で一緒に暮らす約束をしていたのに、シカトされて連絡が取れないと…。
それを調べてほしいというのが、翔太に課された仕事でした。熱海の温泉付きマンションに、一人で暮らしているという恒子。
翔太の運転で、3人も一緒に恒子の住むマンションに向かいます。歌子の息子のフリをして、なんとか恒子に会えた翔太でした。恒子は、市毛良枝が演じています。
車の中で待っていた歌子に、翔太から電話が…。途中からスピーカーにして、3人で翔太の声を聞いていました。
「あのぉ…恒子さんですが、今すごい幸せで、一人で暮らしてはいるけど、娘さんもお孫さんを連れてしょっちゅう遊びに来てくれるし、大阪にいる息子さんもいつも気にかけて電話をくれるし、お友だちも…ここでできたお友だちもいっぱい。い〜っぱいいて、毎日楽しく過ごしてるから、だから、歌子さんたちと一緒に暮らそうって約束してたことなんて、すっかり忘れてたって。何度も連絡してくるのちょっと迷惑っていうか、かなり迷惑だそうです。うんざりって言ってます。もう、ほっといてって。もう、帰ってください」
恒子の指し示すメモを読みながら、電話口で翔太は歌子たちに恒子の気持ちを代弁しました。
帰り道、恒子を想ってたそがれる3人。翔太に歌子がこんなことを言い出します。
「君ね、あの日どうして君に声かけたと思う?」
「えっ?」
「あの日スーパーで私は、君の買い物してる姿に目を留めたの。若い男の子が、イマドキの男の子がよ。今日は何にしようかな?今日は何が安いかな?頭を悩ませながら売り場を歩いてた。絹さやの前で特売の札に気づいて…。嬉しそうに、大事にカゴに入れてる。レジではクーポン出して、卵を安く買ってる。恥ずかしがることじゃないわ」
「長く生きてるとね。分かるのよ」
「そう…分かるのよ。佇まいやレジでの振る舞い…」
「面接に来たときも」
「中華ちまきを、それは美味しそうに食べてくれて」
「『いただきます』の手をきちっと合わせて、節々に出るわねぇ、どんな子か」
「あぁ…この子は、地に足のついた生活をしている…。わずかなお金を大事にして、日々一生懸命やりくりしてる。そうに違いない。心がキレイで素直な子。そうに違いない…。誰でも良かったわけじゃないのよ。君たから私は声をかけたの。でね、じんわり感動してるとこ悪いんだけど、言いたいことはこのあとよ」
「えっ?」
「つまり君は優しくて、嘘のつけない子。あれ、嘘よね?恒ちゃんの話」
「嘘つくのヘタだよね」
「ヘタヘタ!あんなヘタな嘘初めて聞いた」
「恒ちゃんに頼まれて、仕方なく嘘をついた」
「私たちが騙されたと思った?」
「バレバレよ、ねぇ」
「ねぇ」
「でも、どうして恒ちゃんはあんな嘘を君に言わせたんだろう?それが分かんなくて」
「そうなのよぉ!考えても心当たりなくて」
「降参!教えてよぉ」
「教えて。君だってホントは嘘なんてつきたくなかったでしょう?恒ちゃんに何があったの?何が起きてるの?」
「…言えません」
「あのねぇ!雇い主はこっちだからねぇ!」
「でも、すみません。言えません…」
「分かった。じゃあ」
「帰ろうか」
「うん」
「帰ろう、帰ろう」
「はい」
翔太から車のキーを取り上げて、40年ぶりに自分が車を運転しようとする瑞恵に慌てた翔太。年の功ってやつですかねぇ…。
「言います、言います!ホントのこと言います。MCIという診断を受けたんです。恒子さんが」
「MCI?」
「何それ?」
「僕も恒子さんから聞いて、すぐにその場で検索しました。日本語で言うと"軽度認知障害"」
「認知症?」
「正確に言うと、認知症の一歩手前というか…。まだ発症したわけじゃなくて」
「認知症になる可能性が高い、ハイリスクの人」
「じゃあ、認知症じゃないじゃない」
「でもでも、健常な状態とも言えないって書いてある」
「ちょちょ貸して…えーと、MCIと診断された人の約半数…」
「約半数は?もう、ちょっとなぁに、見せて見せて見せて…あぁもう字ちっちゃ!」
「こここ、こうやって」
「こうか…約半数が、5年以内に認知症を発症…」
「娘さんは義理のお父さんお母さんと暮らしてて、お子さんもいるし、仕事もあるし。大阪にいる息子さんも再婚したばかりで、面倒は見れないって。恒子さんは、施設に移ることに決めたそうです。今いろいろあたっているところで、決まり次第すぐに引っ越しするよう、片付けをされてました。話してくれましたよ。小学4年生のときに、同じクラスになったのが始まりだって」
「声かけてくれたのは、恒ちゃんよ。新しい学年になって、知ってる子がクラスにいなくって。ポツンとしてた私を気にかけてくれた」
「私たち家が近くて、もともと登下校一緒だったからね」
「逆上がりができなくてお手本見せてくれたのよ、歌子が」
「そうそう…ハハハ」
「リコーダーは私が教えたのよね」
「計算問題は、あっちゃんが得意だった!」
「まぁね」
「性格もバラバラ、成績もそれぞれ。だけど、不思議と気が合って。フフ…」
「恒子さん、忘れたことなんてなかったって言ってました。いつか歳を重ねて、一人だったら一緒に暮らそうって、歌子さんたちの約束。でも、5年以内に認知症を発症する可能性があるって診断を受けて、迷惑はかけられないって。大好きな、歌子さん、瑞恵さん、厚子さん…3人のこと、今も大好きだから、迷惑はかけられない。心配もさせたくないって」
「ちょっと、なんであんたが泣くのよぉ」
「そうよ。泣くのはこっちでしょう?」
「そんなに泣かれると、こっちも泣けちゃう」
「すみません…すみません」
「バカねぇ」
「バカよ、バカバカ」
「ホント、バカよねぇ」
こうして恒子の状況を理解した3人は、恒子の住むマンションへ戻り、翔太に呼び出してもらって無事に再会を果たします。
「覚えてる?理科の観察学習。私たち4人でグループを組んで、観察したわよねぇ」
「恒ちゃん、一番熱心だった」
「上手に世話してた。忘れたとは言わせないから」
「……カメ…ミドリガメ」
「そう…ウサギとカメの話しながらねぇ。カメみたいにおっとりゆっくりでいいんだよねって、よく話してた」
「そう…マイペースでいこうねって」
「そう…恒ちゃんがそう言ったのよ」
「私たちのシェアハウスの正式名称はね。それでつけたのよ。『カメ・ハウス』。ねっ。恒ちゃん、一緒に暮らそう!おいでよ!」
子どもの頃とは逆に、手を差し伸べた歌子の手をためらいながらも今度は恒子が握り返しました。歌子にハグされて、涙顔の恒子。
「大好き、恒ちゃん」4人で円陣を組んで喜び合う姿は尊くて、それを見ながら笑顔を浮かべる翔太。この4人の再会のシーンはもらい泣きでした。
そして、恒子も「カメ・ハウス」へ!4人の約束は、こうしてやっと実現しました。
〈栃木の小さな田舎町から、それなりに希望に燃えて出てきた東京生活だけど、正直あまりパッとしなかった。思っていたより、日々の生活は厳しい。スーパーで特売の品を見つけると、わずか5円安くても嬉しくて、そしてそんな自分がちょっと悲しくて…。でも、初めて褒められた。生活するということは、地味なことだ。地味なことの繰り返し。それでも一生懸命生きていれば、心温まるひとときに出会えることもある〉
歌子に恒子の歓迎会の買い出しを頼まれた翔太。翔太に会いたかった美果も、なぜか一緒に買い出しに付き合うことになり…。
…と、スーパーから恒子の姿を見つけた翔太は、心配になり恒子のあとを追いかけます。「カメ・ハウス」では、恒子がいなくなったことで3人が大騒ぎ!さて第2話はどうなっていくことやら…。
翔太役の城桧吏はセリフ回しはまだまだと感じることはあれど、純粋でまっすぐな青年を誠実な演技で好演しています。
おばさまたちを演じる竹下景子&室井滋&戸田恵子&市毛良枝は、ベテラン俳優らしくこれまで積み上げてきたそれぞれの持ち味溢れる安定の演技で、登場人物たちを生き生きと魅せてくれています。
若者とシニアが交わす日々のやり取りは、時にユーモラスで、時に胸を打つものがあります。翔太との時間を奪われて今はおばさまたちをちょっとうとましく感じている美果も、これからさまざまな影響を受けていくと思われます。
このドラマは"終活"というテーマを通して、 人と人とのつながりの大切さを描き、どんな世代にも共通する「生きることの意味」を、 静かに力強く問いかけてきます。
〈“ジェネレーション・ギャップ”ならぬ“ジェネレーション・インスパイア”感動を描くヒューマンコメディー!〉
と番組紹介のサイトに書いてありましたが、まさに世代を超えてインスパイアされていく登場人物たちの姿がこれからどんなふうに描かれていくのか楽しみです。
主題歌は、友情をテーマに描かれたDREAMS COME TRUEの名曲『サンキュ.』。これがまた本当にこのドラマにピッタリで、4人の再会のシーンで流れてきただけでウルッときちゃいました。
NHK、やっぱり面白いドラマ作ってくれますね!オススメします!
