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第12話《My soul,Your Beats》#2 拗らせファーストラブ〜アラサー女は死んだ初恋相手を助けるためにタイムリープする〜

█第12話《My soul,Your Beats》#1


█第12話《My soul,Your Beats》#2

現れたのは奏だった。
腰に手を当てて、完全に相手を見下す冷めた目付きで口角を上げていた。

 「は?  あんた誰よ」

「大学生って意外にアタシらと変わらないんですね。遊び足りないって感じです」

奏の挑発に珠紀はイラッとした様子で舌打ちをする。

「なによあんた。 あんな媚び売りのダセー奴の友達なわけ? スカート折ったり調子乗って……」

「友達ですけど何か?」

奏の後ろから現れたのは大きめのコートを羽織り、星のドレスを隠した麻理子だ。

「えっ!?  北島  麻理子!?」


さすがは麻理子だと賛辞を贈りたくなる見事な鮮やかさだ。

ドレスの膨らんだ部分を摘み、膝を曲げて気品に満ち溢れた星の女王の仮面を被る。


「年越しの瞬間、あたしは星の女王になる。 どうぞ見に来てくださいね、めめりんの先輩?」

あまりの妖艶さに周りの男たちは真っ赤になり、呆然と立ち尽くす。

クスリと笑い、麻理子は奏の手を取り去っていく。

横を通過したとき、ようやく珠紀は我を取り戻しカッとなって麻理子に掴みかかろうとしていた。

「ちょっとぉ、あんた!」

「へぇ、あの子かわいいじゃん。 レベルたけぇ」

珠紀と一緒にいた男たちの単純さには鳥肌が立ってしまう。

この年頃の男の子からすると麻理子こそ至高の存在であり、頭の中で妄想としてぐちゃぐちゃにしてしまう卑猥さがあった。

オカズにされる麻理子に同情しつつ、媚びない姿は清々しくて心地よかった。


「うちの芽々に何か?」

男たちに相手にされなくて歯を食いしばる珠紀の背後にゆらりとお化けのように腕を伸ばす女が現れた。

珠紀は裏返った悲鳴をあげ、男の後ろに逃げていく。

恐る恐る顔だけ出し、驚かせてきた女に目を向けるとその先にいたのは……

「も、百々先輩!?」

ニコニコと威圧ある笑顔で珠紀に詰め寄っていく百々だった。

ジリジリと近づく笑顔がやたらおっかないもので、珠紀は冷や汗を流して草履で砂利を擦り、居た堪れずにササッと百々から距離を取る。


「な、なんでもないで~す……行くよ!」
「えー」

「行くっつってんじゃん!」

背伸びをして男の耳を引っ張り、がに股で離れていく。

腕を組みため息をつく百々を見て、残った珠紀の女友達が頭を下げてきた。

「なんか、あのおバカがすみません」

「いいよ~、バカがバカに噛み付くだけだから」

百々の言葉に彼女もクスッと笑う。

世話焼き係という共通点でなんとなくおかしくなり、親近感を抱いているのかもしれない。

それから百々は屋台でふたごやきを買い、神社の階段で大学の友人たちとシェアをしていた。

「百々の地元のお祭り、屋台の料理おいしーねぇ!」

「でしょ?  ふたごやき、おすすめ」

そうしてお祭りは順調に人が集まっていた。

***

気を取り直し、私たちは屋台の道中でチラシと光る星を配っていた。

「星祭り、年越しに星投げやりまーす! 高校生発案なのでぜひ参加してくださーい!」

興味本位に受け取る人もいれば無視する人と様々だ。

受け取ってもらう率をあげるため、里穂が調子にのり星投げのハードルをあげていく。

「我が校の姫が星の女王様になりまーす! 超絶美人で、会いに行ける女王様でーす!」

「会いに行ける女王様って」

「なんか格式高くて良くない? レア度高そう」

(なんという楽しみ方や)

割とむちゃくちゃに楽しむ自由な里穂に笑いがこぼれた。

会いに行けるというのはこの頃はまだ希少で、優位性のあったコンセプト。

やがてどこも真似をしていき、価値は飽和する。

価値とはある時に武器にしろ。

必ず劣化していくのだから強化は忘れずに。

コンテンツの消費はあっという間だ。

満たされた消費活動に付加価値をつけなければ勝負にならない。

そして記憶に残るクオリティがなくては長生きはせず、下降していくものだった。

「それ、もらってもいいかい?」

突如、後ろから声をかけられ驚き、肩を跳ねさせながら振り返った。

「あ、はい!」

モタモタとチラシと光る石をセットにして渡す準備をして顔を上げる。


「どうぞ。 チラシと、星……」

「……ありがとう」

白髪混じりの黒髪に穏やかな目元。

小じわと眉間のシワが刻まれた顔はどこか懐かしい気持ちにさせてきた。

少し寄れた上着に、重い背中。

独特の匂いをまとった影の濃さ。

その後ろ姿を見送り考え込む。

「どこかで見たような……」

「あれ、黒咲くんのお父さんだよね?」

「黒咲くんのお父さん!?」

「あ、ちょっと芽々!」

深くは考えなかった。

黒咲くんの父親だと認識した瞬間、足は勝手に動き、その背を捕まえようと走り出していた。


神社の本殿まで走り、夜の闇に姿が浮かぶ。

年越しのために特別に開かれており、巫女がお守りや破魔矢を販売し、雅楽が体内に沁みるようにこびりついてくる。

夜に立ち入ると神様を怒らせてしまう、といった迷信があったことを思い出す。

なんの根拠もない古くからの言い伝え。

夜も開いてる神社は数多くあり、華やかな観光地となる場所だらけだ。

ましてや年末年始は夜に人が集まって当たり前の環境で、私たちは「昨年はお世話になりました。本年もよろしくお願いします」と言葉にする。

だからこんなことを脳裏に過ぎるのがおかしい。

どうしようもない暗く覆うものは、言語化出来ないから。


「あの、黒咲くんのお父さん!!」

「……君はさっきの」

声をはりあげ、私は一歩一歩力強く足を踏み出し、黒咲くんの父親の前に立つ。

夜の闇にぼんやりと輝く光る石を取り出し、黒咲くんの父の手にもう一つ握らせた。

「あの、星投げ!  必ず参加してください!」

「え?」

「黒咲くん、頑張ってたから。 このお祭りを盛り上げたいって一生懸命でした」

いつも笑顔で一生懸命だった黒咲くんを知っている。

歯がゆさに叫び、苦悩を露わにするザワついた姿も見てきた。

全部知ってて、結局行き着く結論は長年黒咲くんが抱いてきた想いであった。


「黒咲くんはこの町が好きなんです。 家のことも真剣に考えてて……。だからもう少し優しく出来ませんか? お金のことはわかりますけど、一人に責任を押し付けるような体制では……」

言葉につまる。

シビアな問題を何も分からない高校生が口を出しても、それは知らないがゆえの暴論にしかならない。

出来る出来ないの世界に力にもなり、足枷となるのがお金という存在だ。

貧しさは、優しくいることさえ難しくさせるんだ。


「……君が由利に助言したんだね」

「あ、その……」

「……すまないね。 ありがとう、楽しみにしてるよ」


笑ったときに目尻に刻まれる小ジワ。

少しだけえくぼの盛り上がり方が似ていて、よく黒咲くんが笑う時にその頬の筋肉が目元に柔和さを作る。

きっとそれは、いつか小ジワになる笑の線。

紛れもなく、黒咲くんの父親だった。

去っていく後ろ姿を見て、これ以上は追いかけられなかった。

(なんで、追いかけられないかなぁ。 黒咲くんのお父さんはどう思ってるの?)

風がサラリと吹き、赤茶髪がなびく。

(私がお節介すべきこと? でも、嫌な感じはしなかった)

ーーだから余計に分からない。

黒咲くんの父は、ちゃんと黒咲くんを大切にして愛している。よく言う家庭崩壊が起きているようには見えなかった。


「どうして……」


ーーあんな結末になるまで放置したの?

ーー父親なのにどうして……?


「……お祭り、成功させて変化を起こす。 あんな悲しい結末を選ばせたりしない」

私はここを分かれ道と思っている。

だからあなたの生きる道を作りたい。

ワクワクのなかった黒咲くんの心を踊らせる。

「あれはありえないんだ。 回避しないと……絶対おかしいんだから」

あなたが自殺する未来。

それが最初から間違っていた。

予知が出ていたとしても構わない。

私が必ず黒咲くんの手を掴むから。

【私の魂、あなたをもう一度笑顔にするために】

星に流れて私はやってきたのだから。


█NEXT
第12話《My soul,Your Beats》#3


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#恋愛小説部門
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