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【AL-Rv】誰かを灯しますように-渋谷すばる「Su」

 すでにリリースから4か月になってしまうが、渋谷すばる5作目、トイズファクトリーに移籍してからは2作目となるフルアルバム『Su』が2025年11月5日にリリースされた。
 またこのアルバムツアーともなる 渋谷すばる『Su』ツアー(国内)が1月24日狭山市民会館からスタート。私は3/20神戸とファイナルNHK大阪ホールの2回参戦の予定なのでまだ『Su』の世界は未体験なのだが、そういえばこのアルバム『Su』のレビューをまだ書いていなかったことに今更気づいたので、ライブを通ることで変化する前に一度アルバム曲の新鮮な感想を残しておこうと思う。(前作『Lov U』のレビューも結局書いていなかったことはここだけの話)
 なおあくまで1ファンの「感想」であり、「アルバム評」みたいな偉そうなものではないことを予めご了承下さい。


 

渋谷すばる 5th Album 『Su』

リリース日:2025年11月5日

1. 繋がる -Su ver.
2. Nekonome
3. Su
4. Jam Jam Jam
5. さらば
6. with U
7. POPEYE
8. マリネ
9. Final Note
10. 月と東京
11. ダンデライオン
12. ひとひら

 


曲ごと感想

1.繋がる -Su ver.

作詞:横山 裕 作曲:渋谷すばる 編曲:フジイケンジ

 横山裕ソロアルバム『ROCK TO YOU』に収録された曲をこちらにも収録。
 グループ脱退以後疎遠になっていた心友が「(自分のソロアルバムのために)曲書いてくれへんか」と送ってきてくれた歌詞を読んでその衝動のまま曲を書き、歌い、横山にこれでどうだと送ったデモ音源テイクが使用されているという。心友から溢れる魂の言葉を一つ残らず受け止めて突き動かされた生々しい歌声。
 今回はそのボーカルに、The Birthdayが演奏をつけてくれたというまさしく"なんかすげぇ曲"だ。
 『ROCK TO YOU』のアルバムとツアーでは横山のサポートメンバーが演奏し、YYSSではすばるのサポートメンバーが演奏した。そしてこのバージョンではThe Birthday。誰のボーカルということももちろんあるが、同じ曲がそれぞれ全く違った表情をしている。曲は生きものなんだなとあらためて思った。

 この衝動に溢れた曲をアルバムの1曲目に配置したことで、あえてPOP路線に重心を置いていた前作からの進化を強烈に印象付けたという感じ。

 ところでRTYの時にはそこまで深く気にしていなかったのだが
「メガネかけた子供」は"コ(ン)ナン"
「メガネかけた大人」は"タ(ン)モリ"だったんですね タンモリて何や、此花のヤンキー用語か?とか思ってた笑
「友達の原理」ってそういうことか。輪。

2.Nekonome

作詞:渋谷すばる 作曲:中山卓哉 編曲:akkin

 1曲目「繋がる」でアルバムの傾向を宣言したものの、曲の感じは前作『Lov U』のポップ路線を引き継いだ、あの路線を捨てたわけではないのがよくわかる曲。
 作詞はすばる本人。「ネコノメ」は「ネコノメソウ」のことで普段名前を気にすることもほとんどない、路傍に咲く小さな花だ。
 目に入っても見えていないように、名前を調べてもらうこともさほどなく、悪意もなく踏みつけられる路傍の花。踏まれても傷ついてもまた"ニョッキリ立ち上がり光放つ"そんな強くて可憐な花に、心の何かを仮託する。
 歌詞の優しさ可愛さとメロディーラインのPOPさに比べてこの疾走感あるアレンジは何なんだろう笑。踏まれても立ち上がるたくましい雑草を歌うのにこの猛スピードで駆け抜ける感じある?曲先らしいけどデモ時点でこのくらいのBPMだったとしたらこれにこんな歌詞乗せる渋谷すばるサイコーにクレイジーで大好き。
 
 なんかライブの時にみんなで振り覚えてきてね!みたいなやつがまた出てたけど、個人的にはその手のことをやって許されるのはミッチーさんだけで、それ以外の人にやられるとちょっとテンション下がるんだよね めんどくさいファンでごめんやけど ※ミッチー(及川光博)のライブではベイベーも全員バラード以外ほぼ全曲踊り狂う習わしになっているので新曲はあらかじめ振付指導してくれないと困ることもある


3.Su

作詞:渋谷すばる 作曲:渋谷すばる 編曲:玉屋2060%(Wienners) & 渋谷すばる

 初聴きがYYSS(横山裕渋谷すばる対バン)だったのでアルバムで曲が始まったら「待ってましたァ!」になる。私はヘビメタ通らずに生きてきた人間だけど無条件に頭空っぽにして狂える曲に沸かないわけがない。
 『ないしょダンス』でも冒頭に語りのようなパートが入るけど、今回『Su』は関西弁なのでより渋谷すばるの"素"を感じられる気がする。単純。
 コーラスに横山裕が参加。YYSSでやった時、毎回終わったあとに小声で「カッケェ…」って呟いていたのが印象的で、横、ほんとにこの曲好きなんだろうなと思った。私も好きやで。

 ええ加減乗った人漏洩~からの3フレーズ、音で聴いてるだけだと同じことを3回繰り返しているように聞こえるんだけど3フレーズとも違う。あー、こういう言葉遊びする人だったわ渋谷すばるって!って思い出さされた。
 あと個人的に「話長いから聞かないわ」がずっとツボってる。話長い人にぶつけたい。


4.Jam Jam Jam

作詞:渋谷すばる & 藤森真一 作曲:藤森真一 編曲:野間康介

 がなり叫びまくった『Su』が終わってまだゼェハァ(イメージ)なのに急にきれいな甘い声でサビイントロ歌うの迷走神経反射起こして倒れそうだからやめて(やめないで)
 ご存じ『宇宙へ行ったライオン』(SUPER EIGHT)と同じ顔触れによる楽曲。アレンジのリズムは意図的にだろうかかの曲に近い。アンサーソングか、あるいは続編か。
 あのライオンは少年と宇宙に行ったけど、行った先は宇宙人とかいろんなのがめっさ楽しそうにしてますね。「飛び出した先には重力はなかった」曲調もあいまってすごい解放感。
 これも曲の終盤にライブでオーディエンスによるシンガロングを促すようなアレンジになっている。


5.さらば

作詞:micca 作曲:micca 編曲:THE CHARM PARK

 配信シングルだった曲。YYSSの感想で、この冒頭の「好きだよ」にやられた人を多数観測した。キャパ700かそこらのライブハウスの前の方でこれ食らって無事生還した私偉いと思う。

 桜の季節は別れと出会いの季節だからどうしたって別れの歌が多いのは必然だと思うんだけど、渋谷すばるの(もしかしたら)最大の「別れ」の始まりが春だったこともあってどうしても春の別れの歌は本来の意味以上の感傷を呼び起こしてしまう。この歌しかり、「咲く、今。」(関ジャニ∞)しかり。(実際の"別れ"はもう夏だったんだけどね)

 シンプルな別れと旅立ちの歌としても秀逸。
 誰でもいつかは"誰かと同調しながら"ではなく一人で自分の道を行く分岐点に臨む時がくる(自分の選択として誰かと共に行く人もいれば、消極的に「独りで行けない選択」しかできない人ももちろんいる)。『君で行け』とは言葉を替えて繰り返し繰り返し伝えてくれる渋谷すばるのメッセージの中のとても大事なひとつだと思う。どのルートを選んだとしても、他の誰もなぞらなくていい、それぞれの人生を選びとっていくこと。
 その分岐点は春とは限らないけど春にはそのきっかけになる節目が多く存在するから、やはり春は別れと旅立ちの季節なのだ。


6.with U

作詞:渋谷すばる 作曲:渋谷すばる 編曲:ha-j

 洒落たスウィングでひとりでに体が動く感じの曲。
 前作「Lov U」と対になるタイトルにしてこれを当初アルバムタイトルにする予定だったみたいですが「Su」が強すぎてタイトル争い敗退したらしい。つまり当初タイトル曲だった本作はそれなりに強めのメッセージが乗っているんだよね、と思う。
 曲はこんなにお洒落なのに、歌詞はずっと、孤独で痛みを抱えていても僕がそばにいるよって言い続けてて。本人の発露としては聴いているこちらがわに自分は(歌という形で)いつでもそばにいるよ、一人じゃないよと呼び掛けているのかもしれないけど、なんとなく誰かにそばにいてもらいたかった時期の自分もまるごと抱きしめている感じがしてたまらんです。
 「風になれ」のとこもシンガロング必須ですかね。


7.POPEYE

作詞:フジイケンジ 作曲:フジイケンジ 編曲:フジイケンジ

 前作「渚と台風」に続き、作詞作曲編曲全部フジイケンジ!
 オリーブは登場するけどなんでポパイなんだ、誰が追ってくるんだとかそういうことはもうどうでもいいからひたすらブギーに身を任せろ。


8.マリネ

作詞:渋谷すばる 作曲:渋谷すばる 編曲:渋谷すばる

 なんとなく以前のすばる(「need」あたり)っぽい曲だなと思ったらちゃんと編曲まですばるだった笑。ただ、needの頃よりアレンジが垢ぬけてる気がする。作る側の目線で前作今作と"アレンジャー"の仕事を吸収したとかあるのかな。
「あなたの事を思うそれだけで こんなにも胸が狭い」
 胸が狭い、という表現を初めて見た気がするんだけど、すごくよくわかる。そしてものすごく耳に入ってくるし残る。素敵なワードチョイス。


9.Final Note

作詞:渋谷すばる 作曲:渋谷すばる 編曲:三井律郎 & 渋谷すばる

 「YYSS」のファイナルで初披露されたこの曲。最初からセトリ入りさせていたのではなく、最終日に、「この場にぴったりだから」とセトリ変更して入れた曲。
 やはり渋谷すばるの人生にとって関ジャニ∞と別れたこと、そして横山裕と再会できたことはとてつもなく大きな事だっただろうと思う。
 いつもなら書かれた歌詞などでかつての仲間との思い出や別れについて想起させられるのは勝手にこちらの思い出が触発されただけで、本人は別にそんなつもりで書いてないんだろうなぁ…なんて思うことは日常茶飯事なのだけど、この曲に関しては本人があの場にぴったりだと認定しているのでそういう事だと思って良いのよね。

 実は最近まで気づいていなかったんだけど、TOY's移籍後のアルバム「Lov U」や配信シングルや今作「Su」に収録されている楽曲はここまで、ハーモニカが封印されていた(と思う)。
 前作はかなり意識的にPOPに振り切っていたので、どうしても泥臭い印象になるハーモニカはあえて封印したのだろうと思う。その延長線上にある今作でも、(曲順で聴いてきたとして08.まで)TOY's以前なら絶対ここでハーモニカだろうと思うようなところでも使われていなかった。
 これはライブで初聴きしたから他の曲でもハーモニカ吹いてることもあってその時には全然意識していなかったのだが、アルバムを曲順に聴いてきたところでこのイントロでいきなり高らかなハーモニカの音が聴こえた時に一気に鳥肌が立った。「満を持して」という感じがした。やっぱりこの音は、『渋谷すばるのもうひとつの声』だ。
 ハーモニカとギターで同じリフを重ねるというアイディアをギターの三井律郎と話し合ったというのが楽し気ですごくいい。

 「大好き」も「愛してる」も「さよなら」も「ごめんね」も、何回言っても全部を伝えきることができなくて、言っても言ってもあとからあとから溢れ出して。そんな言葉よりも、"くしゃくしゃの最後のページ"を見てもらうのが一番伝わるのかもしれない。
「この場にぴったり」というのは、あの時、我々は「最後のページ」を見せてもらった瞬間だったからなのかもね。


10.月と東京

作詞:渋谷すばる 作曲:渋谷すばる 編曲:野間康介 & 渋谷すばる

 別れた恋人なのか、遠距離恋愛なのか、それとももっと心に深く棲んだ相手のことか。「一眼レフノ君」のようにはっきりと失恋ソングでもなく、寂しくて幸せな頃のことを思い出しているようにもまだここからリカバリーできる関係のようにもとれるストーリー。こういうのは、恋愛における場面だけじゃなくて人生のいろんな選択の末にある現在を生きてきた人間のどこかに刺さるようにできてる。
 あの日二人で東京の夜についた嘘とは何だったんだろうな。
「一人じゃ感じられない 君と僕がいる事」というフレーズにはっとする。

 基本メジャー進行なんだけどイントロとサビ前からちょっとマイナーコードが混じっていくやつ本当好きで。ずっと寂しい切ない空気が漂っててたまらん。


11.ダンデライオン

作詞:micca 作曲:micca 編曲:野間康介

 ネコノメソウにしてもダンデライオン(タンポポ)にしても可愛らしい花を咲かすけれど路上に咲くたくましい雑草(牧野富太郎曰く「雑草という草はない」)。
 大事に肥料を与えられ守られて咲く大輪の花ではないけれど、そのしぶとさに背中を押されたりその可憐さに心を奪われたりする。雑草をモチーフに選ぶのはそのように生きたいという気持ちが底にあるからなのかも。
 「渋谷すばる」に人生に根を張ったようなどっしりした歌詞を歌わせてきたmiccaさんが持ってきたこんな可愛らしいラブソングににんまりしてしまう。誰へのラブソングなのかは、聴いた人がそれぞれのダンデライオンを思い浮かべればいいのではないかと思う。
 曲も可愛らしくてキラキラしている。
 そのわりにすばるの歌唱が前作アルバムのような綺麗に可愛らしい声ばかりでなく(いい意味で)雑で荒れた声も使うのが今作っぽい。


12.ひとひら

作詞:渋谷すばる 作曲:渋谷すばる 編曲:渋谷すばる

 今作通じてすばるの声、歌い方が前作までとはがらっと変わったという印象がある。
 この曲のような歌詞と曲調は前作までならもっと丁寧に優しく歌っていたのではないかという気がして、だから冒頭のギター伴奏だけの頭サビの声を聴いた時に何故だか心臓に一撃食らったみたいになった。
「君」「あなた」はどこかにいる誰かなのか、これを聴いている「私」なのか、それとも自分自身なのか。
「あの時」「あの日」とは物語上の架空の場面なのか、多くの人が連想する場面なのか、それとも誰も知らないけど自身だけが知っている場面なのか。
 そのどれかでもどれでもなくても、もういいかなって気がする。

「踏み出すその足音に名前がある」
「選んできたことに正解はないからずっと少しだけ怖かった」
「明日またこの世界にいられるとは限らないから」
「生まれ変わるとかじゃなくてただ少し優しくなれたらいい」

 きっと我々も知っているほんの一かけらの事の何千倍も色んな出来事があって色んなことを思ってそしてたどり着いた心で書いた言葉の一つ一つが、どんな形どんな受け取り方であろうと聴いた人の心に何某かを残すだろう。

「行ってこいと手を振った声 今も背中を押してる」

 これを聴いて多くの人は"あの時"手放したかつての仲間たちのことを連想するのではないかと思う。ただ、"あの時"たくさんの責める言葉も多く浴びせられただろう中で"行ってこい"と言ったファンも多くいたはずで。私もその一人なんだけど(実際「わかった、行ってこい」と思ったしブログにも書いた 書いたのは一年後だけど)。
 ただの感覚や憶測でしかないのでそういう捉え方もあるよね程度に思って欲しいのだが、独立以降のすばるは、自分がグループを抜けたことで悲しませた人たちに、自分は何のために、何をしたくて辞めたのかを明示し続けなければならないという枷を自分に課していたような気がしてならなかった。
 ライブで、あるいは公に発信する場所で繰り返し何度も”今も応援している目の前にいるファン”に対して心からありがとうと伝えてくれることはわかっているけれど、それなのにすばるは自分の方を向いていてくれている実感があまり得られていなかった。

 「今も背中を押してる」と言われることが、この言葉が別に自分に向けられたものでは全然無いとわかっているのに、ただ「来てくれてありがとう」と言われるよりなんだかずっと嬉しい。なんだろう、やっと本当に私の方を見てくれたという感じがして、そんな自分がバカじゃないかと思いはするのだけど。それでも、何故かわからず無性に嬉しくて、これを聴いていると泣けてしかたなくなるのだ。「行ってこい」と手を振っただけでは飽き足らず結局そのままついて行ってる自負があるから泣けるのかもだけど。

 やばいな、アウトロのラララ~とかライブで歌ったら号泣するのは間違いない。号泣したかどうかは実際にライブ行ったあとのレポをお楽しみに。



全体の感想

すっごいの出来たから

 昨年のアコースティックライブ「すばると」の時に、すばるはこのアルバムに触れて
 すっごいの出来たから!最高傑作!すごすぎて怖い!
 としきりに言っていたことを思い出す。
 こちとらもちろんアルバムリリースの際にそのアルバムを宣伝するにあたって多少大袈裟だとしても傑作であるアピールをするものだと思っている嫌な大人なのだが、それにしたってこれまでの作品に比べてその熱量がかなり高い印象だった。
 つまりそれは、本当に、本気で、すげえ作品が出来た!という自信、自負があるのだろう。

トイズとの出会い、横山裕との化学反応

 横山裕から「繋がる」の提供オファーが正式にあったのが2024年10月、対バンライブをやろうと提案の連絡があったのが11月。この時すばるはまだ「Lov U」のツアー中(ツアーは2024年内に終了)。
 アルバム制作時期を鑑みるに、「繋がる」の制作や対バンをやることになったことが、このアルバムに収録された楽曲を作る上で大きく影響したのではないかと思う。

 歌声そのものを含め、関ジャニ∞のメンバーだった頃の方がよかった、などと言われることはきっと悪意の有無を問わず多くあっただろう。多くのファンと大事なメンバーを泣かせて飛び出した先では最初「脱退してまでやりたかったことはこうだ」「関ジャニ∞の渋谷すばるとは違う姿を見せなければ」という重石で繋がれていたように思えた。

 トイズファクトリーとの出会いによってその重石はすこしずつ取り除かれていったのかもしれない。歌うのは自作でなくていい、ロックやパンクっぽい曲ばっかりでなくていい、ハーモニカを吹かなくてもいい、そしてアイドル時代の中心だった踊ったり可愛らしく歌ったりすることを封印しなくてもいい。

 そんな時期に心友の横山裕が、脱退発表のギリギリまで翻意を懇願した、会見の場で号泣していたともだちが、俺のために曲書いてくれよと。一緒に舞台立たへんかと。声を掛けてくれたことで、すばるはやっとその重石をすべて取り除くことが出来たのかもしれない。重石が無くなってみれば、「飛び出した先には重力はなかった」のだ。

無重力の宇宙

 「二歳」を聴いた時、自分がやりたい音楽はこれだとすべて曝け出したのだと思った。
 「need」の時は、コロナ禍になってから作られたものも多く、前作よりやさしい曲が多いと思った。
 「2021」は、自粛とツアー中止で追い詰められているのが「二歳」の時よりもっと生々しく曝け出されている気がして苦しさが伝染した日もあったなと思い出す。
 「LovU」の時にはひたすら戸惑った。自ら「渋谷すばる第三章」と謳った、トイズと組んだ初っ端の作品は方向性がそれまでとはヘアピンカーブ並みに変わったから。ツアーに行けなかったことも手伝って、置いてけぼりになった感覚だった。
 ライブに行っていると、それでも行く度にすばるは何かから解放されたのかもしれないと毎回思った。どちらへ向かっているのか方角はわからない、それでも「前」という方向へ進もうともがいたり、トンネルを抜けたりしているのだろうと感じることが多かった。
 今振り返ると、コロナ禍で停滞したことは本当に大きな障害になったとは思うが、それでも本当に少しずつ、着実に、自分にぶら下げていた重石を外して前に進んできたのだなと思う。

 今作を初めて聴いた時に、今までのアルバムやライブの現場で「渋谷すばるはより自由になった」と何度も思ってきたのは何だったのだろうと思った。自由っていうのは”これ”じゃないか
 何より、音源から聞こえてくるすばるの歌声が本当に楽しそうに聴こえた。そして、歌い方がちょっと粗雑だったり声をがならせたりすることが多くなった。まるで、『関ジャニ∞の渋谷すばる』が最高に活きが良かった時のように。
 「あの頃の方が良かった」ということではなくて。
 色んな声で色んな表現で歌える歌手だからこそ、一番封印しなくていい歌声をこれまで無意識にか封印していたのではないかと思うのだ。それが今回ついに解放された。

 あのちょっと粗雑な歌声だから伝わってくるものがあるんだな、と「ひとひら」を聴いていて思った。多分これまでのミディアム曲のようにやさしくきれいな歌声で丁寧に歌われていたら、歌自体はきっとすごく好きになったとは思うがここまで胸を打ったかどうかはわからない。
 そういう声が、渋谷すばるの最大の武器だったはず。
 一度は手放しかけていた最大の武器を、歌手・渋谷すばるは再び手にした。

 私はFCのデジタル会報もそれほどまじめに見ないしブログも飛ばすことあるし、Bubbleは登録していないし、雑誌も漏れなく読んでいるわけではない。『推しの発信するすべてを把握していなければ気持ちが悪い』みたいな推し活ではないが、ただずっと、彼が歌い続けるかぎりその歌を聴いていたいしライブをやるならその生の歌声を聴きに行きたいとだけ願っているただのファンだ。
 彼が本当はどんな風に苦しんでそれを乗り越えたのかとか、まだ苦しみを抱えているのだとか、それを理解したいだとか、そこまで踏み込んだ願いは持っていない。歌で伝えようとしてくれているものは、歌で受け取りたい。それだけだ。
 ただただこれからは心身とも健やかに、自分の作品を毎回最高傑作更新だと胸を張れる曲を歌い続けてくれますように。それだけを祈るファンでありたい。

 3月になった。あと2週間とちょっとで、「今年の渋谷すばる」にやっと会える。このアルバムの曲たちが、ライブという現場でどのように変化していくのかを目いっぱい楽しんでこようと思う。


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