ねりまじっく ※過去作2011
※ねりまじっく(2011)
まだ「書くこと」が何かも分からず、それでもどうしてもこの景色を書き留めたかった。
ここが私の出発点。
軽く茶髪のさらさらヘアで
ザクッと乗り込んで来た彼は
大股で風を切るのに
不思議と威圧感はなく
スリムなのに身体の動きの流れで
筋肉質なのが見て取れる。
スタンと斜向いの座席に腰を下ろした。
その節くれ立った指で
がっぷりと大きい鞄から
一冊の文庫本を取り出す。
焦茶の細いしおりをつまみ
残り3分の1ほどのページに目を落とす。
その瞬間、彼の目の輝きが変わる。
小説に引き込まれた彼は
多分、周りの騒音も耳に入らない。
はは。夢中になると
口が半開きになるんだね。
日の光の色が変わった頃
彼は後ろ姿を見せた。
ドアが開き光の中に吸い込まれる彼を
ただ見守る私は、てんでへたれ。
この出会いが運命なんかじゃない事は
哀しくなるほどわかっている。
気付けば、私が降りるべき駅から3駅ほど乗り過ごし。
それからもう2度と、その半開きの口を見る事はなく。
むかしむかしの西武線。
光の中の練馬駅。
